ハルカ④
出来ました、二話連続投下。
ぜひ読み比べながら(?)楽しんでください!
ハルカは思った。
前例は再行の力となる。
貴族の言葉遊びである。忘れて欲しい。
初めて入れ替わって外出して以降、ハルカとハルはしょっちゅう入れ替わるようになった。しかし、入れ替わるといっても服を入れ替えるだけで、外へ冒険に行ったり、屋敷に侵入したりする事は決してなく、やる事はお話しする事。お互いの服を着るだけで気分が変わって、話の楽しさが変わってくる。ハルの生きる世界を見て、ハルカが感じた事。それが格差だ。容姿は全くと言って良いほど同じなのに、生きる世界が違いすぎる。ハルカは豪華な服でハルの話を聞くのが正直辛かった。ハルは何も悪くないのに、生まれの違いという理由だけでここまで違うことに対する申し訳なさが心を蝕む。しかし、ハルの服を着て話すと、何故か気が楽になる。逃避だろうか。それでも良い。ハルが楽しそうに聞いてくれる限り、私は私の話をする。
ハルカとハルの間では表面上、二人は平等だった。身分なんて気にする様子を見せないよう、気兼ねなく話すように心がけていた。だからハルカはだんだん忘れていった。皇族である限り、起こりうる可能性について。そう、革命。
いつものようにハルを待っていた。普段は壁の向こうの存在なんて全く気にすることはなかったが、一度見たからだろうか。少しだけ聞こえてくる音に耳をすませた。本当に無意識の行動である。いつもの場所でいつものようにハルと落ち合って、自然な流れで入れ替わった。
「へぇ〜。他に何かあったの?」
「そうそう。昨日ね、ここから帰る途中…」
日常の当たり障りのない話の最中。
事は起こった。
今までに聞いたこともない音が屋敷の庭園に響き渡った。その正体が分からず、ハルカはハルの方へと身を寄せた。
「何?ハル、怖いよっ…。」
恐怖で身が震える。そんなハルカを守るようにハルが抱きしめてくれた。温かい。ハルがいる限り私は大丈夫だ。しかし、民は皇族の思考とかけ離れた事をし始める。
「ハルカはここで待ってて。様子を見てくる!」
「まっ…待って。」
ハルカの声は周りの音でかき消されたのか、ハルが無視したのか。ハルが立ち止まらなかったという事実を前にすればどちらも変わらない。未だ大きな音が鳴り響く庭園にハルカは一人残された。
この屋敷は敵に襲われている。一人になって、ハルカは少しだけ冷静さを取り戻した。たかがこれしきの事で動けなくなるなんて、皇族失格だ、情けない。
「あぁぁぁぁぁぁ!」
叫びで全ての恐怖を振り払い、ハルカは立ち上がった。ハルの服はとても動きやすい。武芸の訓練着よりもずっと。
今日この瞬間のために私は頑張ってきたのかもしれない。一先ず武器が必要だ。武器庫の位置は把握している。誰にも見つからないよう、建物の陰に隠れながら素早く移動する。衛兵は屋敷の中を行き交っているが混乱状態で誰もハルカの存在に気づかない。もし私が敵だったらどうするんだ。武器庫近づくにつれて、見かける人の数は減っていき、転がる遺体の数が増えていった。嫌な予感がする。考えたくはなかったが、武器庫に辿り着き、中を覗いて確信した。武器庫は既に敵が占拠していた。これでは武器なしの私は戦えない。衛兵も持つ武器は制式武器だけで、強力なものは使えない。幸か不幸か一騎当千の父や姉は今、屋敷にいない。武器は無くとも私には戦うという選択しか残っていない。武術は嗜んでいる。賊ぐらい素手で片付けてやる。
「うらぁぁぁ!」
ハルカは武器庫の中へと飛び込んだ。
武器庫の中にいた賊は一人を除いて雑魚だった。奇襲で片付けられたが、たった一人。たった一人だけハルカでは絶対に倒せない強敵がいた。
「乞食子よ。敵ながら天晴れ。殺すのは惜しい。降伏しないか?」
ハルカは何も答えない。後悔はないと言ったら嘘になる。だが、殺されるのを怖いとは思わなかった。殺せと言わんばかりに相手を睨みつける。
「そうか…。それが答えか。」
鮮血の香り広がる武器庫の中。ハルカの意識は途絶えた。
また気が向いたら書く感じでいきます。
気が向く事を祈りながら…
また。