Izzo
お腹いてー!!
「起きろーっ!!バカ兄貴ー!!」
「んがはっ!!」
朝っぱらから腹に衝撃を受け、目を覚ます。
「お兄ちゃん!!遅刻するよ!!」
眠たい目をこすりながら声の方を向く。
「奈緒。お兄ちゃん、お腹、痛いから。学校休むから。」
「それは、もう一発かかと落としを食らいたいってフリかな?」
お前、兄貴にかかと落とし食らわす妹どこにいるんだよ!?
「今すぐ起きます。もう眠くありません。」
リアルお腹痛ぇーよ。
「もう。毎日起こしに来る身にもなってよね。
朝ご飯出来てるからね。」
そう言って奈緒は俺の部屋から出て行く。
あ〜眠たい。あ〜学校めんどい。
でも、行かなかったら金城の拷問が…
「おはようさん。」
「はい。お兄ちゃん、コーヒー。」
「……。」
制服に着替え、テーブルに着く。
里緒は、時々カクンとなりながらパンを食べてる。
大丈夫か?コイツ。
我が家では、俺と里緒はとてつもなく朝に弱い。
奈緒だけが朝キチンと目が覚め、みんなを起こし朝食を作ってくれてる。
「里緒!早く食べて学校行くよ!!」
「…わかた。」
奈緒と里緒は俺より20分ほど早く家を出て行く。
今のところ無遅刻らしい。えらいねぇ〜。
「じゃあね!お兄ちゃん 。行ってきまーす♪」
「いってきます。」
「あぃ〜。」
奈緒と里緒を送り出し、タバコを吸いながら、めざましテレビを見る。
くぁ〜。眠ぃ〜。
俺はいつもこの20分の間に寝てしまい、遅刻している。
だって眠いだもん。
♪〜♪〜♪〜♪〜
あぶねぇっ!!ちょっと寝てた。
ソファーでウトウトしてると携帯が鳴りだした。
このエクソシストの着メロはタマか?
「はぃよ〜。なした〜?」
『お〜。アクマ起きてたか〜。俺、今日休むから〜。』
「あ〜。なんでぇ〜?」
『中免の卒検あんだわ。』
「わかりった。頑張れよー。」
『サンキュー。んじゃな〜。』
タマからの電話を切り、俺も家を出る。
ん〜。今日は遅刻しなさそうだぜ。
いつもの通学路を通り、学校に着く。
教室の前に何やら人だかりが出来てる。
ったくよー。邪魔くせぇな。
「おー。ちょっと通してくんねーか?」
出入り口の前にいた女子に声をかけ教室の中に入る。「テメーか!?佐久間って奴は?」
自分の席に着こうとすると見たことねー奴が話しかけてきた。
ん。この襟章。二年生か。
「そっすけど。なんすか?」
「なんすか?じゃねーんだよ!テメー、昨日俺の後輩ボコにしたらしいな?ケジメつけに来たんだよ。俺とタイマン張れや。」
昨日のバカどもの先輩ってワケね。
あー。たまに遅刻しないで来るとこれだよ。
THE めんどくさい。
「狂おしいくらい眠たいんで後にしてくれませんか?」
「テメー!ざけんな!!」
いきなり殴りかかって来やがったよ。この人。
野蛮人め。
仕方ねー。やるかぁ。
と思った瞬間。
先輩の体が教室の床にたたきつけられた。
こんなことできるのはアイツしかいねぇな。
「おはよー。てっちゃん。めずらしいねー。この時間に学校いるの。」
かっつんは笑顔で俺に話しかけてきた。
笑顔が眩しいぜ。このやろー。
かっつんの家は合気道の道場をやっていて、小さい頃から合気道をたたき込まれたらしい。
入学式の日に、かっつんとタイマンを張ったけど相当てこずった。
「おい先輩。俺にも勝てねーのに、てっちゃんに勝てるわけねーでしょ?次、てっちゃんにちょっかい出したらグチャグチャにするよ?」
かっつんは、床でもがいてる先輩の髪を掴んで脅す。
もうっ。この子ったら、可愛い顔して言うことはエグいんだからー♪
先輩は
「か、勘弁してくれ!!」と言いながら、逃げるように教室から出て行った。
「おー。かっつん、サンキューな。」
「いーよ。てっちゃん倒すの俺だし。」
かっつんは笑いながら、自分の席に着く。
えー。かっつん強いから喧嘩したくないわー。
「鉄人くん。おはよー!今日は遅刻しなかったんだね?」
席に着くと玲奈が話しかけてくる。
今日も可愛いねー。
「おはよ。遅刻しなかったらこれだよ。
嫌になっちゃうねー。」
「アハハ。たまたまだよ。それに遅刻したら、金城先生に何されるかわかんないよ?」
た、確かに。
金城の拷問に比べたら、さっきの出来事なんて可愛いもんだぜ!
お。噂をすれば現れやがったな!
「みんな、おはよー。今日も1日頑張ろーね♪」
誰だ?この人?
金城だよな?
なんでこんな爽やかなんだ?
いつもとキャラが違いすぎる!
「佐久間と玉山と角田は遅刻っと。それ以外でいない人いる?」
俺は遅刻確定かよ!?
なんて奴だ!
「先生ぇー!俺、いるっつーの!!ちゃんと見てやぁー!!」
「え?佐久間? 佐久間がこの時間にいるぅぅ!?なんでいるんだよ!?ミスったー!ちゃんと化粧してくるんだったー!!」
いや、そんな驚かなくても…
あんたの拷問が怖ぇからいるんだよ。
「先生は化粧しなくても綺麗だから大丈夫だよ?今日、遅刻しないで来たんで、今度デートしてください。」
俺が金城に百万ドルの笑顔で言う。
「う、うるさいっ!!今日は朝から不愉快だ!!帰るっ!!佐久間のアホーっ!!」
金城は顔を真っ赤にして教室から出て行ってしまった。
つか、帰んなよ。
「なんじゃ?アイツ。」
俺は玲奈に問いかけるが、玲奈は苦笑いで
「さぁ?」としか答えてくんない。
訳の分からん教師だこと。
結局、この日一日金城の姿を見ることはなかった。
アイツ、ホントに帰りやがったよ!!
マジでお腹いてー!!