♥ 旅館 1 / 瀬圉惠梦
◎ 知識のない作者の独断と偏見が、てんこ盛りの痛々しい作品となっています。
「 痛々しい作品? どんとこい! 」みたいな、心の寛大な読者さんは読んでください。
●●●県●●●郡●●●●町にある曽井子駅には、何故だか無数の人形が置かれているらしい。
曽井子駅では、奇妙で不可思議な現象や事象が度々起こるらしくて、不可解な怪奇も起こるらしい。
以前の駅長が大量にあった人形を撤去して、粗大ゴミに出して処分したらしい。
その事もあってか、 “ 人形の呪い ” だとか “ 人形の祟り ” だとか言われているんだとか。
皆好きだよなぁ、呪いとか祟りとか……。
折角の楽しい楽しいグータラライフを満喫しようって意気込んでたっていうのに、選りに選ってオレに依頼を回すなんてさ、父さん恨むよ!!
何で貴重な夏休みに態々●●●県●●●郡●●●●町なんかに遠出しないといけないんだよっ!
曽井子駅の近辺に瀬圉家の分家はないのかよ!
いや…オレの実家も分家だけどな!
何でオレが出張退魔師なんてしないといけないんだよ……。
オレ、退魔師になるつもりなんて微塵もないんですけど!
はぁ……。
滅入るぅ〜〜〜〜。
────オレの名前は瀬圉惠梦。
性別は男で、年齢は16歳。
職業は学生で、祓い屋育成マンモス校の高等部1年生だ。
保育園,幼稚園,小学校,中学校,高校,大学が揃っていて、祓い屋家業専門の病院が敷地内にあって、地元では特殊で有名なエスカレーター式の “ マンモス校 ” として知られている。
本家の瀬圉家は平安京の時代から栄えて、活躍していた陰陽師一族の末裔で、オレの実家は分家だ。
先祖代々退魔師の家系で、オレは9男坊だ。
居ても居なくても全く構わない存在ってわけだ。
オレの前世は無名だったけど、榻萠之眞小呂ってふざけた名前をした凄腕の陰陽師だったらしい。
京の都に結界を張り巡らせてた後、 “ 四神 ” って呼ばれる四聖獣の式神,十二支の式神,四聖獣と十二支を使役して纏める統括式神を作り出して、京の都を守護させた偉大な陰陽師だったんだとか。
京の都の中心部に自身の亡骸を統括式神に埋葬させて、自身すらも黄龍という式神の姿に変化させて、守護式神として永きに渡って京の都を守護していたんだとか。
んな事、知るかよ!
因みに前世のオレ── 榻萠之眞小呂 ──が作り出した最高傑作の統括式神が、現在、オレの〈 守護り手 〉をしている式神の玄武だ。
オレの前世についての云々は全部、玄武から聞いた事だ。
本家のエリート集団の陰陽師,分家の退魔師が、あらゆるオカルト的な現象やら事象やらの問題を専門にして解決させる為に、祓い屋として日本全国に散らばっている。
穢れた式神に肉体を奪われて支配されてしまった術者の成れの果ての悪徳陰陽術師の残党が魑魅魍魎を操って、彼方此方で悪さをしている。
もしかしたら、曽井子駅で起こる奇妙で不可思議な現象や不可解な怪奇は、悪徳陰陽術師の残党が魑魅魍魎を操って起こしているんじゃないか──って言うのが依頼の内容だ。
無理矢理に関係付けしてくれなくていいんだけど……。
此方は迷惑してんのに……。
退魔師って聞こえは良いけど、玄武が居てくれないとオレは何も出来ない役立たずだ。
玄武の姿はオレにしか見えない。
だから、玄武の姿が見えない所為で、全部オレが退治して解決しているように見えるし、オレの手柄だと思われてしまうんだよなぁ……。
実体化して魑魅魍魎を退治してくれたら、オレが持ち上げられる事もないのに、玄武は必要な時しか実体化してくれない。
主人思いの立派な式神だよな、玄武は!!
嫌味だよ、嫌味!!
そうそう、前世のオレは本当なら転生しない筈だったらしい。
実は埋葬されていた筈の榻萠之眞小呂の遺体が何者かに掘り起こされてしまった事が原因で、京の都の中心部を守護していた黄龍の存在が消え去ってしまって、その影響を受けて四聖獣,十二支の守護力が低下してしまったらしい。
その所為で現代の日本人に生まれ変わる事になったんだとか。
鯔のつまり、京の都を守護していた黄龍は、オレの──榻萠之眞小呂の霊魂だったわけだ。
四聖獣,十二支の守護力は着実に年々弱まり続けている。
十二支が宿っている12個の数珠を先祖代々受け継いで来た祓い屋の当主達が集まる会議が、本家の瀬圉家で現在も粛々と行われている。
父さんと長子の兄さんが参加している会議だ。
四聖獣が宿っている4つの神具は、先祖代々の祠で厳重に保管されて、当主達によって守られている。
次男,3男,4男の兄さん達が本家が管理している寮へ住み込んでいて、当番制で祠の見張りを手伝っているんだ。
次男,3男,4男は3つ子なんだよ。
オレは本家に行った事もなければ、祠にも行った事がない。
十二支が宿っている数珠を見た事もなければ、四聖獣が宿っている神具も見た事がない。
まぁ、見たいとは思わないけど……。
「 惠梦、蒔邑寺社にも行ってみる? 」
「 蒔邑寺社って、曽井子駅の近くにある寺社だよな? 」
「 前任の駅長に代わる迄は曽井子駅の人形に和尚が厚意で訪問彼岸供養会をしていたんだって 」
「 へえ?
厚意で供養会してたの?
それって無料でって事? 」
「 そうだろうね 」
「 凄いな…、蒔邑寺社って…… 」
「 寄ってみる? 」
「 そうだな。
曽井子駅に行く前に寄ってみよう。
ご近所なら曽井子駅の事情も少なからず知ってるだろうしな 」
「 蒔邑寺社にアポイント取っておくね 」
「 有り難な、玄武。
助かるよ♪ 」
式神の玄武は、オレにとっては歳の離れた8人の兄ちゃん達よりも、身近な兄ちゃんみたいな存在だ。
実兄よりも実兄らしいって事だ。
誰よりも頼りになって心強いんだけど……、オレの保護者的な位置に居る玄武は、オレに対してだけ超絶過保護主義者だから、色々と人付き合いが大変だ。
オレが母さんの母胎に宿った瞬間に、誕生したのが式神の玄武だ。
オレの魂が統括式神だった玄武を呼び寄せたらしい。
玄武の姿はオレにしか見えないけど、玄武の声もオレにしか聞こえない。
オレ以外を害虫扱いする節があって困るんだよなぁ……。
オレの身内に対しても無関心だし……。