Young and hopeless
日が開いてしまって本当に… すまないと思ってる。
「あっ!目、覚めた?鉄人くん?」
「んと… ここはどこですか?」
白い天井に白い布団、鼻をつく消毒液の臭い。
意識がはっきりしないまま辺りを見回す。
「どこって?病院だよ。」
病院…
病院!?なんで病院にいんの!?俺!?
確か、玲奈を家まで送るって言って、ストーカーに襲われて、ストーカーぶっ飛ばして、ピースして……
ん〜そこから記憶がないなぁ。
「傷、大丈夫?痛くない?」
玲奈は俺の手を握りながら心配そうな顔で言う。
コイツ、目が赤いぞ。泣いてたのか?
「あ〜。大丈夫、大丈夫。つか、玲奈が病院に運んでくれたの?」
「うん。鉄人くん、急に倒れちゃってスゴい血が出てたし、私のせいで…こんなこと…に…」
玲奈は喋りながら涙を流しはじめた。
まいったなぁ… こういう雰囲気苦手なんだよな…
「泣くなよ。俺は何ともねーし、別に玲奈のせいじゃねーから!な?」
俺は少しオロオロしながら玲奈を慰める。
「だって…私…が……」
「だーかーらー泣くなって!!それ以上、泣くとアレだよ!?おっぱい揉んじゃうよ?」
ダァー!何を言ってるんだ!!俺はぁぁ!!
もっと違うのあるだろ!?
つーか、どーしたらいいんだよ!?
「心配かけてゴメンな?とりあえず、玲奈にケガ無くて良かったよ。」
俺は玲奈の額を俺の胸に引き寄せ、優しく髪を撫でる。
あ〜。なんかダセェし、恥ずかしー!!
「玲奈、少し落ち着いたか?」
「うん… ごめん…」
玲奈は俺から少し離れ、涙を拭きながら言う。
は〜。ダメだ。女、泣かせるなんて、何やってんだ。俺は!!
―――ガチャ!
「お兄ちゃん!!」
俺も玲奈も何も喋らず重い空気の中、ドアを勢いよく開けて病室に入ってきたのは奈緒と里緒だ。
「ケガ大丈夫!?」
息を切らしながら奈緒は半泣きで俺に言う。
里緒もかなり心配そうな表情で俺を見てる。
「大丈夫だよ。わざわざ走ってきたのか?」
「だって…お兄ちゃんが…病院にって……玲奈さんから…電話が……」
大丈夫そうな俺を見て安心したのか、奈緒と里緒は泣き出し、それを見た玲奈がまた泣いてしまった。
「そっか。俺は大丈夫だよ。部活で疲れてるのに走ってきてくれてありがとな。」
俺は立ち上がり奈緒と里緒を抱きしめる。
つーか、泣くなよ!
もらい泣きしちゃうよ?
「なんつーか…ごめんな?」
「兄ちゃんの…バカ…… 心配したんだから…」
里緒はそう言い俺から離れる。
「そうだよ……バカ兄貴…」
奈緒も俺から離れ、軽く俺の胸を叩く。
「あー!ダセェな!!俺はー!! かっこわるすぎんぜ!ちくしょー!!」
目の奥に込み上げてくる熱いものをごまかす様に俺は大声だす。
イテテ… ちょっと傷に響くな。
「ちょっと!静かにしてください!」
俺の大声が聞こえたのか、いかついおばちゃん看護士が俺の病室に入ってきた。
そこは美人看護婦が入ってきてよ…。
「あら?佐久間さん、目が覚めたのね。今、先生呼びますんで、ちょっと待っててくださいね。」
と言って、おばちゃん看護士は病室を出てった。
もちろん先生は美人女医が来るんだろうな?
――ガチャ
「さすが若い子、意外と大丈夫そうじゃないか。どうだい?傷は痛むかい?」
そう言いながら俺の病室に入って来たのはハゲたおっさん…
なんで美人女医じゃねーんだよ!クソー!!
「大丈夫っす!じゃ、お世話になりました。」
「コラコラコラ。誰が帰っていいって言った。今日一日、安静にしてなさい。」
病室を出ようとする俺をみて、ハゲ医者は俺を止める。
「だが断る!!こんなマキロンみたいな臭いが充満したとこに居たほうが病気になるって!帰してくれ!!」
「そりゃマキロンみたいな臭いだってするさ!病院だもん!!」
えー!何ギレだよ!?
「佐久間さん、あんた、角材で殴られてんだよ?ちゃんと検査しないと」
「さっき妹たちにベホイミかけてもらったから大丈夫。むしろ大丈夫!」
俺は親指をグッと立てる。
「むしろの意味がわからんがホントに大丈夫なのかい?」
大丈夫だって何回言わせんのさ!!医者のクセにバカなのか?
「イエス!こんな傷、余裕のよっちゃんイカでごわす。」
「そうか。なら今日は帰りなさい。そのかわり、傷が痛んだり、体調が悪くなったらすぐに病院に行きなさい。約束だよ!」
話しが分かるじゃねーか?ハゲ医者。
ハゲだけどヤブじゃねーんだな。
「オッケーっす!んじゃ、お世話になりました。ありがとうございます。」
俺たちは頭を下げ、病室を出る。
「あ〜。腹減ったなぁ。なんか飯でも食って帰るか?」
「それはいいけど、お兄ちゃん、制服血まみれだよ?」
「え?な!なんじゃコリャ!!」
太陽にほえろのGパン刑事みたいになってるやん!
つーか、そんなに流血したのか?俺は?
「血まみれ男と外食なんてヤダ。」
言ってくれるじゃないか。里緒ちゃんよー。
確かに俺もヤダけどね。
「玲奈!」
俺たちが病院から出ると、凛々しいスーツ姿のおっさんと綺麗なマダムが玲奈に駆け寄って行った。
「お父さん!お母さん!」
「玲奈!大丈夫か!?ケガしてないか!?」
「うん…私は大丈夫だけど…」
玲奈パパは俺の方を見て、もの凄い勢いで俺に近づいてくる。
「君が玲奈を…………感動したっ!!」
玲奈パパはそう言い、俺の手を握りしめる。
つーか、顔近い!!
「うちの大事な一人娘を、よく守ってくれた!しかも、自分の身を犠牲にして。なかなか出来ることじゃあない!少年犯罪が多い、このご時世に君みたいな勇敢な男に出会えて私は非常に嬉しいよ!!」
近い!近い!顔近い!!そして握ってる手が痛い!!
「あ〜。そんな立派なもんじゃないっすよ。実際、殴られて気絶してたし。」
俺はパパさんの手を解き言う。おー。手いてぇ。
「玲奈の言うとおり、良い男ね〜。佐久間君、あなたがいなかったら、玲奈はきっとケガをしていたわ。心にも体にもね。どうもありがとう。」
今度は玲奈ママが俺に近づき言う。つーかマジ美人だな。
確かにケガなくて良かったよ。
「佐久間君、君のご両親にもご挨拶とお礼をしたいんだが、こちらにはいらしゃってないのかぃ?」
「あ〜。うちの両親は他界してますんで、どうぞお気を使わずに。」
「そうだったのか。すまない!失礼な事を言ってしまった。」
玲奈パパは申し訳なさそうな顔をして俺に頭を下げる。
「いえ、気にしないでください。妹たちと毎日楽しく過ごしてますんで」
俺は奈緒と里緒の頭に手を乗せニカッと笑う。
「そうか。君は立派だね。玲奈と同い年で強く生きてる。」
「とてつもないアホゥなだけっすよ。それじゃ、僕らはそろそろ帰ります。」
俺は玲奈の両親に頭を下げる。
「今日は本当にどうもありがとう。今度、ゆっくりウチに遊びに来なさい。妹さん達もね。」
玲奈の両親も頭を下げ、笑顔でそう言ってくれた。
「ぜひ行かせて頂きます。玲奈、また明日な!つーか明日までに、その真っ赤な目なんとかしとけよ?」
「うん。ありがとう。バイバイ!」
玲奈に手を振り病院から歩き出す。
あ〜。体、痛ぇ。
「兄ちゃん、本当に大丈夫?」
里緒は俺の制服の袖を掴み訊ねる。
「大丈夫じゃない。って言ったら何かしてくれる?」
「何もしない。」
しねーのかよ!?
オラ、ビックリしたぞ!
「お兄ちゃん、タクシーで帰ろ?」
今度は奈緒が袖を引きながら言う。
「んだね。疲れたしね。」
少し広い通りに出てタクシーに乗り込む。
ったく。散々な1日だったぜ。
ちなみにストーカー君は警察に御用となったらしい。
ざまぁねぇぜ!ばーか。
気がついているだろうか?サブタイトルがアルファベット順になっていたことに… そして、一巡したらAに戻るべきか否か… 困った!!