E.M.I.
「―――くん! 鉄人君ってば!!」
「ん〜。おはよーさん。玲奈。」
顔を上げるとふくれっ面の玲奈が立っていた。
「おはよーさん。じゃないよ! 鉄人くん、全然起きないじゃん!」
立ち上がり、伸びをしながら周りを見渡す。
クラスの半分以上は教室からいなくなってる。
「あー。もしかして、ホームルーム終わっちゃった?」
「とっくに終わってるわよ。バカ。」
美鈴が呆れ顔で言う。
だから俺はバカじゃねーって。
「そーかぃ。タマとミスターとかっつんは?」
「みすた君とかっつんはバイトあるから先に帰るって〜。タマちんは、まだ寝てる〜。」
カオルはタマの方を指差しながら言った。
アイツも寝てるんかぃ。
「鉄人くん。金城先生が『次、私が来たときに寝てやがったら、焼き土下座だからな。』だって。私は何回も声かけたのに起きないから〜。」
玲奈は頬を膨らませて、そう言った。
つーか、おまっ…!!
焼き土下座って、熱した鉄板の上で土下座させられる拷問じゃねーか!!
教育委員会とか『ざわ…ざわ…』ってなっちゃうよ!?
とりあえず、ご立腹の玲奈の頭を
「ごめん。ごめん。」と言いながら撫でる。
玲奈は頬を赤らめながら、嬉しそうに微笑んだ。
機嫌、直ったみたいね。良かった。良かった。
「あんたら、教室きたら寝てばかりね。特にあんたとタマはホントやる気ないわね。」
美鈴はため息をつきながら言った。
「やる気?んなもん、小3の時にトイレットペーパーと一緒に流したわ!」
美鈴はため息をつきながら
「はいはい。」と言っている。
カオルと玲奈は苦笑いしてる。
「まぁ、タマ起こして帰ろーぜ。」
俺とタマと美鈴は同じ中学だったから、帰る方向は一緒だ。
玲奈とカオル、ミスターとかっつんとは駅まで一緒に帰ってる。
「ほれ。タマ!起きろ。」
「ん〜。アクマか〜?もう帰る時間か〜?」
タマがアクビをしながら聞いてきた。
つか、お前、寝起きだとさらに目つき悪くなんのな。
子供みたら泣くぞ。
「いや〜!寝起きのコーラは美味いですな。」
「ですな。」
「ですなー♪」
「鉄人くん。ありがとね!」
「ありがと。」
下駄箱に行く前に玲奈に紅茶を買ってあげると、他の3人にもせがまれたんでジュースを買ってやった。
ちなみに、タマとカオルと俺はコーラ、美鈴と玲奈はレモンティーを飲んで下駄箱まで向かってる。
下駄箱の近くの廊下でたむろしてる不良達とすれ違った。
まぁ。ガラの悪い人たち!
って、俺とタマも大して変わんねーか。
「やめてください!離して!!」
下駄箱で靴を履き替えてると声が聞こえてきた。
「なんで俺じゃダメなんだよ!?お前の事が好きなんだよ!!」
おー。青春だねぇ。トレンディーだぜ。
「おい!アクマー!ちょっと覗いてみようぜ!」
タマがにやけながら俺の肩を叩く。
あら、タマちゃんノリノリねー。
かく言う俺もノリ気なんだけどね。
「私も見るー!」
お。ノリ気な奴がいるじゃない。
「やめなよー。可哀想だよ。」
「そ、そうよ。邪魔しちゃ悪いわよ。」
美鈴と玲奈が慌てて止めようとする。
あら?お堅いのね?
「別に邪魔しねーよ。覗くだけだし。」
そう言って、タマと俺とカオルは声がした下駄箱の影から覗いてみる。
「私はあなたと付き合えません!だから、離して!!」
「お前が俺の事を好きだって言うまで離さない!!」
イタい男だなー。潔く諦めろよ。バカ丸出しじゃん。
「もうっ!!離してっ!!」
―バチン!!
あちゃー!!痛そー!!
朝青龍も真っ青なビンタだぜ。
「―っ!このアマ!!調子こきやがって!! おい!この女、連れてくぞ!!」
ビンタされた男が叫ぶと、廊下ですれ違った不良達が走ってきた。
「お前、ふられてんじゃん!ダッセェー!!」
「ヒュー!この娘、可愛いーじゃん。早くヤッちまおうぜー!」
不良達が女の子を囲みながら騒ぎだす。
「アクマー。アイツら、ぬっ殺そーぜ。」
「そうですなー。やっちまいますかー。」
「喧嘩はダメだよ!」
「私、先生呼んでくる!」
「やめとけ。美鈴。叱られたくらいじゃ、アイツら反省しねーよ。」
タマが美鈴を睨み付けながら止める。
「そー。そー。それに不良が喧嘩をするのは自然の摂理ってもんだ。」
アイツらムカつくから殴りてーし。
「でも、あの人達人数多いよ?」
カオルが心配そうに言う。
「6人くらいだべ?楽勝ブイだぜー!」
心配そうなカオルの頭を撫でながらブイサインをする。
さぁて!久しぶりの喧嘩だぜ!!