[ハルカ]ハル⑥
今シリーズに関しましては、作者誕生祭ぶりの投稿になりますね……。
ここまで長かった!
残念ながら、この長い空白に比例した質ではありませんがお楽しみいただければ幸いです。
今でも悪夢で目を覚ます。
細かい展開はいつも違うが結末はいつでも同じ。
血だらけの「ハル」がハルを殺す夢。
十年前の皇帝本邸襲撃事件。ハルは「ハル」を殺した。
助けられなかった。
襲撃直後。入れ替わったままで、ハルカの服装だったハルはハルカの従者に守られながら無事皇帝宅から脱出した。
脱出と言っても気絶した状態で、ただ運ばれただけで、気がついたら別荘のような閑静な館にいた。
本邸からの使者により、襲撃の報告を受けた皇帝は外出先である別邸から最速で帰還すると、率いていた軍で即座に皇帝本邸を奪還。
僅か襲撃から一日での出来事だった。
しかし、悲劇は終わらなかった。
皇帝の出先であった別邸に残っていたハルカの姉、第一皇女が暗殺されたのである。
ハルカとハルが居た本邸を襲った者達の別働隊による仕業だった。
つまり、急いで帰って来るあまり、皇帝率いる帝国軍は敵兵の別働隊とすれ違いを起こしたのである。
別邸では第一皇女の護衛が一人残らず殺され、皇帝の元には伝令すら届かなかった。
皇帝が本邸平定後、今後の方針を決定した後、再び別邸にハルカの姉を迎えに戻ると血の海に浮かぶ第一皇女がいたという。
第一皇女 薨去により、第二皇女であったハルカ(として助けられたハル)が第一皇女となった。
助けられた直後のハルは、目覚めた直後、ハルカの名前を必死に叫び、自らがハルカではない事をひたすら主張したが、声が枯れるほど叫ぶと疲れたからか静かになったという。
周りの従者たちも襲撃のショックから奇怪な行動に出ていると納得して、まさかハルカが別人と入れ替わっているなんて考える者は誰一人いなかった。
爆発を間近で見た。そのショックは計り知れないと、その後の作法、所作の授業や日頃の立ち振る舞いがおかしい事も片付けられた。
ハルも違和感を持たれている事に気が付いて、必死になって勉学に励んだ。
その様子に教授陣は大変喜んだという。
しかし、ハルカの命を諦めた訳ではない。
ハルカがいつ帰ってきても入れ替わって戻れるように。
それまでの間、当たり障りのないように”遥香”を演じる為に。
その為の努力だった。
皇帝本邸襲撃事件から三日後。ハルが第一皇女になった日。
隣国各国から正式な宣戦布告。
皇帝はもちろん受諾。
終わる事なき戦争が始まった。
それから皇帝は本邸ではなく別邸を住まいとした。
それは別邸が内地にあるといった地理的要因だけではなく、元第一皇女たる長女が惨殺された地で延々と憎しみを忘れない為でもあった。
空箱となった本邸は第一皇女が守る城となる。
真っ先に襲撃を受けた、言わば戦争の最前線とも言える皇女宅を与えられたハルは皇帝に見捨てられたという事なのだろう。
つまり、元第二皇女である次女ハルカは皇帝に捨てられたのだ。
宣戦布告を受諾してからハルは一度も皇帝陛下に謁見していない。
名も無き孤児のままなら気がつけなかっただろう。
ハルカ様の微笑みの裏の暗黒を。
こうして私は第一皇女、一城の主人、[ハルカ]ハルとなった。
今シリーズは二作同時投稿を常としております。
しばしお待ちを。すぐにもう一作……。