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01:村への恩返し

別にあべこべ物を書いている最中に、思いついたあべこべシーンを書きたいがためにもう一つ作品を書くという訳の分からない結論にいたりました。


亀の歩みで更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。




豊かな緑が萌える季節、いつもと変わらない穏やかな村の中心、そこでせっせと働く少年の姿がある。


しかし、少年というには少しおかしな点が見受けられる、それは服装である。


綺麗な服とは程遠いが気になる点はそこではない、彼はスカートをはいているのだ。


確かに地域によっては男性でもスカートのような物を着る文化もあるのだが、この村には特段そのような風習はない。


ならばなぜ少年はそのような格好をしているか、まずはそこから話すとしよう。


彼がこの世界に生を受け早くも5年ほどの月日が流れた、彼はすくすくと育ち村の人々は彼をたいそう可愛がってくれた。


だが、ある年になったとき少年が母から渡された服は…スカートだった。


裾が長くミニスカートじゃなかったのが唯一の救いだったかもしれない。


「お母さん…本当にこれなの?」


と、遠い目をした少年をどうか責めないでほしい、服を着ている最中白目をむきながら「僕は変態じゃない、そういう性癖を持っている人種がいるということは否定しないけど僕は変態じゃない」と彼は呟きつつけていたそうだ


…呟いている最中の彼はなんとも悲壮な顔をしており、そのあまりの姿に見る人が見れば痛々しく目を背けたであろう。


勿論少年は母に理由を聞いた、少年はうすうすは気が付いていたが、この世界で男性はとても貴重であり男性だとバレると誘拐は勿論のこと様々な危険性があると説明された。


それだけではなく国からも無理やり徴集される可能性もあるとのこと、しかし、それほど強引な手に出るのならば、男子を見つけるために国も対策をしているはずだろう。


母はどうやってこの村で自分を生んだのだろうと少年は疑問に思いつつも、とりあえず母の言うことは理解できる内容だったため迷惑をかけないためにも女装は必要なことだと納得した。


それから数年たち、少年はいまだにふとした瞬間に気恥しくはなるが、こういうものだと慣れることが出来た。


最近のもっぱらの悩みは髪の毛の長さである、今では肩まであり少々頭を洗う時に大変になってきた。


何度か母に長すぎるから切っていいかと少年は交渉をしたが、ダメと即答され取り付く島も無かった。


まぁ彼の女装についての言い訳は説明し終わったところで、今日も今日とて彼は母親の料理を手伝っていた。


「レーキ、…そっちの料理焦げそうだから火から離して」


「はいよ、母さんそっちの鍋はそろそろいいんじゃないか」


「…そうね」


レーキと呼ばれた少年と彼の母が火を入れた料理を違う女性が隣のテーブルへ持っていき、木でできた皿にもりつけている。


村の中心にある食事場にはたくさんの料理が並んでおり、彼らからしてみればこれが慣れた昼時の風景だった。


そして料理が全て終わったぐらいだろう、畑や狩りに行った女性陣もちらほらと帰ってき始め、各々今日の収穫物を食事場の隣のスペースに置いている。


野菜や小動物など、小さな村にしてはそれなりに裕福に獲物を捕ることができているのではないだろうか。


ただ野菜の大きさや見た目は正直言うとみすぼらしく、良い状態とは言いづらい。


「おっす、レーキちゃん今日もお疲れ」


そういって女性の一人がレーキに近づいてきた、彼女の名前はミラ、畑仕事をしているメンバーのリーダー的な存在である。


畑だけではなく狩りも優秀であり、狩猟グループのリーダーからも頼られるなど村には無くてはならない存在の一人である。


「ミラさんもお疲れさまでした、今日の収穫はどうでした?」


レーキの言葉にミラは肩を落とす。


「うーん、やっぱり少しづつ採れる量が減ってきてるな、なんとかしなくちゃいけないんだけど」


「やっぱり王都の農業士にアドバイスをもらったほうがいいんじゃないですか」


「私もそうは思うんだけど、金がかかるしなぁ」


農業士、王都で国に仕えている農業アドバイザーであり各農村に出向きアドバイスを与えて歩くのが仕事である。


だが、何分この王国内にある農村を全部渡り歩くということは不可能であり、メインは大規模農業を行っており尚且つ税収率が高い村が中心となる。


レーキが今住んでいる村のように小さな村はお金を払って足を運んでもらうしかないという状態である。


「やっぱり、どうにか金を工面するしかないか、まあどうにかして見せるよ」


そういってミラは笑うが、正直どうにもできない状況だというのは誰もが理解しているだろう。


狩りで撮った獲物は腐るため王都に売りに行けず、骨や角などの装飾に使える部分しか売れない。


そうなると、やはり野菜に頼るしかないのだが、先ほども言った通り年々大きさも小さくなり収穫量も減っている。


俺の実験がうまくいけばいいのだが…レーキは現状を何とかしないといけないという悩みから色々とやっており、ようやくそれの結果を確認できる日がやってきた。


何とか結果が良好でありますように、と祈りを込めるとレーキはご飯をかき込む。


食事が終わり片付けへと入る、手先が器用な人は血抜きが終わっている動物の解体を行っているが、レーキは皿を川へと運んでいる最中である。


「うーん、どうにか水路なんかも村に引きたいけど、上流から分岐させるしかないよな」


なんとかこの村に恩返しをしたいと考えてはいるが俺の小さな体では力仕事は行なえないし、かといって成功するかもわからないことで村の人の手を借りるのも忍びない。


「何か実績をさっさと作らないとなぁ」


食器洗いも終わり、村の手伝いもあらかた終わりレーキはいつものところに顔を出した。


いつものところとは自宅の裏にレーキが自分で作った畑であった、畑は2つありそれぞれに同じトマトの苗が10個ずつ植えてある。


片方の畑に植えたトマトは現在収穫しているものよりも少し大きいぐらいであり、


前からこの村で作っていたトマトと大きな差はない、だが、もう片方の畑のトマトはしっかりと身が大きくなり茎も太めにがっしりとしている。


ここで何を試しているかは勘の良い人ならすぐにわかるだろう、ここでは肥料の効果を試していた。


全く同じ生育条件で、片方は今まで通りの育て方、片方は肥料を埋め込んである。


勿論栄養過多にならぬよう、肥料の量などは調整してだ、驚いたことに、この世界では肥料という概念がなかった。


頼みの綱の農業士は土の栄養という考えはあるようだが、あくまで痩せた土地の土を違う土地から持ってきた土と混ぜたりしバランスを戻すということに念頭を置いているようだ。


素人の浅知恵だが何となくは上手くいったようでよかった、レーキは小声で呟くと、トマトを何個か摘み口にしてみる。


青臭い匂いが口に広がる、実はレーキはトマトは苦手であった、だが自分で作ったからには食べてみて違いを知らなければ。


「若干、こっちのトマトのほうが甘いのかな」


しかし、嫌いな食べ物を頑張って食べたというのに、何分まだ食の経験値が不足している子供の味覚では何となくしかわからなかった。


「おーい、レーキ実験はどうなった?」


しばらく味についてレーキがうんうん唸っていると実験の見物にミラさんも畑に来たようで、レーキの肩を叩く。


「そろそろ実が付いたころあい…ってなんじゃこりゃあ」


ミラさんはレーキの持っていたトマトを一つ手から取ると口に運ぶ。


「しっかりと味が出てるな、色もいいし大きさも上物だ…」


「僕としては成功だと思うんですけど、どうでしょう」


「あぁ、成功ってもんじゃない大成功だよ、最初魚の骨やらを集めて焼いたりし始めたときはお飯事でもしてんのかと思ったけど」


そういってミラはレーキに手を合わせると頭を下げた。


「レーキちゃん、この畑の作り方を教えてくれ」


ここからレーキの村への恩返しは始まった。


恩返しどころではなく村を巻き込み大陸を相手にした大商売の始まりとは知らずに。




幼少期を書いていても展開がなく坦々と進んでしまったために一気に物語の起点まで飛ばしました。

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