♥ 蒔邑寺社 3 / 情報収集 3
「 ヒヨメちゃんは、巫女さんになりたいみたいでね。
巫女さんがどんな事をするのか体験してもらってるんだ 」
「 へぇ…… 」
「 惠梦君、僕からもどうか1つ曽井子駅の事を頼みます。
何とかしてやってください 」
「 和尚様、頭を上げてよ。
オレは未だ半人前以前のタマゴなんだからね! 」
「 そうだったね。
じゃあ… “ 和尚様 ” じゃなくて “ 透さん ” って呼んでもらえないかな?
どうも若い子に “ 和尚様 ” って言われるとムズ痒くってねぇ(////)
ははは! 」
「 う、うん…。
じゃあ、透さん… 」
「 ──でも、気を付けてくれよ。
曽井子駅は昔から何かと曰く憑きらしいからね… 」
「 曰く憑き?? 」
「 あぁ…。
僕の友人にね、オカルト関連で日本中の駅について調べている専門家が居てね、序でに曽井子駅の事を調べてもらった事があるんだよ。
素人調べには限界があるからね。
曽井子駅を調べてくれた友人から送られた資料があってね。
持って来るから待っててくれるかい? 」
「 うん、待ってるよ 」
和尚様──もとい、透さんはソファーから腰を浮かせて立ち上がると客室を出て行った。
「 ……玄武、今までの話を聞いてどう思う? 」
「 どうにも。
ワタシにはどうでもいいことだからね 」
「 …………だよな… 」
玄武に意見を求めたオレが馬鹿だった。
玄武の役目はオレをあらゆる災難や災厄から守護る事だ。
それ以外は興味ないんだったよ…。
「 人形達は前和尚の訪問彼岸供養会を喜んでいた──って事は分かるよ 」
「 供養会を喜んでた? 」
「 供養は〈 久遠実成 〉へ信仰心を供えて先祖の冥福を祈る最も尊い行為だよ。
御祓い,御祈祷,除霊とは違う崇高な行為だからね 」
「 だから喜んでた? 」
「 折角、供養をしてもらえて嬉しかったのに、勝手に中止にされて、供養をしてもらえなくなったら怒るに決まってる。
怒りを鎮める為には、供養を再開させる事だね 」
「 だけど供養は透さんが再開させたよ 」
「 そうだね。
それでも完全に怒りは鎮まっていない。
どうしてか──、惠梦には分かる? 」
「 ──前和尚様と透さんの霊観の強さ… 」
「 そう。
供養をしてもらえるようになって嬉しい。
けれど、今の供養会では物足りない。
致し方無く妥協してる感じだから、鎮まれない 」
「 …………だから、奇妙で不可思議な現象や事象…、不可解な事故や怪奇が曽井子駅で起きている?? 」
「 そんな感じ。
人形はカモフラージュ的なモノかも知れないね 」
「 カモフラージュ?? 」
「 うん。
木の葉を隠すなら木の葉の中に隠すよね。
本体となる人形は、御焚き上げ供養されずに今も曽井子駅の何処かにあると考えた方がいい。
注意すべきは、本体が人形とは限らないって事と、相当強いって事かな 」
「 強いのか? 」
「 ワタシには大した事ないけどね 」
「 何だよ〜〜。
玄武が退治出来るなら安心じゃんか 」
「 そうでもないよ。
野良式神が相手なら片手で退治は出来るけど、妖かしに変化していたら厄介かな 」
「 妖かし……。
野良式神が実体を得て妖怪化した奴だよな?
でもさ、魑魅魍魎と変わらないだろ? 」
「 魑魅魍魎には操る術者が居る。
術者を始末さえすれば魑魅魍魎も消えるから楽だけど、妖怪化した野良式神には操る術者が居ない分、本能で暴走するから厄介だよ 」
「 でも、退治は出来るだろ? 」
「 出来るよ。
少し手こずるだけ 」
「 なら問題ない! 」
「 …………妖怪化までなら未だマシ方だよ 」
「 へ? 」
「 妖怪化した後、悪霊,怨霊,死霊の類いを取り込んで焔影化するのが稀に居てね。
惠梦を守護りながら退治するのはキツいかな 」
「 マジかよ…。
──オレ、離れた場所で玄武を応援してるよ! 」
「 惠梦がワタシから離れるのは駄目。
惠梦を守護れなくなる 」
「 じゃあ、どうするんだよ… 」
「 実際に本体を見付けてから決めても遅くないよ 」
「 そ、そうなのか? 」
「 そんなに不安な顔しないで。
鬼神化すれば片手で捻り潰せるから 」
「 鬼神化出来るんだな? 」
「 うん。
安心してくれた? 」
「 うん!
怖いもの無しだな! 」
玄武が鬼神化出来るなら何の問題もない。
曽井子駅に着いたら、全部玄武に丸投げすれば良いんだもんな!
良かった!!
「 ──それにしても透さん遅いよな。
どうしたんだろう? 」
「 資料を何処に置いたのか忘れて探してるとか? 」
「 えぇ〜〜…… 」
玄武とオレは暫くの間、待ち惚けを食らう事になった。
その間に、アイスコーヒーゼリーフロートを食べる。
ビールジョッキの下にはコーヒーゼリーが敷き詰められていて、溢れない程度の量のアイスコーヒーが入っていて、バニラアイスがプカプカと浮いていて、アイスコーヒーとバニラアイスの境界を見えないように生クリームで隠されている。
バニラアイスにはウエハースとポッキーが、何本もぶっ刺さっている。
美味しいんだけど、量が多いよ…。
玄武は飲食をしないから、今の内に玄武に出されたアイスコーヒーを飲み干さないといけない!
誰かオレを助けて!
オレが漸くコップとビールジョッキを空にして一息吐けた頃に透さんが客室に戻って来た。
「 ごめん,ごめん、待たせちゃったね。
置いた場所を変えたのを忘れちゃってね…。
いゃあ…参ったよ(////)」
恥ずかしそうに頭を掻きながら客室へ入って来た透さんは、A4サイズの茶封筒を持っていた。
ソファーの上に腰を下ろして座った透さんは、茶封筒を開けてくれる。
中に入っている資料をテーブルの上に置いて見せてくれた。
「 これが友人に調べてもらった曽井子駅についての資料だよ。
惠梦君の役に立つといいんだけど… 」
「 有り難う、透さん 」
玄武とオレは透さんが出してくれた資料を読ませてもらう事にした。
資料には曽井子駅が建設される前の出来事も調べられていた。
「 ──凄いね。
駅を建てる前の事まで細かく調べられてるなんて…… 」
「 惠梦、此処を見て。
どうやら駅の敷地は元々、荒れ果てた無縁墓地だったみたいだよ 」
◎ 普通は荒れた無縁墓地を更地にして何かを建てるなんて罰当たりな事はしませんよね??
知らんけど。