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まだ辺りは暗く人込みは大して多くない石畳の道、いまはまだ朝早い仕事人が歩いているだけだが、昼過ぎにもなればここは人で埋め尽くされる。


町の真ん中には噴水があり、出会いの噴水と呼ばれている、由来は…よくある話で、貴族と農民の娘が恋に落ちた場所ってことらしい。


年に一度、年頃の娘たちがこの町に集められたときの光景は圧巻である、皆が噴水の方へ行くので、正直近くに店を構えている人々にとってはいい迷惑であった。


また、噴水から北へ足を進めると今度はギルドという国営施設があり、お悩み相談所のような役割を持っている、依頼を出す方は国営施設に登録されている信頼できる人間に仕事をしてもらえるという安心感を持て。


依頼を受ける方は依頼人と請負人の間に第三者の目が入っているため適正な金額の仕事が出来る、つまりは足元を見られたりする心配がないということである。


そこからさらに北にはここが王都と呼ばれている所以、クシャトリア城が建っているクシャトリアというのはこの国の王の名前であり代々の王を務めた、もしくわ務めている人のみが名乗ることが出来る名となっている。


そんな王都に居を構える、一人の男、彼の名はレーキ。


この時代、男は希少であり通常ならば城や各貴族が大層大事に愛でているだろう、何度も彼を欲しいという女性はいたが彼のことを大事に思っている大貴族の好意により彼の自由は保障されていた。


といってもレーキも気に入られるために慣れない腹の探り合いなどをし自己の有用性をアピールして件の大貴族から勝ち取った権利と言えよう。


ではそんな男がこの王都で何をしているかというと、小売業である、そんな苦労して小売り?それなら貴族に飼われていた方が楽じゃないのか…という意見はもっともである。


事実、生きていくだけならばその方が楽だし、よっぽどの貴族ではない限り領地に限り自由を約束されることだろう。


だがレーキはとある目標があった、それは世話になった村への恩返しである、単純な目標であり、口にするのは少々照れ臭いが、それでもやはり成し遂げたい目標。


彼は男として生まれたが、女性の恰好をして育てられた、男だとバレたら色々と危険だからであった。


そんな事情を知っていながら知らないふりをしていてくれた人、男だとは全く気が付いていなかったが実の子供のように育ててくれた村人たち。


育ちが複雑なだけに彼は多大な愛情をもって育てられた、だからこそ彼の意志は固い、何が何でもあの村を有名にして見せるという決意。


話しを戻そう、レーキの小売業だが決して無鉄砲に行動した結果などではない、


下準備をし、各方面への根回しをし小さな努力を重ねた結果である、それに小売りというのも存外この国にあっていた。


この国ではいまだ時価による取引が当たり前だった、その年大量にとれた野菜ならば価格は下がり、消費者は安く買えるが生産者は買い取りを拒否される、


逆に寒波などで荒れに荒れた場合は高級食材のような価格まで上がる。


ようは安定が無いのである、普通の村ならば一度生産物の買い取りを拒否されただけで餓死者が出るなんてザラであった。


しかも上記の高級食材の価格まで上がり野菜を買い取ってもらえたところで、そんな状態であるため生産量は少なく、正直普通に売った時と同じ金額ほどしかたまらないということの方が多い。


生産者と交渉し時価ではなく定価にて消費者に提供できるように安定性を、生産者には変動が少ない一定した利益を、まだ農耕社会のこの世界において商人からすれば意味の分からない商法だろう、


理解できたとしてもよほど大きな後ろ盾がなければ成功しない試みだっただろう。


ではそんな大口を叩いて、レーキは成功したかと問われれば彼は言いよどむ、まだまだ考えが甘かった部分は多大にあるからだ。


というかレーキが目指したかったのはホームセンターであり…決して会えるアイドル的なポジションではなかったのだ。


そんな男の朝の一幕を紹介しよう…


レーキはまだ外が暗く、魔法による光が路上を明るく照らしている時間帯にすでに外を歩いていた。


だがその恰好は肩まである艶やかな黒髪を結ぶこともなくおろし、顔にはうっすらと化粧がしてある。


着ているものも…男性ものには見えないだろう。


「お、今日も早いねレーキちゃん」


「あ、おはようございます」


近くでのれんを上げていた宿屋の店主である女性が挨拶をしてくる。


「ほら、朝ご飯だよ持ってきな…にしてもレーキちゃんはお兄さんと仲良くできてるのかい?」


女性は植物の葉で包まれたおにぎりをレーキに渡す、いつものことなのでレーキは断ることなく受け取る。


「いつもありがとうございます、それで、兄とですか…?」


「あぁ、レキさんとレーキちゃんが一緒にいるところを見たことが無いからね…」


彼女は心配そうにレーキへと尋ねる。


「あぁ…ええっと大丈夫ですよ、何せ男性と歩くだけで面倒な世の中ですから…」


「そうだよな、ったくワーキャーワーキャーと男が珍しいってのもわかるけど相手の気持ちも考えろってんだよな」


宿屋の店主の女性はそんな女性たちへ憤りを覚えているようで軽く舌打ちをした。


女性たちが男性へ黄色い声を上げるのが当たり前の世の中で、彼女はそれに真っ向から喧嘩を売るような発言をしたわけだが、これも彼女なりの優しさなのである。


現に彼女の宿にめったにないが極稀に男性客が泊まっていることがある、理由は絶対に客に迷惑をかけるような人間を店の中に入れないからだ。


彼女の前でワ―キャー言おうものなら箒でしばかれ店の外の放り出されるだろう。


男性たちも彼女の宿ならば安心して寝れると言い、その界隈では王都の城下町で泊まることになったら彼女を頼れと言われているらしい。


「えぇ、まぁ…えぇっとそうだ、前にも言いましたけど…」


「ん、わかってるってレーキちゃんとレキさんが兄妹だって出来るだけ言わないでってんだろ、わかってるよ宿屋の女ってのは口が堅いんだぜ」


そういうと彼女はにっこりと人好きの良い笑みを浮かべる。


「はい、面倒ごとは嫌なので…すみませんがよろしくお願いします」


「おう、じゃ私は客の朝飯を作るとするかね…今日の昼頃にでも包丁を取りに行くわ」


「はい、研ぎは終わってますのでいつでもご来店ください」


「はいよ、んじゃまた後で」


「はい」


レーキは会話も終え店への道を歩き進める…。


まぁ言わなくてもわかるだろうが、さきほどの兄の正体について説明しよう、レーキは店で立っているときはレキとして立ち、私生活ではレーキとして過ごしている。


店で男としてふるまっている理由はスポンサーである大貴族からのたっての頼みである…仲間内でレキのことを自慢したいそうだ。


まあ世話になっているしそれぐらいと考えレーキはレキとして店に立ったが、すぐに店の客層が若い女性だらけへとなった。


確かに予想はあった、こんな世界だ男として立ってしまえばこうなるだろうと…だが人の噂も75日と考えたが、75日では治まらなく、


最近では隠し撮り写真…魔法により絵なのだが、そんなものまで出回っている始末。


世話になっている大貴族の娘、レーキからすると小さいころ一緒に遊んだ友人なのだが、彼女までそれを持っていたことには内心焦った。


とそんなことをレーキが思い出していると店の前まで着いていたようで、いつも通り玄関のカギを開けて中に入る。


中には知り合いの女性が店の通路で倒れるように寝ている。


いつものことなのでレーキは特に気にせず奥まで足を運び、今日の予定について確認する。


「昼に包丁の引き取り…追加して、そうだギルドに商品の運搬を依頼しに行かなくちゃな」


皆が見る…みなと言っても従業員はまだ片手で数えるほどしかいないのだが、彼女たちと共用している黒板に連絡とお知らせを書いたりしていると日が昇り、王都に鐘の音が鳴り響く。


「よっしゃ、今日も一日…アイドル活動…じゃねえよお仕事頑張りますか」


この物語は男女比が激しく、魔法や亜人、魔物などファンタジー要素溢れる世界で大型ホームセンターを目指す男の物語である。




現代でもイケメンやら美女が店員をしていたらそれだけで流行ったりしますよね。

この世界で「男性」が店員をすれば…もはや崇拝かな?


というわけで、次話からは過去の話しとなります。プロローグの時間軸までたどり着くのはいつのことになるのかわかりませんが楽しんでいただけたら幸いです。


※アイドルって書いていますが、男性が店員をすればこうなるよね、と思って書いただけですのでほとんど本編に関係ありません、ギャグ要素としては入れますけど気にしないでください。

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