2022.8.10 ネズミの王と生贄の巫女
この文書は夢の記録です。実際に見たことではありますが、実際に起こったことではありません。実在する人物、団体、出来事等とは一切関係がありません。
親戚じゅうに病気が蔓延している。母の実家の二階では誰か知らない小学生くらいの女の子が寝ている。多分親戚の誰かだと思う。俺たち親戚一同はふすま越しにお伺いを立てる。
「何か必要なものは?」
しばらくすると巫女装束に身を包んだ取次ぎの侍女が音もなくふすまを開け、厳かに告げる。
「最新式の自転車と水鉄砲、それから花火とハンバーガーをご用意ください」
それは全部病気が治ってから必要なやつだね。俺はとりあえず自転車を物色しに、アパートの駐輪場へ繰り出す。何をするつもりだったんだ?自転車屋行けよ。
駐輪場では何故か最新式水鉄砲の露天販売をやっていた。あまりにも都合が良い。さすが巫女様何でもお見通しだ。どう見ても本物の殺戮道具にしか見えないごっつい銃器が駐輪場の白いステンレスの屋根にずらりとぶら下がる。これは40000円。こっちは32000円。一番安いやつでも15000円もする。最新式の玩具ってこんな高いの?アメリカじゃ本物がこの値段で買えるぞ。あっ、こっちは600円だって超安い。と思ったら600万円。ナメんな。
「どれも到底買えません」
巫女様は目を伏せ、厳かに返答する。
「やむを得ません。ネズミの王にお願い致しましょう」
俺はごくりと固唾を呑む。そこの近所の川に住むと言われる伝説の邪神、ネズミの王…。
俺と巫女様は道すがらの犬の糞を拾い集めつつ、川へと向かう。橋の上には生きたものと死んだもの、無数のネズミが群れをなし、俺たちの足にまとわり付く。欄干の至るところにぶら下がった缶には棒状の糞が詰め込まれている。この橋から続く石段を降りた先の芦原に人知れずネズミの王の祭壇が存在する。俺は持参した錆びついた空き缶に糞を詰め込み、糞だらけの橋の上から巫女様を見送る。
儀式を待つ間、ネズミたちが話しかけてくる。
「どうせあの子も駄目さ。おまえらは俺たちの餌になるんだ」
へー、そんなリスクあったんだ。知らなかった。15000円で水鉄砲買った方がマシだったな。
欄干の上から見下ろす。巫女様は祭壇の前で、言葉のまったく通じない外国人に道を聞かれた時みたいに大げさな身振り手振りで何かを言っている。言ってることは遠くて聞き取れないが、どうせ九割くらい擬音語だろう。
巫女様が戻ってくる。ネズミたちは霧散する。おっ、成功したのか?
「受け入れるには条件があるそうです。大量の泥水が必要です」
「どれくらい大量?」
「この川の水全部くらいです」
うーん…。ダムを爆破しに行きましょう。
俺たちはダムを目指して大冒険を開始するのだが、ほとんど覚えていない。コンビニだと思って立ち寄ったらコスメショップだった、というイベントだけはなんとなく覚えている。そして俺は一人きりで生還した。
俺は大型ショッピングモールの二階の吹き抜けのテラスにいた。その一角に、小汚い服を着た子供達の一団が存在した。直感する。彼らはネズミだ。
背後から小柄で小太りの中年の男が俺に声をかける。
「失敗だったよ。おまえに巣に住む権利は与えられない」
いつの間にかそんなもののために冒険していたようである。
「俺はネズミの王に捧げられるのか?」
「巫女殿が身代わりになった。おまえは不味そうだからな」
「そうか。世話になったな、ネズミ」
「ああ、おまえは自由だ」
そうさ、自由にやらせてもらう。俺は巫女様を助け出す。ネズミの王に挑戦するのだ。俺の新たな戦いが今、始まる…!