断じて進行形ではない! 3
その後、別室に案内された総勢三十五人のクラスメイト、そして二人の教師。先程から教師も話についてこれていないのか沈黙するまま。
「先生、これどうぞ」
とサクラは副担の『駒井 菜御子』に直前に買っていたジュースを譲って落ち着いてもらっている。そして俺も一応、担任の『城島 学』の元に行く。
「………どう思うよ兄貴、これ、まずくねーか?」
「にしては冷静だなお前。俺は今も教師でありながら先導できそうにないってないのにな」
ガクは俺の従兄弟でもあるからこうしてフランクに話せる。ちなみに昔から仲がいいからサクラとも良好だ。
「しっかりしてくれ。今このクラスなんとか出来るのあんただけだろ? 分裂は洒落にならねーから、せめて問題児は何とかしろ」
「はは、一番の問題児に諭されていたら面目ないな」
ようやくそれなりに気分が戻ってきたようで、近くの生徒から簡易的にカウンセリングを始めることにしたようだ。ガクは昔からモテる容姿とコミュ力があるから人気は高く、本調子に少しでも近づいた今ならクラスの不安を軽減できるだろう。
「そっちはうまくいったの?」
とサクラが戻ってきた。
「ああ、そっちは」
「ま、多分少しは何とかなると思うよ。それにまだ完全にメンタルやられてない鑑さんが代わってくれたから」
どうやらギャル組がなだめているのがわかる。『鑑 梓』はその中の頭だが、一応面倒見がいいため、サクラと同じくらいにクラスの中心にいる。いいギャルだ。
「まあいい。他を頼んでいいか?」
「うん、行ってくるね」
と彼女はまたフォローをしに行く。
「おうおう、相変わらずキメーのが調子乗ってるぞ?」
入れ替わりに、いわゆるいじめっ子がやってきた。ターゲットになっている俺はよく嫌がらせをされるが、ま、程々にしか関わらない。内心バクバクだが、弱気にもならない。
「……なんだよ。インキャの俺になんかよう?」
「ハハ、よく理解してんじゃねーかよ」
と蹴りを入れられる。
そこでいつもと違うのがよくわかった。俺は壁まで吹き飛び、その壁すらめり込んだのだ。頭の『笹ヶ峰 大我』の蹴りは異世界にて飛躍的に強化され、同じく強化された俺の防御じゃなければ死んでいるくらいだ。
「おー、よく飛ぶ豚だな!」
とケラケラ笑うクズどもを、その蹴りを見ていた誰もが止めることをしないで青ざめ、そっぽ向く。
「なー豚、もういっちょサンドバックやってくれよw」
「やめなさいよ!」
すかさず俺の前にサクラは立ち塞がった。本来ならそれでいなくなるが、その力に調子付いたタイガはむしろ寄ってくる。
「見なかったか委員長? 俺はつええぜ? なんなら今ここで女どもひん剥いてやるよ」
女子は完全に怯え、ガクが怒りのままに近づこうとしたが、
「そこまででいいだろ」
「.........死にますか」
とサクラとは別に、正面と背後をとられたタイガは固唾を飲んだ。
「流石に、いやそれ以前に許せるわけないよな」
と学年一の色男『西木 幸樹』は殴りかかったタイガの腕を掴んで睨む。イケメンのガチギレって、怖くね?
そしてその背後はさらに怖いだろう。なんたって首元には短刀を当てられているのだから。殺意をビシビシと向けられて。
「チッ......冗談だって。いいだろ、離せよ」
短刀を下げて距離を取った彼女を待ったコウキは手を離す。バツが悪くなったのか自分のグループに戻ると同時、ようやく王が戻ってきた。その間も何人か残っていたのに、こいつら、完全に無視していやがったぞ。