ソラちゃんのミライ
交通事故などの描写が含まれます。
苦手な方は、
予めご了承ください。
ぼくは、空色のネコ「みぃ」。
ぼくのお友達は、「ソラちゃん」で
生まれた時から一緒だ。
ソラちゃんがお母さんのお腹にいる時に
お母さんがソラちゃんのために
編みぐるみを作った。
そして生まれたのがぼくだ。
ぼくのおなまえは、本当は「みらい」という。
しかし、小さかったソラちゃんは
ぼくの名前を上手に呼ぶことができなくて、
ぼくは「みぃ」というもうひとつのおなまえを
貰った。
そんな、ぼくたち2人とも5さいになった。
ソラちゃんとぼくのお母さんは
もうこの世界にはいなくて、
お空にいるらしい。
それでも、
ソラちゃんとはいろんな日を一緒に過ごしてきた。
雨の日の滑り台。どろんこ遊び。
シャボン玉に、ダンス。
ビー玉遊びにブランコ。
歯磨きだって、ご飯を食べるにだって
一緒だ。
ソラちゃんは
魔法使いみたいな人だ。
時には、ヒーロー。
お花屋さん。
お姫様。
コックさん。
絵描きさん。
なんにでもなれちゃう。
なんでも叶えてくれるソラちゃんは、
ぼくの太陽だった。
そんなある日のこと、
ソラちゃんとぼくは
横断歩道を渡っていた。
ソラちゃんはお空に向かって
手をピンと伸ばし、
「みぎ、ひだり、そしてみぎ!」
といって、
今日もぼくの手を引いてくれていた。
しかし、思いもよらないことに
ふらふらした車がぼくたちめがけて、
走ってきたのだ。
「あ、あぶない!」
そう思ったものの
ぼくの身体は無力なほどに
動かない。
「ソラちゃんを守りたいのに」
ただそれだけでいい。
でも、少し欲を言うならば、
ソラちゃんともっと一緒にいたい。
ソラちゃんの腕の力が
グッと強くなるのを感じた。
ドンッ!
ぼくはソラちゃんに抱かれたまま、
空を飛んだ。
気づいた時には、
ぼくもソラちゃんも飛ばされて
離れ離れだった。
やっとのことで
横たわっているソラちゃんを見た。
ぐったりとする姿が
目に入った。
「お願い!誰かソラちゃんを助けて。」
必死な願いが届いたのか、
周りの大人たちが
ソラちゃんの方に駆け寄ってきた。
するとソラちゃんは辛そうながらも
こっちを見た。
すると急にはっとした表情をしたかと思うと、
目にお水を溜めて、
「お願い!私のみぃを助けて!」
「私より先にみぃを助けてよ!」
と叫んだ。
ぼくは
「ぼくは大丈夫だから、ソラちゃんが元気になってよ」
と叫んだ。
ぼくはそこで意識をなくした。
ぼくが気づいた時には、
ぼくとソラちゃんのお母さんが隣にいた。
ぼくは死んでしまった。
ふと、ソラちゃんの姿を探し
いないことに安堵する。
しばらくして、お母さんが口を開いた。
「みぃ。ソラを守ってくれてありがとう。」
「ソラの未来を照らしてくれてありがとう。」
「私の代わりにソラを支えてくれたことありがとう。」
お母さんの目から
ビー玉みたいな大きさのお水が
いっぱい流れ出た。
ぼくにお水が落ちてきて、
なんだかソラちゃんと同じような
温もりを感じた。
「大丈夫だよ。」
ぼくはぽつりと言った。
「大丈夫だよ!ぼくたちのソラちゃんは!」
今度は大きな声で言った。
ソラちゃんはこれからどんな時も
やっていけるだろう。
君はぼくの憧れるヒーローで、
太陽みたいな素敵な子。
欲をいうならば、
ぼくとの思い出を少しでいいから
思い出して欲しい。