表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

♥ 蒔邑寺社 2 / 情報収集 2


 しん駅長さんは猛反対を押し切って、親戚の清掃会社を呼んで強引に事を進めてしまったらしい。


 …………うん、やっぱり人形を粗大ゴミに出させたぜん駅長を助けるのはめよう!


 オレは心に固く誓った。


「 えぇと…和尚様がぜんしょうさまのように訪問彼岸供養をするようになったのは、駅長さんが代わったから? 」


「 あぁ、そうだね。

  親父にも駅の人形の事は頼まれてたからなぁ 」


 和尚様はキンキンに冷えているアイスコーヒーをグビグビと飲みながら「 クゥ〜〜〜、アイスコーヒー最高だな! 」とか言ってる。


 オレ……ビールジョッキでアイスコーヒーを出されたの初めてなんですけど……。


 飲み干せる自信がないよ……。


 和尚様は、アイスコーヒーが好きみたいで、巫女さんにアイスコーヒーのお代わりを頼んでいる。


めぐ君もお連れさんも遠慮しないでグイグイ飲んでくれよ!

  めぐ君、バニラアイスもあるよ。

  アイスコーヒーの上に乗せるかい?

  いぞ、アイスコーヒーフロート! 」


がとう御座います… 」


 オレに出されたビールジョッキに入ったアイスコーヒーの上にキンキンに冷えたバニラアイスが投下されたのは言う迄もない……よな?


「 僕にはねぇ、親父みたいになにかを感じ取とれる程の霊感はないんだよ。

  親父の遺言で【 もしも、駅から訪問彼岸供養と御焚き上げ供養を頼まれたら、厚意で受けてやってほしい。かねは貰うな。かねを貰ったら祟りにるぞ! 】って言われてね。

  和尚が『 祟るぞ 』って──可笑しいだろ?

  遺言を聞いた時は思わず腹を抱えて笑ったよ! 」


「 は、はぁ…… 」


「 まぁ、それだけ親父にとって駅の事は思い入れが強くて心残りだったんだろうなぁ……。

  もしかしたら、僕がちゃんと遺言を守っているか草葉のかげからでも見張ってるかも知れないな! 」


「 ははは…。

  有り得そうだね… 」


駅に対する親父のなみ(なみ)ならぬ思いは生前から知っていたし、僕にもなにか出来る事があるなら力になりたいと思っていたよ。

  出掛ける時は必ず利用する駅だし、僕も子供の頃から人形の前をとおって通学していたからね。

  確かに不気味ではあったけれど、人形がある光景が当たり前で、十数年も見慣れていた所為だろうね、ないとないで寂しく感じてしまったよ。

  駅自体はスッキリして風とおしもくはなったと思ったけど…、やっぱりねぇ……。

  心のかで【 人形達は見守っていてくれていたんじゃないか 】って思ってしまったりね……。

  だから、人形がまた駅に現れるようになった時は、…………不謹慎だと思うけど、ちょっとだけ嬉しく思ったんだよ… 」


「 人形が撤去されてから駅でくない事が起こり始めたんですよね? 」


「 そうだね。

  一時期は駅長命令でいろ(いろ)な策をこうじて誤魔化していたみたいだけどね。

  ただでさえ利用客の多い駅だったのに、ぜん駅長は欲を掻いたのかな?

  客寄せに利用するようになってね、ぜん駅長は駅の恩恵にあやかれて上機嫌だったらしいよ。

  イメージキャラクターまで用意したぐらいだから、相当だろうね 」


ぜん駅長さんや清掃会社に不幸な事が起こり始めたのは頃か分かる? 」


「 さぁ…そこ迄は知らないな…。

  ……あぁ、そうだ!

  ぜん駅長がげん駅長に交代する事になったのは、ぜん駅長が事故に遭って大怪我をしたからだよ 」


「 大怪我?

  どんな事故なの? 」


「 いやね、僕も駅員から聞いた話なんだけど……、誰かに足首を掴まれたらしくてねぇ… 」


「 足首を掴まれた? 」


「 気が付いたら階段の下で仰向けで寝転がっていてね、両足に違和感を感じたそうだよ 」


「 両足に違和感?? 」


 誰かに足首を掴まれた?


 人間に足首を掴まれる……妙だよな。


 もしも、ぜん駅長が歩いていたとするなら、人間が足首を掴むなんて無理だ。


 相手は “ 誰か ” じゃなくて十中八九 “ なにか ” だろう。


 気が付いたら階段の下で仰向けで倒れていた……。


 なにかに足首を掴まれてから、なにぜん駅長に起きたんだろう?


 両足に違和感……いやな感じがする!


なんでも、切断しないといけない程の大怪我を負っていたそうだよ。

  ぐに病院へ運ばれて緊急手術をしたけど、時間が経ち過ぎていた所為なのか……、結局ね太股から切断する事になったんだ。

  ぜん駅長はひどくショックを受けてしまったらしくてね、そのまま入院する事になったらしいよ。

  車椅子生活になった途端に精神異常者に変わってしまってね、今は精神病院に入院しているそうだよ 」


「 ……両足を切断しないといけないぐらいに時間が経ち過ぎていた──って言ったよね?

  発見が遅れたの? 」


「 いや?

  救急車を呼んだ駅員は悲鳴が聞こえてぐに駆け付けたらしいよ。

  悲鳴は女性の声だったらしいけど、悲鳴を上げた女性の姿はにもなくて、階段の下で仰向けに寝転がっていたぜん駅長を見付けたそうだよ 」


「 …………不可解な事故…って事かな? 」


「 まぁ、そうなるのかな?

  ぜん駅長の家族はまえ(まえ)から不幸な目に遭っていたらしいから、『 階段からの転落事故も不幸の1つなんじゃないか 』って噂になったそうだよ 」


「 …………両足を奪うなんて悪質だね…。

  自業自得な気もしなくはないけど… 」


しん駅長に代わってからは、『 また訪問彼岸供養と御焚き上げ供養をしてくれないか 』って声が掛かってね、受ける事にしたんだよ 」


「 そうなんだ? 」


「 ──だけど、親父みたいにはいかないよ。

  だ事故にはなってはいないけど、 “ 怪奇 ” だなんて言われるような事が駅で起きているんだからね…。

  誰でもいから、僕の代わりになんとかしてほしいよ。

  藁にもすがりたい気持ちだよ。

  息子には得たいの知れない怪奇なんてのには関わってほしくないんだよね 」


「 和尚様、安心してよ。

  ──って言うのはだ早いかも知れないけど、駅の事はげんとオレの方でなんとかしてみるから 」


「 そうかい?

  いやぁ、助け船とはきみの事だね、めぐ君!

  アイスコーヒー、お代わりするかい?

  コーヒーゼリーもあるよ。

  あぁそうだ、アイスコーヒーゼリーフロートなんてどうかな?

  いよ!

  ウエハースとポッキーも付けてあげるよ。

  ヒヨメちゃん、アイスコーヒーゼリーフロートを作ってめぐ君に持っててくれる?

  ウエハースとポッキーも忘れないで 」


「 は〜い、とおさん 」


「 父さん??

  むすめさんなの? 」


「 いやいや、違うよ。

  ヒヨメちゃんはすぐるの従妹でね。

  巫女のバイトをしてるんだよ 」

◎ 訂正しました。

  上手いよ ─→ 美味いよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ