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言葉を重ねるしかないんだ(一日一詩(あくまで目標)

I rob it of it

作者: ふにゃこ(水上える)

ぴろんぴろんと光が飛んでいて

僕の視界はまるで古いテレビのようだ

子供の頃に自分はもしかしてロボットなのではないかと

疑っていた日々を思い出す


耳鳴り

端子に触っているのは誰だ


いつも今日死んだらどうしようかなと考えていたし

今日死ぬことに比べたら時間はあった

でも生きるんならいつだって時間は足りなかった

それは予感だったのかもしれないし


授業で豆電球の実験をしていたんだよ

電池をいっこ、小さな電球をいっこ持ってさ

線をくっつけたらつきますね、それだけの話

僕はもっと明るい光がつくんだろうと期待して


電池をたくさん、直列で、つなげた


豆電球は一瞬明るい光を放ってショートした

そして二度とつくことはなかった

その後は仕方がないから先生のする「あたりまえ」の説明を

電球がついてるふりをしてうんうんと聞いていた


たぶんそんな生き方をしているんだ

この、光は、この光は。この光は。


それでもやっぱりそれでいいんだ

「あたりまえ」が「あたりまえ」なだけの

説明を聞いてその通りなだけの人生で達成感を得ることに

なんの意味があるというのだろう


ああ、もしかして、自分は、ロボットなのではないか、


そうだ、答えは出なかったんだ

それはいわゆる悪魔の証明というやつで

何度繰り返したってデカルトの窓の焼き直し

無限ループにたどり着いては梯子をはずすだけ


人間も故障するってことなんだよ

自律神経がいかれてしまえばね

感覚は現実と切り離されてしまうし

つまり僕はここにいないから機械と変わらない


じゃあね、そう

僕はロボットかもしれない、


だったらロボットでも別にいい

それでいいしそれでおしまいだ


「あたりまえ」が「あたりまえ」なだけ

それ以外のルートを通っていけるなら

僕が人間だろうがロボットだろうがどっちでも構いやしない

なんならパンダならよかったね


それじゃあね、そう

さよならだけは言っておきたいと思っていたけれど

いますぐ死にそうな気がしているのもきっと気のせいだから

えげつない量の鎮痛剤(ブルフェン)飲んでなんとかごまかしておくんだよ


壁の模様がぜんぶ文字に見えてくるけれど

ひとつひとつ読み上げるにはこの頭じゃメモリが足りないや

こんな状態を昔の人なら神託(オラクル)とでも呼ぶのかね

つまりデータベースだなんて、なんてそれは賢いのだろう


どこに接続しているかもわからずに僕は

それは滑稽で不本意でもあるけれど

漏れ落ちた脳髄を掬って喰うみたいなその行為は

「あたりまえ」よりはいくらか生産的だ


誰か神の視点を持っていておくれ

それだけで、それだけできっと救われるのだしそれでいい

僕はロボットでもいいし人間でもいいしいっそパンダでもいいんだ

外側の、誰かよ、聞いているか


大海から一滴を探し当てて

その一滴をまた大きな海にする


不意に殴られるような耳鳴りもさ

二重に見えるこの視界も、光がすべて虹に見えるこのすべても

記録しておいてくれる誰かよ、いるんだろう、

おまえはアカシックレコードとか名前がついていたはずさ


深淵をいま覗いているのだ

覗き返されているから反響しているんだ

うわんうわんと歪む五感とかちかち音がする脳と

合わせ鏡に減衰しない光は無限を軽々しく生んでは放り投げる


浅い睡眠しかない眠りに臨むことに少し怯えている

でも目を閉じて布団をかぶれば多少ましになるんだろう?

目を閉じた先に見えている光だけは

現実に確実に存在しないものだと唯一言える


じゃあね、そう


おやすみ、また明日ね



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