名前のない街で僕は
主人公「僕」の自殺を描いた超短編小説です。
あくまでも、筆者の頭の中での想像で描いた物語ですのであらかじめご了承ください。
夜の交差点で一人たたずむ僕の頬には、まだ冷たくて小さい雨がなぞり落ちていく。
信号が赤色に染まる。
この時を待っていたかのように僕の足は動き出す。
疲れているけれどどこか軽い僕の足取りは、幽霊のスキップみたいだ。
死神の声が聴こえたような気すらした。
僕は笑った。生きることが窮屈すぎるこの世界を。
この世界への憎しみも、生まれてきたことの後悔も、全部
今だけは少しだけ、綺麗に見えた。
身体中に酸素がいきわたって、今まで感じたことのないような感覚に溺れる。
心拍数がどんどん上がっていく。それすらも心地よく感じるんだ。
モノクロだった景色が鮮明に色づいていく。
僕の目に映ったそれは見たことのない世界で、少し哀しくなった。
乾いた空気が、荒れた僕の心を逆撫でる。
君が居てくれたならもっと早くにこの世界の明るさに気づけたのかな。
僕は宙を舞う。空を初めて飛んだんだ。
空中にいる時間がとても長く感じた。
消えていく何かを手放してはいけないような気がして、何もないところに手を伸ばす。
僕は落ちていく。
全身から酸素が奪われていく。
不思議な感覚だ。
雨が熱くて、心に沁みて、痛いんだ。
手のひらも足の先も血が回らなくなって感覚がなくなる。
肌がジクジクする。
さっきよりも大粒の雨が頬に零れ落ちていくんだ。
熱くてしょっぱい雨が。
もう自由だよ――
君の声が確かに聴こえた。
「そうか。僕もすぐに――」
僕は小さいこの世界で 静かに 静かに 目を閉じた。
僕の小さな人生は そっと そっと 生きを綴じた。
初投稿です。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
最近、自殺のニュースをよく見かけるようになったなと思っている今日この頃です。
「自殺すること」を一概に悪く言うことはできない世の中で、自殺するとはどういうことなのか、自分自身もいろいろと考えさせられました。
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