♥ 曽井子駅 3 / 退魔師として 3
DVDで見た「 来々! キョンシーズ 」の道士がオーバーアクションで宙を浮いたり、クルクル回ったりするヤツだ!
やだよ、感化されちゃってる!!
いや、好きだけども!
然も、着地した後な何か良く分からないポーズまで決めちゃってるしぃ!!
「 …………惠梦、式神に変なポーズさせないでくれるかな 」
「 ……やっぱ…オレの所為かな? 」
「 惠梦以外に居ないよ 」
「 ですよね……。
…………でもさ、こうやって見ると、八卦将軍みたいじゃないか?
オレは、でんでん太鼓を持ってないけど 」
「 惠梦…… 」
「 ご、ごめん……。
真面目にするから! 」
オレは気を取り直した。
「 ──惠梦、出て来るよ 」
「 お、おう! 」
玄武に守護ってもらえないのは誤算だけど、頑張って時間稼ぎするぞ!
玄武が鬼神化したら、丸投げ出来るんだもんな!!
因みに9体の式神に指示を出すのに使うのは、鈴だ。
玄武の術の力でオレの前には干支の形をした鈴が浮いている。
ガチで可愛い。
干支の鈴から伸びている色違いの糸を指で軽く触るだけで鈴が鳴る仕組みになっている。
鈴が鳴ると式神が攻撃をしてくれる。
これをする時は必ず玄武が傍に居てくれて助言をしてくれてたんだけど、今回は玄武の助言を受けられない。
自分の目で見て、自分で考えて判断するしかない。
器用じゃないオレ1人で上手く両手で捌けるかな?
何かがゆっくりと近付いて来るのを感じる。
霊観は無いけど、佛性を観受する能力のお蔭だろう。
結界に張られている術のお蔭で、どんな姿なのかが分かるようになっている。
術を掛けなくても見える奴は居るけど、術を掛けないと見えない奴も居るからだ。
今回は術を掛けないと見えない奴が相手って事らしい。
気を引き締めて行こう!
ズルリ…ズルリ…ズルリ……と何かを引き摺る鈍い音が聞こえて来る。
ペチャリ…ペチャリ…ネチョリ…ネチョリ…ペタリ…ペタリ……そんな音も混ざって聞こえて来る。
偶に──、ゴキュル…ゴキュル…ゴキュル……とかクゲェェェエ……とか鳴き声みたいな音も混ざって聞こえる。
音だけでもヤバくないかな??
9体の式神は何時でも戦えるように戦闘態勢に入っている。
各々が小刻みに動いていて笑ってしまいそうだ。
オレの所為です。
9つの鈴が一斉に鳴り出した!
標的が此方の領域に侵入して来たんだ!
戦闘開始だ!!
玄武の張った領域に入って来た標的の姿が出現した!!
…………ぎも゛ぢわ゛る゛い゛っ!!
……吐き゛そ゛う゛……!!
夢に出て来て魘されそうなエグい姿をしている!!
ヘドロのようにドロドロとしている感じに見える黒い物体のには白い手…みたいなモノが無数に出ている。
顔の形をしたモノが幾つも動いていて、不気味過ぎる。
ヘドロみたいなのから何かヤバそうな液体みたいなのをピュッピュッと飛ばしている。
デカい口みたいなのが1番上に付いているみたいだ。
グゲェゲゲゲゲゲ……みたいな音が口から出ているから鳴き声なのかな??
口の中から何かが這い出て来る。
…………目を凝らして見ると、人形だ。
沢山の人形が固まっている!!
もしかしたら、あの中に人形を増やしている本体が隠れているのかも知れない!
オレは両手の指を動かして糸に触れる。
式神達が目の前の標的に向かって攻撃を仕掛けた!
玄武から注がれているテフを動力源にして、9体の式神は動いている。
本体に負けない強さを出せるらしいから、強いんだろうけど、目の前の標的── ヘドロって呼ぶ事にしよう! ──は、式神の攻撃を受けているにも関わらず、弱まっているようには見えない。
体力は着実に削れている筈だ。
だって、3つの青いゲージの色が減っているし、青から緑、緑から黄に変わっているからだ。
3段目のゲージなんて黄から橙に変わっている。
もう直ぐ赤に変わりそうだし!
因みにゲージはヘドロの体力みたいなものだ。
玄武の作った領域に入ると、敵の近くに現れる。
ゲージは玄武とオレにしか見えない。
ゲージがあると何かゲームをしてるっぽく見えて仕方無い。
分かり易いからいいんだけども。
とうとう3段目のゲージが赤から紫に変わった。
もう少しでゲージの色が無くなるぞ!!
1段目と2段目のゲージも順調に削れている。
いいぞ、このまま行けば──あれ??
3段目のゲージの色が点滅してる??
何でだろう??
1段目と2段目のゲージも紫から黒になった瞬間から点滅を始めた。
これ以上は攻撃を続けても減らないみたいだ。
何が起きてるんだ?
玄武に聞きたいけど、生憎と玄武はシダラ,ハイラ,メイキラを鬼神化させる儀式の最中だ。
邪魔は出来ない。
良く分からないけど、攻撃を緩めたら駄目な気がした。
ずっと両手を動かしているから腕が疲れて来た。
暫く腕を休ませたい。
此処は防衛系と攻撃系のシトラを前衛の中央へ移動させて、シトラの抜けた場所にビカラを移動させよう!
シトラの援護をさせる為に上にインダラ,下にアニラを移動させる。
中衛の上にはサンテラ,下にはクビラを移動させる。
後衛の上にはアンテラ,中央にマコラ,下にバサラを移動させる。
ビカラには再度、オレを防衛してもらう。
最初の陣形は攻める為の陣形だったけど、次の陣形は防衛しつつ攻めれる陣形にした。
これで少しだけど、疲れている腕を休ませる事が出来るようになった。
オレは片手で糸を触って、片腕ずつ休ませる事にした。
3本のゲージは今も点滅している。
点滅の意味が分からない。
暫くするとヘドロがビカビカと光り出した。
何が起きたんだろう??
光が消えるとヘドロの形が変形していた?!
何か……人形の集まりだったのが人形を形成していて、白い肌が見える。
まるでヘドロの口の中にから巨大な人が今にも這い出て来そうな感じだ。
黒々とした大量の長い髪が垂れ流れていて、ギラギラと光っている両目がオレ達を見ている。
白い背中からは何十本もの白い腕が伸びていて、手には色んなデザインの錫杖を持っていた。
…………ねぇ、何で錫杖なんて持ってるんだよっ!!
それ、投げて来ないよね?!