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Come out and play

アツいなー。ホルモン



新曲激アツいなー

「カッコ良いじゃん♪常識ハズレ♪カッコ良いじゃん♪道徳破り♪」


THE HIGH-LOWSの『彼女はパンク』を口ずさみながら、冬が近づき少し肌寒くなった通学路をいつも通り遅刻しながら歩く


はぁ…

タマは普段通りでいいんじゃね?って言っていたけど、やっぱり玲奈と顔を合わせるのはなんとなく気まずい…


泣いてたのかぁ…

なんで?俺の事が好きだから?

ありえねーよ

いや、でも…

タマの言うとおり男友達がキスしたの見たくらいで泣かないよな。

じゃあ、やっぱり…?

でもなぁ…やっぱりありえねー


頭の中は糞ループ


「ホントなんだよ。壊したいんじゃない。壊れてみたいだけ。コナゴナに。か…」


退屈に飽きちゃった。

この曲の最後の一節みたいに退屈に飽きてアクションでも起こしてくれりゃあ分かりやすいのに…


女の子にそれを求める俺もパンクでもロックでもないのかもな…



ゴチャゴチャ考えてる内に教室の前にたどり着いていた


「まぁいつも通りでいいか…」


小さく呟き教室のドアを開ける



「佐久間、また遅刻か?」


現国の田原が呆れ顔で言う


「すんません」と一言。

自分の席に着く


「よお」


「おはよ」


隣の席の玲奈は俺と目を合わせず挨拶だけをして、黒板の文字を写していた



わかっちゃあいたが薄いリアクション

いつもなら微笑んで挨拶してくれんのに…

心なしか目元も腫れてるし…


やっぱり、それは俺のせい…?



ん〜。気まずいから寝ますか…


机に突っ伏し横目で玲奈を見る


チラリともコッチを見やしねー


なーんか。つまんねーな…



それから俺は眠りに落ちていった。



昼休みに周りがやかましくなりタバコを吸いに屋上へ


寝起きすぎて食欲わかねー


教室に玲奈、美鈴、カオルの姿がなかったのは寝ぼけてても確認できた


屋上にはいつものメンバー


くわえタバコでフェンスに寄りかかる


くわえてたタバコに火を点けてくれたのは、かっつんだった



「てっちゃん、どしたよ?元気ねーぞ」


「そんなことねーよ。寝起きだからだよ」


タバコの煙を吸い込み、吐き出しながら答える


「そ。てっちゃん、12月24日にワンマンでクリスマスライブやんねー?」


「はぁ?」


かっつんのいきなりの提案にタバコを落とす


「『石蔵』のマスターから誘いがあったんだよ。ワンマンでやってみないかって」


『石蔵』って言うのは、50人くらい収容できる小さなハコのライブハウスだ

人の良いマスターがいて、小箱だが俺たちも、けっこう利用させてもらってる

特にクリスマスに予定があるわけでもないし、断る理由もない



「俺はいいけど、かっつんとミスターはいいのかよ?」


まだ付き合ってないけど、2人ともいい感じの女の子いる。

クリスマスなんて勝負キメる良いチャンスじゃねーか


「俺たち、ライブが終わった後が勝負だから!」


かっつんが爽やかな笑顔で言う

ミスターは照れくさいのか頭をポリポリと掻いている



「初めてのワンマンなんだからライブの方に力入れろよ」


タマが呆れた顔をして言う


「もちろん!告る前にカッコ悪い所みせれねーもん」


かっつんが笑顔で返す。


なんか動機が不純な気がするが、張り切ってるみたいだしいいか。


そーいやぁ、優香にライブやるから遊びに来いって言ったなぁと思い出して、見上げた空は無駄に高かった


「もう冬かぁ…」


それから昼休みも終わり、教室に戻って席に着く


玲奈にクリスマスライブの事を言おうと思ったが言葉は歯の裏で溶けた


そして、机に突っ伏し俺はまた寝た



学校来てからいいだけ寝たのに、放課後まで寝てしまった。

どんだけ寝んだよ。俺は…


放課後はクリスマスライブに向け、改めてミーティングをしようとかっつんが言ったのでダラダラと部室に向かう


部室の前には、玲奈、美鈴、カオル、紗季ちゃんが立っていた


玲奈はともかく、紗季ちゃんの表情も心なしか暗い



「鉄人、ちょっと話があるんだけど」


美鈴が俺の目を見据え言う

内容は昨日の事だろうな。めんどくさいな


「あ〜。とりあえず中入れよ」


女子4人を部室の中に招き、椅子に座る


「ほいで、なに?」


聞かれる事はなんとなく予想ついてるが一応訊ねる


「………。昨日、ボーリング場でキスしてたの誰?」


少し間を置いて質問をぶつける美鈴

ミスターとかっつんがものすげー勢いで俺を見る


テメェらが反応すんじゃねーよ


「元カノ」


俺の一言に明らかにテンションダウンの女子一同


一言しか言ってねーのに玲奈と紗季ちゃん泣きそうやん


「なんで?なんで元カノとキスしてたの?」


「成り行き」


ぶっきらぼうに答える俺

空気が重たい


「よりを戻したの!?」


「いや」


口調が少し荒くなってきてる美鈴に一言返す



「……ッ!あんたは付き合ってもない女の子とキスするの!?しかも、もう終わった関係だとか言ってた元カノと!?」


「成り行きだよ」


「成り行きって何よ!?あんた、あんな人多い所で流されてキスするような軽い男なの!?それとも終わったとか言っときながら、まだ好きなの!?それならやり直してからキスでも何でもすればいいじゃない!!」


美鈴の怒声が俺に浴びせられる

玲奈と紗季ちゃんが半泣き、つーか、泣いてる…?

カンペキ、俺悪者じゃん



あ〜。もう無理…


「ゴチャゴチャうるせぇな!

なんで俺がそんなに言われなきゃなんねーんだよ!?俺だって人間なんだよ!健全な男子高校生なんだよ!

そんなもん女の子にキスしてって言われたらするわ!当たり前だろ!

その辺のゴミくずポップシンガーのウンコくせー歌みたいな恋愛論押し付けられたってウゼーんだよ!

そんなボケカスラブソングみてぇなの望んでねーし、いらねーんだよ!

俺は俺のノリで動いただけだ!

キスとか、セックス、やり直すとか、そんなもんいちいち考えてねーよ!そん時、その場のノリで決めたるわ!!」



しばしの沈黙


ハッとした時には玲奈と紗季ちゃんのすすり泣く声と涙を溜めて俺を睨む美鈴


やってしまった感満載のこの空間に耐えれなくなった俺は「帰る」と言って部室を出る


部室の前には金城が背を壁に預けながら立っていた


「佐久間、気ぃつけて帰れよう」


話を聞かれていたのか、特に何も言わず微笑みながら俺に挨拶の言葉をかけた金城に小さく頷き廊下を歩く



冷静になると罪悪感に苛まれそうだった。



暴言吐いて 笑いながら 進む 霞む頭

打開策 落ちてねーから

鳴らすテレキャス 「壊す?」と漏らす



作りかけのメロディーに適当に歌詞を乗せ口ずさむ


「……駄作だな。」



俺の呟きは無駄に高くなった空に吸い込まれていった

あんまりロックじゃない展開に自己嫌悪……



鬱くしい人々のうた聴こーっと

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