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謁見

 モダンな調度品に囲まれたサロン。

 この国の中枢の一室で向かい合うのは二人の淑女だ。


「今回も侵略者は撤収。

 捕獲する事は困難だと思われますわ」


 一人は“淑女レディ”。

 先の襲撃についての報告をしている。


「ご苦労様。

 襲撃の頻度が高くなってきているのが気掛かりだけれど…一先ずは安心かしら?」


 もう一人はこの国の女王。

 豊かな濡羽色を指先に巻き付けながら、深い溜め息をつく。


「ねぇ“淑女レディ”、根本的な解決策は未だないのかしら?」

「直接彼を叩くという事以外は何も」

「それが出来たらこんな苦労はしてなくてよ」


 麗しい二人の淑女の睨み合いを目撃した人物がいない事が幸いだろう。

 絵画の様な空間は、一転して地獄絵図に変わる。


「彼の置き土産のせいで…ね。

 それに関しての成果はまだ出せていないようだけれど?」


 女王が言う置き土産とは、現状この国が抱える最大の問題だ。

 現在王都を中心とする広範囲で、陸路は霧で海路は雷雲の包囲が出来上がっている。

 謀反を起こしこの国を去った天才が残した難問であり、数ヵ月経った今も解決策は見つかっていない。


「失礼致しました。

 言葉が過ぎましたわ」


 そこは一応主従関係なのだろう。

 先に折れたのは“淑女レディ”だ。


「結構。

 それに、こちらとしても何も対策していないわけではないのよ?」


 焼け石に水程度でしょうけど…と呟きながら、女王は手元の書類に視線を落とす。


「今回は機械仕掛けの鳥ね…。

 王都襲撃では獣の大軍で、次は海から鯨でも来襲させるおつもりかしら?」

「彼ならあり得そうですが、完全防水となると…」

「ただの冗談よ」


 どうにもこの女王の冗談は笑いにくい。

 そもそもサロンで馬鹿笑いをするほど“淑女レディ”は愚かではないが。


「一先ず各都市に対向できそうな人材は随時派遣しているわ。

 “淑女レディ”は一刻も早い究明をお願い」


 彼女麗しい唇から紡がれるお願いの言葉は命令に近い。

 それでも“淑女レディ”は微笑みを浮かべながら、こう返した。


「仰せのままに、“陛下ユア.マジェスティ”」


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