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Roll on

眠っいぃー!

ステージと控え室を繋ぐ廊下

ここからホールの様子が見える

客はかなりの数が入り、まだ始まらないのかという表情をしている


一発目の演奏は俺達

その後にstand out

そして特別ゲスト+25℃



言い方が悪いが俺らは前座だ

メインでもない奴がビビり、空回りするなんてダサい事をする前に、いつもの自分達を取り戻す事が出来て良かったと思う



「準備出来てるか〜?」


ふぃ〜っと深呼吸をしてから全員の顔を見回す

全員がニッと笑う

さっきの不安感は嘘のように溶けたみたいだな



「ほいじゃ、兄貴たちのためにメタメタに盛り上げまっか?」



ポケットからケータイを取り出し、電話をかける


客が入る前に設置しといた古い携帯電話

それに電話を掛けると鳴り響く、16和音の『軍艦行進曲』



元は軍歌でパチンコ屋で昔よく使用されてた曲


曲が流れ客がザワつく


まだステージの照明はつかない

暗い内に俺達はステージに上がり、各々の楽器を握る



「いっくぜぇー!!」


俺の声でステージの照明がつく

そして弾きだす激しい音

16和音の古臭い音からロック調にかわる『軍艦行進曲』

ちなみに歌詞はメチャメチャ

テキトーにつけた歌詞だから深いメッセージ性とかもない


いや、俺達の曲に元々メッセージ性の強い曲はない。

押し付けがましいのは嫌いだし、誰かに媚びたり共感してもらいたいなんて思っちゃいない


J-POPみたいにわかりやすい歌詞を鼻くそみたいなメロディーに乗せる曲を作るぐらいなら、オナニーでもしてた方がマシだ


理解出来る奴だけ理解して、一緒にワイワイガヤガヤしてくれたらそれでいい



ステージ上から見える、ヘドバンやモッシュしてる奴ら

ああいう奴らを見るとガチでテンションが上がる



「はい。どーもぉ!インブルでぇーす!」


俺ららしいゆる〜い挨拶


前回のライブに来てくれてたお客さんなのか、俺達メンバーの名前を読んでくれる人もいる


「あ〜。ども。こうやって名前呼んでくれる人達がいるのは、ありがたいですねぇ。

でも俺達のことを知らない人もいると思うんで、自己紹介しま〜す」



かっつんがドラムを叩き出す


「インブルのちびっ子ドラマーかっつん!身長低いけど、顔のレベルは高いぜ!憎たらしい!!」


そして、俺のベースが乗っかる


「言わずと知れた、インブルの顔!てつひとー!変人でーす!」


タマが俺の紹介をし、そしてミスターのギターも入る


「爆発頭のシャイボーイ!ミスター!!今日のお前イカしてるぜ!」


そして、ジオン軍のモビルスーツ『グフ』のマスクをしたタマが入る


「連邦軍をぶっ殺しに来た、ご存知ジオン軍の青い奴。パイロットはもちろん――」



『タマぁぁぁあ!』


俺が名前を紹介しようとしたら、客から歓声


なんでコイツこんな人気あんの?

観客なかにはデストロイヤーマスクをしてる奴もいるし



「俺らがインブルでぇーす!覚えて帰ってね!じゃ、二曲目『Fr!sk』」


『Fr!sk-フリスク-』

ご存知、清涼菓子です。ミントのスースーする奴。


俺の曲作りには欠かせない物。コーヒー、タバコ、そしてフリスク


単純にフリスクを喰った時に浮かんだメロディーから発展した曲だから、この名前にしてみた。


もちろん歌詞にはフリスクのキャッチフレーズ『Sharpens you up』が組み込まれている

尖るような高い音の激しさとミントの様な爽快感をイメージした曲



そしてそのまま三曲目

『Life with the camouflage pattern』


迷彩柄の人生

ごまかしごまかされの人生を生きる人間だから、虚仮か真実かが曖昧になってる人生で必要なモノは楽しさ

嘘でも笑った奴の勝ちだろ?

なんて俺達らしくない哲学的な詞を誤魔化す為のアップテンポのメロディーの曲




二曲目、三曲目と客の反応も上々だ

ジャンプやヘドバンを一緒にしながら盛り上がる


すげー楽しい!



「いやー!みなさん最高ですな?ねぇ、玉山さん?」


曲が終わり、MCに入る

水を飲み、タマに話を振る


「あ゛ーぢぃんじゃ!この!!」


タマは被ってたマスクを脱ぎ、客席に投げる

やっぱ投げるんだ…


「暑いなら被んなよ!ねぇ?ミスター

って、なしたの?」


今度はミスターに話を振る

無言のミスター 何故か前屈みになっている



「その不自然な立ち方……まさか…勃ってるんすか!?」


タマがにやけながら話に乗っかる



「う、うるせー!!早く、次の曲いけよ!!」


うろたえるミスター


「次の曲って、君のイントロからだよ。大丈夫?弾けるぅ?」


「大丈夫ですっ!んじゃイキます!『struggle』」


前屈みの状態からギターを弾き始めるミスター


前回も演奏したこの曲


ちなみに前回はタマがイントロを担当したが今回はミスター

タマ曰わく、ミスターの方が力強い音を出せる為ミスターに任せた方がいいらしい

ミスターはストレート、タマは変化球って感じ



前回の時同様、この曲は俺らの中でも盛り上がる曲だ

ステージからダイブする奴もいる


そんな奴らを見るとホントに楽しくなる

コイツらにはちゃんと熱が届いてるんだなって確信できる




「じゃ、寂しいっすけど次で最後です。」



『えーっ!!』


観客からの声。

嬉しいな。まだ2回しかライブやってないのに、こういう反応が返ってきてホントに嬉しい



「あざーっす!でも、今日は特別スペシャルビッグゲストがいるんですよ。マジ今日は最後まで絶対観ていった方がいいですよ!じゃ、最後『Cheap trick』」


上っ面の言葉、下手くそな小細工が溢れてる日本への批判的な歌詞

シンプルなメロディーラインからの展開がある


海外のバンドを真似てシンプルにしたかった

小細工や混じりっ気のない音と歌詞

それこそがキンタマにズキューンと響く『芯』の音楽になるのだろう

と思い作った曲



盛り上がりは最高潮

しかし、楽しい時間はあっという間に終わる


曲のシメに全員でジャンプする

俺達は照れくさそうな笑顔でお客さん達に手を振りステージを去る


あー。楽しかったなぁ。

喉いてぇけど…



控え室でへばる俺達4人


へばってはいるが、熱は抜けていない

これからstand out、+25℃の演奏

のんびりしてるヒマはない


単純に楽しみにしている二組のライブ

嫌でもテンションが上がるぜ!

モツ鍋食いてぇな…

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