第2話 過去と絶望。そして、決意。
異世界戦争をするって、どういう意味だ?おれは、殺し合いとか御免だからな!
とりあえず、詳しい事をレイニに聞いてみるか…
ー私が授けた全てのスキルを使って、他国を消滅させなさい。
俺は確かに、あんなくだらないゲームを仕掛けたアイツらにムカついていた。だが、消滅ってなんか少し残酷だな…。
俺の中の善人の心が消滅という言葉に戸惑いを感じていた。
「なぜ黙っているのです。あなたは、あの4人を恨んでいるでしょう?」
ああ、確かに恨んでいるよ。物心つく前から一緒にいた奴らだ。少なくとも、俺は結構アイツらを信用していた。なのに、まさかあんな人の心を弄ぶ(もてあそ)ような事をされるなんて夢にも思わなかったからな。でも、消滅って…確か、レイニは俺をこの世界に連れてくる時、異世界戦争を始めましょうとかって言ってた。戦争ってまさか、殺し合いか?
ダメだ。色々頭で考えるだけじゃ何も解決しない。
「なあ、レイニ。消滅ってまさか殺し合いか?お前、ここへ来る前異世界戦争を始めましょう、なんて言ってたよな。確かにアイツらの事は、かなり恨んでいる。でも、殺し合いは御免だぜ?少なくちも、俺の元いた世界での殺人は重罪だ。俺は、さすがに振られたからって相手を殺すほどヤワじゃないぞ。」
レイニは、不思議そうな顔をした。
「殺し合い?まあ、そういった手段もありますが…。すみません。私の説明不足でしたね。またまた、申し訳ありませんが、ご説明させてください!」
戦争って言われたら誰だって殺し合いを想像するだろう…この発想は、地球人だけなのか?とはいえ、異世界戦争とやらの説明は最初にするべきであろう…断ったらどうなるか、とかなんとか色々考えてしまったではないか。こんなハイスペックな王様になったのに元いた世界に帰るなんて考えられないからなぁ。
と考えているうちに、レイニの説明が終わったようなので、俺が簡易的に説明させてもらう。
異世界戦争とは、5つの国を1つに統合する争いなのだという。
その争いは既に始まっており、俺がこうしている間でも各国では常にさまざまな手段で国を攻めようとしているとの事だった。この国も元々は1つの国だったらしいのだが、段々と知識を持つ者が増え、意見は交差し分裂していったのだという。
まあ、住む者が増えれば、色んな奴らがいるのだからそういう事もあるのか。
「で、戦闘手段なのですが、決まりはありません。相手国の王に一度でも負けたと認めさせる事で勝利となります。魔法を使って戦っても良し、騙しても良しなのです。殺し合いに関しては、あまりお勧め出来ませんが、禁止されているというわけではありません。また、過去には話し合いで解決させようとした例もありましたがこれは難しいかもしれませんね。」
まあ、話し合いで納得させられるようならとっくに解決してる…ってわけか。しかし、どんな手段でも…
その時、あの忌々しい瞬間の記憶が蘇って来た。
ーーーー「ねえ、キセツ。」
「なんだよ。秋がそんな重苦しい感じ、すげえ珍しいな。どうした?」
「私さ、今年から2年なのに生徒会長になったじゃん?みんな応援してくれてるのは知ってるけど、やっぱりそうじゃない子たちもいてさ…私、春葉みたいに成績優秀じゃないし、夏里みたいにバスケ部のキャプテンやっててみんなを引っ張っていけるようなリーダーシップとかもないし、自信ないよ…湖冬が気づいてくれて、心配してくれたけど、湖冬も絶対私じゃない方が良かったって思ってるよね。私、やっぱり辞めようかな。」
俺は驚いた。秋は、いつも明るく元気でおふざけ者で悩みなんて一つもなさそうな奴だった。俺は、物心つく前から一緒にいてそんな姿全く知らなかった。あの3人には、相談出来ない事を俺に話してくれた事が嬉しかった。そして同時に申し訳ない気持ちにもなった。
「秋、そんな風に思ってたのか。悪い、俺全然気づかなかった。
確かにそう思う奴もいるかもしれない。でも、お前が生徒会長に当選したって事は、それ以上にお前を応援して、お前に学校を任せても良いと思ったやつがいたからだろ?俺もその一人だ。でも、そういう弱い所もたまにはみんなに見せてもいいんじゃないか?俺は、意外と可愛いって思ったぞ。
しんどい時はいつでも俺に頼ってくれ。どんな所でもすぐ飛んでってやるから。」
「ありがとう。キセツの事、なんか凄くカッコいいって思った。今までこんな風に思った事ないのに。おかしいな…た、頼りにしてるぞ!」
秋風は、顔を真っ赤にしてそう言った。
ほんの些細な悩み相談だったが、その時俺の中で何かが変わった。秋風の事が、好きになっていた。
単純に頼られた事が嬉しかったのだろうか。顔を真っ赤した姿が可愛いかったのだろうか。単なるギャップ萌えだろうか。恋に落ちる理由なんて誰にも分からないか…。でも確かに俺は、秋を守りたいと思った。
なのに、なのに…
ー「全部ゲームだよ。」
「なあ、レイニ。どんな手段でも良いと言ったな。
俺は今持つ全ての力を使ってアイツらを惚れさせる。そして、国を吸収し消滅させる!アイツらの国は全て俺の物となり、俺の配下だ。さあ、始めよう。異世界戦争を!」
正直、今の俺ならお前たちに負ける気がしねえよ。
俺は、過去の記憶から恨みを再確認し、戦う事を決意。
男心を弄ぶ奴は、俺が許さねえ。ちょっと人類の男代表として、調子に乗った女子グループを破滅させてくるわ!
まずは、作戦を立てよう!一緒に国を偵察だ。行くぞ、レイニ!っていねえ!どこにもいねえ!