第6話 俺は馬小屋で糞まみれになった後、王女に会いに行く
ここに来る途中、精霊リアンカとは別れてしまったが、俺はついにネモフィラ王国の城前にたどり着いた。
どうやらのこの城は、ルピナス城という名前らしい。
そして俺は今、馬小屋にいる。
何故こんな事になったかと言うと…
俺は城の前にたどり着いた時に気づいてしまったのだ。
この超ハイスペックな今の俺のステータスに惑わされて潜入後の計画を何一つ立てていなかった事を!!
これから、女王本人に会ってどうすんだ、俺。まず、この段階で接触を試みて良いものなのか?だが、相手が現世界での記憶を持っているのかだけでも確認したい。あの学校を見る限り、記憶も一緒に転生している…と見て良さそうだが、まだ断言はできない。しかしそれを確認する為にはやはり接触するしか…いや、でも…どうしよう、え〜っと…
そんな事をモタモタと考えていたら、遠くから足音が聞こえて来た。
「あの〜!すみませ〜ん!馬小屋清掃の方ですか〜?」
なんだ!?後ろを見ると遠くから、作業着のような服装の女の子がこちらに向かって走って来ているではないか!これはマズイ。俺は今、いかにも王様です☆というような格好をしている。
どうにか隠れ…そうだ。俺の職業は魔術師であった。ここは、魔法で…
「いやぁ、どうもどうも。」
俺は、魔法で清掃員のおじいさんに化けた。俺の中の清掃員のイメージは、おじいちゃんだったらしい。すまない。全国の清掃員の方々。いつも感謝しております…
「探しましたよ!今日は、新人さんと一緒に仕事だって聞いてたので!私の名前は、トリスです。このルピナス城で清掃員の仕事をしています。あなたも自己紹介、して下さい!」
そう言って駆け寄ってきた女の子は…猫耳だった。猫耳+作業着…うむ。新しい!いいねいいねぇ!それにしてもなんの種族だ?
「私は今日からこの城で馬小屋の掃除をする事になった、えっと、名前は…トモゾウでぇす!よ、よろしく…」
すまない。全国のおじいちゃんたち。俺のおじいちゃん名のイメージはトモゾウ一択であった…そして、俺、初めての変装魔法でテンションが全然おじいちゃんじゃなくなっている!見た目は魔法で変えれても中身は変えられるないからな…鍛錬、鍛錬…
「トモゾウさん!よろしくお願いします!じゃあ、早速行きましょう!」
そう言って俺たちは歩き始めた。
「ところで、あんたは何で猫耳なんじゃ?化け猫…とかか?」
「失礼だなぁ!トモゾウさん!私は、猫の妖精ケットシーだよ。」
ケットシー?初めて聞いたな。なんでも、妖精猫の事をそう呼ぶらしい。中々可愛い種族じゃないか。俺は好きだぞ。
そうして俺は、馬小屋の清掃員として城へ侵入する事に成功した。
のは良かったのだが…
全っ然、終わらない。この城、どれだけ広い馬小屋完備してんだよ。糞は臭いし、汚いし…
「トリスよ、これは後どのくらいで終わるんかのう。」
「日が暮れるまでには終わりますよ!頑張りましょう!」
日が暮れるまで!?まだ昼前だぞ。そもそも、本当の馬小屋新人はどこで何をしているんだ。すまない、トリス。俺にはここで日が暮れるまで馬の糞掃除をしている暇はない!
色々世話になったのに、少し申し訳ない気もしたが俺は魔法を解き、作業を抜け出した。猫耳トリスよ、また会う日まで。
その後、俺は無事城の中へ入る事が出来た。馬の匂いが心配だったが、魔法を解いたら臭いも一緒に消えてくれた。あの臭いを漂わせながら城の中を徘徊する訳にはいかないからな。本当によかった。
それにしても広い城だ。まっ俺の国には、敵わないがな。但し、警備の強度はこの国が10倍は勝っているな。俺の国もここまでやるべきだろうか。俺は、擬体魔法であらゆる物に化け、警備蜂の目を欺き通した。花瓶や絨毯、時にはトイレの…あぁ、思い出したくもない…。
そうして俺は、女王がいるであろう部屋までたどり着いたのだ。
年頃の男子が女子の部屋を勝手に覗くなど絶対にあってはならないが、今回は仕方ない。潜入捜査だからな。ケースバイケースだ。そう思い、俺は気がつかれぬよう部屋へ入った。
俺は、女王がいるであろう一角から少し遠ざかった物陰に隠れた。この部屋、やけに殺風景で隠れられる場所が少ないな…
すると、奥から人影が見えた。あれが女王か?
こちらへ向かって来る!
俺は息を飲んだ。
「学園の桜は咲いていましたか?」
やっとの思いで王室まで忍び込むことができた主人公キセツ。
こちらに向かって来ている人物とは誰なのか!果たしてキセツは正体がバレてしまうのか!
次回、キセツ、ついに女王と接触!?…ちょっと昭和な次回予告、申し訳ない!
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