ハル②
結構早かったね(๑>◡<๑)
私は私に興味がない。
なぜなら私は私に何もしてくれないから。
私が私のことを知ったところで残るものは虚無感だけである。
つまり声がどんなかなんて気にしたことがないし、どんな容姿か知らない、そもそも知る術がなかった。
「え……。」
私にはあなた様と私がそっくりなんて全く思えないのだ。私とあなた様は生きている世界が違う。
あなた様は雲の上の存在、見上げる事しか私には許されていない。
「本当に私とあなたはそっくりよ。」
あなた様は私の心中を察してくれたのだろうか。
私に近づき、手を取ると、世にも不思議な世界の片隅にある、見たこともない台の前に連れていかれた。
「御覧なさい。そっくりでしょう。」
その台に写し出されていたのは、華やかなあなた様とその隣、なんともみすぼらしいあなた様。
すぐには状況を理解出来なかった。ふと自らの衣を見る。台に写っているものと全く同じ。
信じられない。しかし、間違いない。
写し出されている、このみすぼらしいあなた様は私だ。
「ね。そっくりでしょう。」
私が状況を理解出来たとみると、あなた様は微笑む。
「声もそっくりよ。あいうえお花が綺麗だよ。言って御覧なさい。」
「…あいうえお花が綺麗だよ?」
「えぇ。そっくり!」
私にはイマイチよく分からなかったが、あなた様が言うならば、と納得した。
「それで、あなた。本当に名前がないの?」
名前。その言葉の意味や存在、どう言ったものかは分かっている。
しかし、そんなもの私は持っていない。私の生きる世界では名前を持っている人なんてごく一部。
偉い人と強い人だけだ。
「ない。俺にはない。」
真面目に言ったのにあなた様はまた笑った。が、気にしていない。
あなた様の心中を理解しようなんざ私には不可能だ。
「それは不便ね。…じゃあ私が名前をつけてあげる。そうね…もう一人の私…ルカ、いや違う……ハル。あなたは今日から遥。分かった?それと、自分を指す時は"俺"じゃなくて"私"と言いなさい。女の子なんだから。」
「ハル?…わ・た・し?……ありがとう。」
「うむ。苦しゅうない。恩義を感じるなら、私と友達になりなさい。そして、これから毎日ここに、私に会いに来なさい。分かったわね。」
この時。遥香、八歳。遥、推定八歳。
こうして私はあなた様、遥香と友達になった。