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平兵士は襲撃者のストーカーになる


「本当面白いよね!あのクソデブ、自分の体重のせいで大事な所を潰すなんて滑稽!本当ざまぁないわ!」


「確かに。けど、それを生で見れなかったのは残念だけど」


「本当それ、けどハールは見たんでしょ?」


「おう」


「羨ましいなぁ」


 豚ちゃんの『息子』さんがお亡くなりになって数日経った。闇の魔女に拷問しようとしていたスティーブは、拷問の際前のめりになり過ぎ、()()()()()が起き、暫く詰所にも顔を出さずに入院している。


「そういえば、闇の魔女は今どんな感じなの?」


 突然同僚のナルハから質問をされた。


「特に何もないかな」


 本当はスティーブ以外にも入院している奴が何人か居るが、本人達の為に秘密にしておく。


「そろそろ昼だから仕事に行ってくる」


「おう、行ってらっしゃい」



 ハールが牢屋に食事を運んでいると、


「そういえば、あのイヤリングに何をしたんだい?」


 いつもは隠れているスカサハが珍しく出て来た。


「あれには『透明化』『クリティカルカウンター(男)』『秘匿』を()()してる」


「なんとも豪華だね」


「まぁ、付与魔法は得意だからね。その位問題ないさ〜」


(そういう意味じゃないんだけどね)


 付与魔法はそもそも使い手自体が少ない貴重な魔法である。その能力も汎用性が高く、非常に重宝される。しかし、付与魔法は魔法の中でも特に魔力操作が必要だと言われており、魔法レベルと言われる()()()()()()を示すものでは、レベルが最大10だとすると、他の魔法が例えばレベル3だとしたら、付与魔法はレベル1のように必要な魔力操作に差がある。


 そのためか、この世界の付与魔法の平均レベルは3に対して、レベル7で使えるようになる『透明化』『秘匿』『クリティカルカウンター』をそんな気軽に渡すことは中々正気の沙汰ではない。


 加えて言えば、あのイヤリングはどの国でも国宝に相応しい性能をしており、敵国捕虜、更には英雄に与えるなど()()()()()()()()()()と言われても文句は言えない。


(まぁ、ハールお手製のイヤリングに気づく人なんて()()()()いないだろうね)


「それにしても、あの女の人にイヤリングを渡すとは気になっているのかい?」


 揶揄うようにスカサハが尋ねると、ハールは笑いながら、


「いや、あの上司のみっともない姿が見たかったから」


 中々性格が悪い発言をした。


「やっぱり、でも君は優しいね」


「照れるな」


 そう雑談をしているといつの間にか牢屋の近くに来ていた。


「…………」


 囚われの魔女は今日も静かだった。


(スカサハは優しいと言ったが、この悪趣味な()()には手を出すつもりはないから、俺は優しくはないさ)


 闇の魔女には特殊な呪いが掛けられており、ハールもお礼なしに解けるほど優しい者ではなかった。


 いつもの通りに食事を与え、着替えられた服を変えるために牢屋に入った。


(しかし、着替えくらいは女兵にさせればいいものを)


 などと、目を瞑りながらしている割と紳士なハールだったが、突然手を掴まれた。


 思わず目を開けると目隠しをしている筈なのに、こちらを魔女が見つめていた。


「貴方、私を助けてくれない?」


「嫌です」


「「…………」」


 30分程この無言の時間が流れた。


 ハールは()()()()に戸惑っていたが、反対に魔女は驚くほど表情が動いておらず、一体何を考えているか分からなかった。


 逃げ出そうとハールはしたが、想像よりも強い力で手を掴まれている為、逃げられなかった。



「貴方、私を、助けて、くれない?」


「………スゥゥ」


 今度はわざわざ言葉を区切って強調してきた。何故こんな捕虜が敵兵にこんな堂々と助けを求められるのかは謎だが、ハールは確信した。


(これはYesとはい、しかない質問だ)

 

 再び無言の時間が始まろうとした時、外から警鐘が聞こえて来た。


 魔女も少し驚いたのだろうか少し拘束が緩んだので、急いで牢屋から脱出した。


「チッ」


(舌打ちした?!)


 二度目の会話が高圧的過ぎて驚いていると、牢屋のドアが開く音がした。


「ん?誰だ?」


 ドアの方を見上げたが特に誰もいなかった。


「今日は不思議な事が多いな」


 ちょっと疲れたかな?とハールが思っていると突然後ろから襲われた。


「かひぅう」


 ハールから()()()()()()空気の抜けた声が出た。


「ん?妙に手応えがなかったなぁ……」


 そう言ったのは、全身に鎧を着た騎士らしき者だった。


「まぁいい、姫!助けに来ましたよ!」


 そう言って牢屋の扉を紙の様に切り裂くと一瞬で姫と呼ばれた魔女の魔封じの手錠を全て切り落とし、目隠しを取った。


「姫、私の事が分かりますか?」


「アナタは()()


「っ!!もしや、『浄化』!」


 騎士が魔法を使うと、魔女の体から黒赤色のモヤが出て来たが、そのモヤは耳を裂く様な叫び声を残して消えていった。


「あのクソどもが……!」


 まるで糸が切れたかのように倒れた闇の魔女を手に抱えて、騎士は見た目に反し静かに、しかし風の様に去って行った。


 

 その後、残っていた兵士たちが牢屋に行くとそこは()()()()()だった。










「しかし、あの騎士どこまで行くのだろう」


「それはモール王国までじゃないのかい?」


「流石にここからじゃ遠過ぎるし、丸一日走るにしても準備した荷物が少ないよ」


 所は変わって、見事な大根役者を演じたハールは魔女を助けに来た騎士のストーカーをしていた。


「でも、あの騎士の人女の人だったんだ。名前はセーク・マラン、茶髪に青色の目、身長は170cmくらいかな?年齢は確かさっき16歳とか言ってたな。魔女の方は15歳か、めっちゃ若いな」


「…………」


「それで関係はーーー」


 その様子を冷たい目で見ていた猫は、ただ一言、


「君、ストーカーみたい」


「…………確かに」


 少し反省したハールは大人しく二人を追跡するだけに専念した。


















 









魔法レベル・・・魔法の習得度を表す。

レベル1・・・素人

レベル2・・・見習い

レベル3・・・下位魔術師

レベル4・・・中位魔術師(村を単独で滅ぼす)

レベル5・・・上位魔術師(街を単独で滅ぼす)

レベル6・・・下位魔法師(国を単独で半壊させる)

レベル7・・・上位魔法師(国を単独で滅ぼす)

レベル8・・・魔法師(賢者)(大国と単独で対抗できる)

レベル9・・・大賢者(大国を単独で滅ぼす)

レベル10・・・精霊者(大陸を単独で滅ぼす)


基本的に攻撃魔法を仕事に扱う者はレベル4が基本になります。


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