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03:村への来訪者

えぇっとあべこべ要素…どこいった?


一応書いておきますと、レーキが男だと知っているのは母親と村長だけです。


村長はレーキが男だとバレない様に周囲に目を光らせてる出来る女性です。




「なるほど、確かに動物の死体を埋めた場所には花が生えやすいですね」


そういって彼女はレーキの言葉を真剣に聞き、メモを取りつつも魔法石と呼ばれるものに音声を録音している。


魔法というファンタジーなものがテープレコーダーのように使われているのを見ると、少しばかりレーキは昔思い描いたロマンのようなものが壊された気がする。


レーキは心に少しダメージを追いながらも笑顔でごまかしていたが、もちろんそれだけではなく感心している部分もあった。


科学で行えることが魔法でも行えるという事実を目の当たりにしたからだ。


そこに気が付いたときは少し興奮してしまったが至って冷静に顔に出ないようにレーキは押しとどめた。


「それにしても、これが魔法具ですか…本当に魔法というのは便利ですね」


レーキは彼女の手の中に納まっている魔法石を見ながら、人差し指でそっと触る。


触り心地は至って普通の石であり、微かに暖かいのは彼女の体温が移ったのかどうなのか。


だがレーキの言葉とは裏腹に、彼女は困ったような目で魔法石を見る。


「はあ、便利といいましても適性がなければ使えませんし、応用は聞きますが魔力に依存しますし、それに魔法具は高価ですのでお役所勤めの私は備品として安く買えますが一般の家庭では買えませんよ」


なるほど…そうだよな、魔法の道具なんだから魔力が必要だし値段がするのも当然か、とレーキは彼女の言葉に納得する、しかしそれだけでは無い様で彼女は言葉を続けた。


「私としても便利だとは思いますが、使える回数が決まっているものに依存するのは好きじゃないんですよね」


そういった彼女は苦笑いを浮かべながら、手を光らしてレーキへ見せてくれる。


不思議な光だった、白いような温かみがある光がぼんやりと手を覆っている。


綺麗だと感じたが、同時に太陽の光を浴びる時とは違う何とも言えない心地の良い感情がレーキの心に生まれる。


神聖さと言えるのだろうか、神仏の類を信じていないレーキにはこれは深く知ってはいけないものだと脳が拒否する。


ただ、それと同時に「もっと知りたい、触れてみたい」という抗えない興味というものがレーキの中に生まれるのも感じていた。


レーキはこのままではおかしくなると思い慌てて頭をふり、ごちゃまぜの脳内をリセットする。


もし、神の存在を信じている人ならば、あの光は神からの贈り物に違いないと信じレーキのように振り払う事は出来なかっただろう。


何とかレーキは口を開き、言葉を発する。


「でも魔法だろうとメリットとデメリット、ちゃんと理解していれば物は使いようですよ」


興味をうすくするために誰でもわかっていることをあらためて口にする、


自分に言い聞かせるように、目の前でみた光も道具にすぎないと信じ込ませるために。


少しするとすぐに光による洗脳のようなものは抜けていった、ただもう一度見てみたいという気持ちはどうしても残ってしまったが、それほど問題はないだろうとレーキはひとまず安心した。


「本当にレーキちゃんは6歳とは思えない人格してますよね」


そんなレーキの姿に彼女は呆気に取られて、すぐに微笑む。


「はは、ありがとうございます」


彼女、いやミドリがこの村に来たのはごく最近のことだった、あの野菜の件の後、国王にこの村の視察を依頼されミドリはひとりで村へとやってきた。


ミドリが来た初日、レーキは詳しいことは聞いてないし、聞きたくないので彼女の質問にはできるだけ簡潔に答えるようにし、早々にお引き取り願おうと思ったが…ミドリは出来た人だった。


優しいというか、丁寧というか、人格が出来ているという表現もありかもしれない、性格がよく役人特有の上から目線でもない、だからレーキもツンケンした態度は取り払い今の関係となった。


ミドリ自身、最初にレーキのことを村長を紹介されたときは半信半疑だったらしいが、村長から紹介された日ずっとレーキと一緒にいたら彼が肥料を作ったことを理解したようで、


揶揄われていたのではないとわかってからは彼女はレーキの知識を自分の知識にしようと良い意味で貪欲にレーキに質問していた。


しかしレーキは丁寧に教えようとしたが、窒素、リン酸、カリウムと言った知識のない人に肥料の説明するのは難儀だった。


どうやらミドリを含んだ彼女たち農業士と呼ばれる存在は魔法の力で土の自然としてのバランスが崩れていないか測定していたようで、逆にレーキがミドリに話しを聞いても魔法を知らないレーキはミドリの言葉に困惑する一方だった。


なんとか土の栄養が…同じ野菜だとサイクルが…とレーキはない頭を捻りながらかみ砕きつつミドリへ説明をした、そのかいあってかミドリもある程度レーキの説明を理解できるようになっていき、ようやく詳しく話が出来るところまで準備が整った。


しかし、やはりミドリは研究者気質が高いのだろう、土のことをあらかた説明し終わると今度は別の物に興味を持つ。


「なにか他に作っているものは無いんですか」


「ありますが、まだ材料も揃っていないので試せてもいません、他には、えっとパピルス…紙、羊皮紙の簡易的なものも制作は失敗しましたね」


「へぇ、紙ですか羊皮紙も紙ですが、それとは違うんですか」


「えぇ、羊皮紙とは違い植物から作れたら狩りを出来ない人でも手に入れやすくなるかなと思いましたが…」


レーキの言葉に彼女は目を輝かす、そのとおりだと何度もうなずいている。


ですが、ダメでしたとレーキが言うとミドリもあからさまにガッカリしていた。


「ちなみに、どういう失敗だったんですか」


それでも諦めきれないのかミドリはレーキから詳しく聞こうとしてくる、その際もメモをするためにメモ帳は片手に持っている。


「実物ありますけど、見ますか」


「はい、ぜひ見せてください」


レーキの言葉にミドリは明るく返事をした、失敗作だろうと違う人の目が入ることで考えも生まれるだろうとレーキは家まで彼女を案内し作った紙を見せた。


出されたパピルスは茶色く色むらも激しい物だった、だが問題はそこではない。


「確かに、薄すぎてすぐに破れそうですね」


ミドリはパピルスを通して陽の光を見る、厚さは和紙にも劣るだろう、ミドリに見せた紙はとても薄くインクを垂らしただけで破れてしまう可能性がある。


「そのとおりです、ですが動物からとれる皮だと加工場が限られますので何とか成功させたいんですけど」


動物から出来上がる羊皮紙は保管さえよければ長い時間保存が出来る優れモノではあるが、価格が高く村長が昔はもっと安かったんだけどねぇ、と商人と話しているのをレーキは目撃していた。


レーキはミドリに作り方を説明しつつ、意見を求めた。


「うーん、この紙二つをくっつけて厚みを増させるとかはいかがでしょう」


「それも考えたんですがどうしても二枚に分かれてしまうんですよね」


「なら最初から厚くしたらどうでしょう、格子状に置く際、もう二段ばかり多めにしてみては」


はっ勿体ない精神のあまり灯台下暗しとなっていた、薄いのならば厚くすればいい、当然のことだ。


ただそうなるとゴワゴワ加減が増し、表面の凸凹を慣らすのが大変だ、だがトライアル・アンド・エラーの精神、失敗して生まれる解決策もある…。


だが今は他にやりたいことがあるので空き時間で試すとしよう。


とりあえずレーキはパピルスをあった場所にしまおうとすると「それって頂いてもいいですか?」とミドリが言ってきたためレーキは快くミドリへと差し出した。




なんかファンタジーものだと魔法の研究に狂ったキャラクターが出てくるので、魔法は少し怖いものとして書きました、魔法を使いたい?そんなあなたはSANチェックです。

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