第二次王都襲撃2
「敵勢力は二小隊!
全て人造だと思われます」
上空からミアの報告が入る。
数にしておよそ100といった所か。
意思を持たない甲冑の小隊が、金属音を鳴らしながら王都へ歩みを進めてくる。
「これだけの数の人造をこの短期間で作るなんて…」
ルビアの呟きに、“淑女”はいつもの微笑みの裏側で思案する。
甲冑の下は想像でしかないが、規律正しい足音を響かせる事から想定して人間と同じ関節を持つだろう。
人形の人造は、まだ実験段階だったはず。
「機械仕掛けの姿は見えないのね?」
「確認できる限りは」
「そう」
“淑女”の横まで下降してきたミアに再度確認をする。
「ミア。焼払いなさい」
まだ侵略者達との距離はある。
彼の事だ。
この人造小隊の後に機械仕掛けの追撃もかけてくるだろう。
その前に打てる手は打たなければ。
「範囲は二小隊全てよ。よろしくて?」
「わかりました」
再度上昇を始めたミアの次は傍らに残る少女だ。
「ルビア。武器は持ってきていて?」
「準備万端です」
ルビアはホルスターから二挺の拳銃を取り出す。
一見通常の拳銃に見えるが、“淑女”の意匠である細やかな細工が成されている為、威力は桁違いだ。
「ルビアには焼き残しをお願いするわ」
「了解です!」
女王軍の最前で次々指示を出す“淑女”の様子を見ながら、王国軍に不穏な空気が流れ始める。
魔女に出した指示は『焼き払え』だった。
つまり、不用意に剣を用いて近づけば巻き込まれる事は容易に想像がつく。
「…っ!魔女め」
この国の戦いに魔法をはじめとする異分子を持ち込んだのは、他でもない科学者の“淑女”だ。
あの魔女を拾ってきてからというもの、この国の戦いは大きく変わってきている。
「団長…」
「ともかく、あの魔女のやる事にまきこまれるな」
既に侵略者達を一望できる距離まで昇ったミアは、緊張に震える手で箒を握り直す。
「大丈夫…できる」
やらなければ“淑女”の作戦を潰す事になるのだ。
深く深呼吸をして、息を正す。
「我が命に従え!炎!!」
ミアの払った手の軌道上に現れた紅蓮の炎が、侵略者達に向かって解き放たれる。
爆発を伴わない、ただ焼き尽くす為に産まれた炎が辺りを覆う。
「今だ!」
王国軍の団長が号令をかける。
目標は炎から逃げてきた人造だ。
逃げ惑う甲冑姿は人となんら変わりないが、むしろ今まで人間相手に戦争をしてきた王国軍には慣れた最適の相手。
「魔女の炎に巻き込まれるな!」
「流れ弾にもご注意ください」
敵味方入り乱れる隙間を狙って、ルビアの銃が牙を向く。
どういう軌道を読んでいるのか、甲冑の隙間から弾を当て仕留めていた。
「炎と通常弾、斬撃は有効なようね…」
戦況を確認しながら“淑女”は人造の様子を伺う。
悪趣味な工夫が施されていないという事は、あの中身はほぼ人に近い人工物という事になる。
「クラウディオに伝言をお願いしたいわ」
“淑女”の傍らに控える伝令係を、戦闘に参加しているであろう同胞の元へ走らせる。
「必ず人造を一体捕獲する様伝えて頂ける?」