Year3000
マンネリ気味やね
「上等だぜ!」って言ったのは良いものの、なかなか生徒指導の中村が俺の腕を離してくれない。
「先生、離してよ。このまま俺ら引っ込んだら、先生悪者だよ?」
「かまわん!中止は決定だ!」
俺の交渉も虚しく、ガンとして中止と言い張る中村
頭の固いおっさんだなぁ〜
どうすっかな。タマとミスターはイラついた雰囲気なってきてるし、間が空くと観客も冷めちゃうから早めの対処が必要だぜ
「そういえば中村先生。昨日、四条通り歩いてましたよね?風俗店が多い」
かっつんがいつもの爽やかスマイルで中村に言う。
中村の顔が若干引きつってきたぞ
「たまたま昨日、そこ歩いてたら先生が店に入って行くのが見えたんすよね。確か、店の名前が『ナース天国−触っていい
「よぉーし!行ってこい!!お前ら!!すぐ行けっ!!ぶちかませ!!ゴーゴーインブル!!」」
「「「さすがかっつん…腹黒いやん」」」
あっさり手のひらを返す中村
ま、そりゃ生徒指導の先生がおっぱいパブに行ったっつーのがバレたら、大人の事情で面倒くさい事になるんだろうけど。
なんにせよライブ続行出来るから万事解決じゃい!
「佐久間、俺達はここで抜けるよ。あんなに観客入るなんて、思ってなかったしプレッシャーハンパねぇわ」
「それに私達も君達のステージを観たいし!」
藤堂先輩と千夏先輩が申し訳なさそうに笑い俺達に告げる
「千夏さん!そこの特等席でしっかり見ててね!」
かっつんが極上スマイルで千夏先輩に言う
かぁー!あのスマイルは卑怯だわ。千夏先輩、顔真っ赤だし…
「ほんじゃ、スパパーンとかましますかぁ?」
手首をぐりぐりと回し、ステージに向かう
「いやーすいません!いらん水が入りましたが、ライブ続行します!インブルはやりますよ!!」
『オォー!』
俺の言葉に歓声が返ってくる。
「よぉーし!んだば、そろそろイクどー!!」
吉幾三先生のモノマネを絡ませながら、曲を始める
俺達の曲の中でもトップクラスの疾走感をもつ曲
『cloudy sky rickey』
曇り空を切り裂くような酒っていうニュアンスのカクテルをイメージして作った曲
っていうのは後付けで、単純にノリ重視の曲です。歌詞はテキトー。
専門的な用語を使うなら、ドロップDチューニングの2ビートサウンドで…っていう感じです。
つーか、説明めんどいわ!
とりあえず、観客のノリ最高ってことで!
「次の曲で最後です。俺達の事を知ってる人も知らない人も、是非ライブに遊びに来てください!ついでに、今日はうちらのクラスにも寄ってヤキソバでも食ってから帰ってください!んじゃ、最後の曲っつっても、他人様の曲です!『JOHNNY B GOODE』」
sex pistolsやAC/DCもカバーしているチャック・ベリーの有名な曲
バック・トゥ・ザ・フューチャーで演奏してるシーンを観て、俺達も演奏したくなったのだ!
オールドロックなダンスナンバーなので最後の盛り上げには最適な曲だ。
おっさん連中にもウケがいいしね。
曲の終わりは得意の全員ジャンプで終了
「ババア喫茶夏子リボルバーよろしくっ!ありがとございましたっ!!」
拍手を受けながら、ステージから去る
ライブハウスとは違う楽しさがあって楽しかったけど、あんまりオリジナル曲やらないライブだったな……
とりあえず、宣伝目的だったからいいか。
「タバコ吸ってから教室戻ろうぜぇ〜。手伝いめんどいけどよ」
タマの提案に顔を伏せるミスターとかっつん
「女だろ?行ってこいよ」
「悪ぃな!後で差し入れ持って行くからよ」
「ごめんね。てっちゃん、タマちゃん」
かっつんとミスターは、軽く謝ると足早に千夏先輩と愛菜ちゃんとこに走ってった
「アクマは誰かと学祭回る約束してねーの?」
「あぁ。特にしてねー。誘ってくれる奴もいねぇし」
「淋しいやっちゃな!」
「るせー。とっとと一服して教室手伝うぞ。客入ってなかったら金城ブチギレすっぞ」
タマとポテポテと歩き屋上に向かい、プカプカとタバコを吸い、またポテポテと教室に向かいドアを開ける。
めっちゃ客が入ってるやんけ!
なんて、そんな訳ないやん。
パラパラとしか客入ってねーよ!
「おぅ!お疲れさん」
ヤキソバをモソモソと食べながら、ゆーたさんが挨拶をする
横ではstand outと+25℃、swallowtailの2人、その他バンドの人達がヤキソバやジュースなんかを食ったり飲んだりしていた
「ちゃーす。皆さん来てくれたんすね。あざーっす!」
俺の言葉に、みんな笑顔で応えてくれた
「相変わらず、君らは面白いライブをやるね〜。楽しかったよ」
+25℃のシマノさんが握手をしながら笑顔で言う
「あ、ありがとうございます。」
インディーズとは言え、有名人と握手するのは緊張しますな。
他のバンドの人達も羨ましそうな目で見ている
「そーいやぁ、ゆーたさん。さっきのCDって?」
タマが売り物のDr Pepperを飲みながら、ゆーたさんに問いかける
「あー。俺達もデビューって奴だよ。お前らとライブやった後、声がかかってな。インディーズだけど+25℃と同じレーベルだし、これ以外にやりたい事ねぇし、学校辞めて音楽一本で食っていくんだ!」
stand outの三人はめちゃくちゃいい笑顔でそう言った
「もうちょっとゆっくり話したかったけど、俺達これから事務所行かなきゃなんねーんだ。かっつんとミスターにもよろしく言っといてくれ!んじゃな!!」
手を振り教室から出て行くstand outと+25℃
最近まで一緒にライブしてたのに、あっという間に遠い所に行ってしまった気がする
「stand outは凄いね。ここら辺のバンドじゃ群を抜いて上手かったけど、デビューだもんね」
俺の横でstand outと+25℃を見送っていた奈津美ちゃんが呟く
「おっ!なっつん、久しぶり。あの人達はやっぱ凄ぇわ。なんか置いていかれた感がハンパねぇわ」
「インブルだって凄いと思うよ。私はインブルの曲、好きだよ!」
ニコッと笑い俺に言う奈津美ちゃん
ヤバいね。ふつーに嬉しいわ。
「てつじん、これからヒマ?ヒマなら学祭、一緒に回らない?」
上目使いで俺に問いかける奈津美ちゃん
ぼちぼち客が入ってるけど、抜けても大丈夫そうかな?と教室を見回すと、ものすげー視線を感じる
「なんだよ?玲奈?」
「別にー!ただヒマなら手伝ってくんないかなーと思って!待ってるお客さんもいるし」
明らかに機嫌悪そうに言う玲奈
俺、なんかしたっけ?
「ごめん。なっつん。ちょっと、こっち手伝うわ。お詫びに俺の特製ヤキソバ作るからさ!」
奈津美ちゃんに手を合わせ謝り、作業場に向かう
「アクマ、あの2人めっちゃ睨み合ってるぞ…」
睨み合う玲奈と奈津美ちゃん
リンダマンと坊屋春道並みの威圧感がありますな…
殴り合いとかやめてよ。マジで…
「いたっ!なにすんの!?鉄人君!!」
玲奈のデコにデコピン一発
「お客様を睨まない。ほら、そこのキャベツ切って」
「むー!」
ガスッガスッとキャベツを切る玲奈
キャベツは親の敵と言わんばかりの乱暴な手付きです
パッパッとヤキソバを作り、こっちも不機嫌MAXの奈津美ちゃんの席まで持って行く
「お待たせ。こんなもんしかなくて悪いね。今度、埋め合わせするから」
「絶対だからね!約束破ったら、欠損事故ルーレットしてもらうからね!」
帝愛グループの人間かっ……!?
そんな冷徹サディズムな罰ゲームは勘弁してもらえないっすかね…
「わかりました……」
なんで俺が理不尽な目にあわなきゃならんのだ!
でも逆らったら、欠損じゃすまねーな…全損するよ……
俺の体がね
チートとかヤンデレとか、おじさんそんな言葉わからんわっ!!