9話(脱出1)
ーーー敵空船艦内ーーー
「カシム船長、本船から入電です。本船、現時刻から10分後に到着予定とのこと。それまでにR型機のどれかを確保せよ。とのことです」
「了解した。今、地上はどうなっている?」
「はい、現状としては地上部隊は24区の約7割占拠したとのことです」
「ふむ、なら確保も時間の問題か。我々の勝ちだな。」
「ええ、軍事配備計画からはや5年・・・5年もあったのにこんなに貧弱だとは。unityも大したことがないな」
「signalの動きには警戒していたが、空までは監視下ではないという杜撰ぶり。所詮は形だけの組織だな」
「とりあえず、今回は石さえ回収さえしてしまえば・・・ ん?地上に異常な熱源が出現!!はっ・・・今までの、じゅ、15倍のエネルギーを放出!こちらに衝撃波来ます!!」
「なっ、!?何が起きた!?早急に原因をとく・・・」
1号機の発したエネルギーが衝撃波として、この船にぶつかったのだ。
「くっ!船はどうなってる!?」
「機体損傷なし!各部分特に問題はないとのこと」
「船はわかった!とりあえず地上の現状を報告しろ!」
艦長は、船内よりも地上の様子を気にしていた。彼がこんなにも焦るにも理由がある。それが、今回の任務であるR型機強奪の任を完了した暁には本部の司令部配属としての大昇格が約束されているからである。coc本部の司令部にさえ入ってしまえば、こんな野蛮な戦闘ともおさらばできる。
そんな時であった。
地上では、1号機が宙に浮き、空に向かって青い光線を放ったのであった。
そして、空が割けた。
「ッ!?」
「雲が・・・消えた!?」
「何が起こっている?説明を・・・なんだ?」
突然、艦内の警報が鳴った。
「か、下方に高熱源エネルギー発生!」
「敵の赤外線レーダーに捕まってます!!」
「熱源、発射された模様!!!こ、このままだと当たります!」
「くっ! 回避しろぉー!!」
「よ、避けれませんよぉ!」
ものすごい速さで光が船に迫ってくる。
「もう少しで!もう少しでぇぇぇぇ!!こんな蛮族達なんかとぉぉぉ・・・!!」
ーーー7番コンテナ内司令室ーーー
「当たったのか・・・?」
つい先ほど7番コンテナにある司令室にたどり着いたラムダたちであったが、休息している暇はなかった。
コンテナにたどり着くまでに、敵空船に対する必殺であるとされていた、第5種陽電子砲台が破壊されてしまったため、敵船を破壊できるものがなくなってしまったと思われていたのだが、偶然この7番コンテナにも同様の陽電子砲台が取り付いていたのである。
そこにちょうど居合わせていた第5種陽電子砲の担当が急いで砲台の準備に取り掛かり、そこにタイミングよく1号機の放った光線が雲を取り払ったことで、敵の空船の姿を晒したところをすかさずに撃った。というのがラムダ達が7番コンテナに辿り着いてから今までの出来事であった。
「よっしゃあああああ!命中!!」
「これでここから逃げれる!!」
皆が歓喜していたが、その一方、陽電子砲を射った影響で問題が生じていた。
「待ってください。今の陽電子砲発射の影響で、艦内の電気系統が何箇所か、電圧に耐えれず破損してしまったようです。このままでは、ヨーロッパまでの操行は厳しいかと思われます。それとバッテリーの容量の半分が陽電子砲の発射に持っていかれたので電気系の火器は使用できませんね」
「そうだな。このままだと途中まで逃れても、ヨーロッパに着く前に墜とされるというのがオチだろうな」
ラムダも現状をよく理解していた。
そんな中で一つ司令が出された。
「この艦は皆が知っている通り、現にさまざまな問題が起きている。そこで、私は補給と艦の修復が必要であると考える。よって目的地を台湾のunity支部のドックと指定するのだが、メリカ操舵手、いけるな?」
「はい。台湾までの操行は可能です。ですが、なぜ私が操舵手なんか・・・?」
「確か君は空船のライセンスを持っていたな?」
「・・・承知」
同調圧力で操舵手をしなければならなくなった。だが、これがメリカの中に眠っていたものを呼び覚ますのだが、まだ彼女は、それ(潜在能力)には気づかない。
「ところで3号機の回収はどうしますか?」
「あのパイロットを信じろ。必ずここまでたどり着く」
「偉く信用してますね。司令長にしては珍しい」
こんな空気の中、ヨシダ索敵官がラムダにツッコミを入れる。普通なら空気が読めないと思われるかもしれないが、みんな余裕を取り戻してきたのか、クスッと笑う乗組員も何人かいた。
「ふん。言ってろ。 ・・・よし。全艦発進よーい」
「7番コンテナ付近の隔壁ロック解除!ターボエネルギー98パーセント維持完了。ラムダ司令長・・・いや、艦長。いけます!!」
「7番コンテナ改め、緊急強襲艦発進!!!」
ーーー
敵船を堕とした光線が放ったのは7番コンテナからだった。
推測通り、ただのコンテナではないようだ。そうすると7番コンテナ付近の床が外れていった。
何が起こるのかと見ていると、そこには巨大な船の姿が現れたのだった。
脱出2に続きます。




