06ストーリー
舞台に着くと、舞台上にいる、学園長が俺たちを手招きしてきた。相槌を打ち、舞台に登ると、なにやら、黒い大きな装置が運ばれてきた。
「えー、諸君。これは、魔力測定器といって対象の魔力量を大まかに測定する装置である。魔力量は、緑、黄緑、黄、橙、赤、白の順にどんどん大きくなっていく。新入生の君たちなら、黄緑なら上出来といったところだろう。」
なるほど。俺たちは今からこれを使って、魔力測定をし、その結果によって、配属クラスが決まるのか。なら、できるだけ好成績を残したほうが後々のためになるな。
「学園長、具体的な測定の仕方を教えてください。」
「おお、そうだった。測定の仕方は至って簡単だ。この装置に向かって、単純な魔力放出をするんだ。そうすれば、装置がその魔力を辿って、体内にある魔力量を測るというものだ。」
それだけでいいのか。意外と簡単だな。
「では、今年の特待生、アイズ=バレンシア。ヘレナ。.........と、もう一人居るが、あのバカはいないから、今いるこの二人に、代表して、魔法測定を行ってもらう。」
「では、始めにどちらからやる?」
ヘレナに目配せをすると、彼女は小さく頷いた。いつも通りのパターンということだろう。
「俺からやらせてください。」
「分かった。では、測定器の前に立って魔力放出をしてくれ。」
指示通りに測定器の前に立つと、黒い装置の真ん中に大きな水晶のようなものが浮遊しているのが見えた。これが光って色が分かる仕組みなのだろう。
「では、行きます。」
(・・・いざ、成績に関わるならしっかりとやっておくか。)
そう思い、集中して水晶に魔力放射をしていく。周りが静まり返り、誰一人動かない中、ついに水晶に変化が起きた。
水晶を媒介として、装置が【ソナー】の魔法を打ってきた。驚いた俺はすぐさまその魔法を弾く。
【ソナー】とは探知の魔法の一種で、戦場では相手の力量の大まかを知るために使われる魔法である。
だからか、師匠は俺に【ソナー】をいつどこで使われても弾けるように訓練させたものだった。
兎に角、もはや反射と言ってもいいそれは、今回もいい働きをしてまったようだ。しかも、集中していたからか自分の魔力を上乗せして弾いてしまった。
結果、急に別の魔力を叩き込まれた震え始め、魔力暴走を起こした。
(・・・まずいっ!!魔力暴走だ。爆発するぞ!)
俺が対処しようとした瞬間、水晶から白い光が溢れた。
(・・・間に合わない!!)
激しい閃光が迸る中、来るであろう衝撃に備えて、横にいるヘレナを守るように抱いた。
(・・・来るっ!!)
その瞬間、グラウンドを揺るがすような爆発音が聞こえた。
「【アブソリュート・ディフェンス】!!」
(・・・・・・あれ?なにも、起きない?)
いつまで経っても来ない衝撃に首を傾げ装置に目を向ける。鉄屑と化した装置とその周りを囲うように広がる薄く光るなにかがあった。
(あれは、結界の一種か?いや、結界にはあらかじめ少なくない準備がいる。魔法と考えるのが妥当か。だが、あの一瞬で発動したには強力すぎる。一体誰がこんなことを。)
だが、なんにしろあの結界のおかげで俺もヘレナも無傷で助かったのだから感謝しないとな。
しかし、本当に間一髪だったのだろう。いくら術師が優秀でも、魔法というのは強力なほど、発動時間がかかるものだからな。
「あの、、そろそろ抱きしめるの..........」
一人で頭の中で整理していると、ヘレナが少しジト目になりながら訴えてきた。そういえば、守るために抱きしめた時のままの体制だったか。
「ああ、そうだったな。すまんすまん。」
「・・・・・・あの、どうしてやめないんですか?」
「・・・・・・・・・」
「あの、」
「・・・・・・・・・」
「もう、アイズったら。分かりましたから、後でいくらでもしていいから、今はやめましょう?」
どうやら、俺の固い意志が勝ったようだ。後でできるのならと、素直にやめる。
「まったく、特待生っていうのはなんで例年初っ端から問題行動ばっか起こすのかねぇ。」
学園長のノルマが困ったように近づきながらそんなことを言ってきた。
「あの魔法は、学園長が?」
「ああ、【アブソリュート・ディフェンス】のことか。いや、あれは私じゃない。お前らとは別のもう一人の特待生、シャルロッテの魔法だ。・・・まったく。入学式に出席もしないと思ったら、一方的にこちらを『見ていた』のか。」
「あの、それってどういう?」
「・・・まぁ、それについては追々話していこう。・・・それよりも、お前さっき、【ソナー】を弾いたな?」
「はい、つい、やってしまいました。」
(・・・ふむ。条件反射の域に達しているのか。)
「・・・・・よし!特待生、アイズ=バレンシア。並びにヘレナを、Sクラス配属とする!!!!」
学園長が唐突に、しかし高らかにそう宣言した。