大好きだよっ!!
「起きなさい!」
「・・・」
「サワミ!」
「ヒョエ?」
重いまぶたを開くと、そこには鬼のような顔をしたママが立っていた。
「本当に起きないと・・・」
「分かった、分かった、今起きるから。」
ママの声をさえぎり、まだぬくもりのあるベッドを這い出て、中学の制服にのろのろと着替え始める。そして、部屋が散らかっているとぶつぶつ言っているママをおいて、通学カバンを持ち、逃げるように部屋を出る。そのあと、テーブルの上にある朝食を喉に流し込み、いってきま~すと声をはりあげ「待ちなさい!」と、怒鳴るママの声を尻目に家を出た。
これが、私のいつもの朝。だが、今日はちょっと違った・・・「あれ、サチは?」
私は、辺りを見回した。サチとは、いつもここで会うので一緒に登校しているのだが、なぜか今日は見当たらない。少し、待ってみたが来ないので諦めて行くことにした。
教室に着いて「おっはー!」と言うと、「滝咲、おっはー」「おう!」「ハロー」などの、返事が返ってきた。すると、一人の近くにいた男子が私に興奮した声でささやいた。
「今な、サチがソウに告白したんだよ!」
「はぁ・・・、あのおとなしいサチがみんなの前で?!」
よく見ると、教室のど真ん中に人だかりができている。その中心には・・・ サチがいた!?しかも、ソウまで・・・二人は、微笑んで言った。
「私たちは、今日から付き合うことになりました。これからも、どうぞよろしくお願いします」
「えっっ・・・、えへへ、ちょっとトイレ・・・」
そうごまかしたように言って、私はトイレに駆け込んだ。
何だか、涙が出てきそうになった。だから、
「サワミ、何やきもちやいちゃってんの!?いくら、私とソウが幼馴染だからって付き合うわけじゃないじゃん!」
と、自分の頭をペチペチ叩いた。そう、私とソウは幼馴染。幼稚園の頃からずっ~と一緒だった。でも、性格は全くちがった。今でもそうだけど、私はクラスのムードメーカー的存在であり、その反対にソウはおっとりとしたおとなしい子でいつも私がソウのお世話役だった。そんなことを思い出しているうちに本当に泣きそうになってきた。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
「ヤッバ、チャイムなってるわ。」
涙目の顔を拭いて、走って教室に向かった。
「廊下は、走るんじゃな~い!!!」
まずい!学年、いや学校で一番恐い晶島先生の声だ~ とりあえず・・・
「ご、ごめんなさ~い!」
と、叫んで教室に飛び込んだ。
ふ~、ギリセ~フ・・・と、心の中でつぶやいて静かに着席する。
そのとたん、担任の菜穂本先生が入ってきたが授業が始まっても、集中できなかった。
もう一度サチの横顔を見つめて自分と比べてみる。全然違う・・・
まず、髪型だ。サチの髪は長くて、ツヤがある、だが私の髪はショートで・・・ あっ、寝癖!!
これでは、比べものにならない・・・ 深~いため息をつく。
性格的にも、サチはおとなしいので男子が守ってあげたくなるタイプなのに比べて私は気が強くてだらしない。そんな風に、ぼ~っと考えているうちに学校が終わってしまった。
家に帰ると、姉のミレイが留守番をしていた。「ただいま~」
「おかえり~。どうしたの、そんな暗い顔しちゃって~」
やっぱり,気付かれたか~・・・ ミレイは、人の表情を瞬時に読み取る天才だ。しかも、LOVEな話が大好きときている。
「う、うん・・・ 何でもないよ・・・ 大丈夫だから。それより、学校の宿題やるね。」
急いで、自分の部屋に入る。ベッドに寝てたら、今日自分の考えていたことが何だかバカらしくなってきた。
「私とソウより、サチとソウの方がお似合いだし・・・ しかも、私が恋をするなんてありえないし~」
「ん、んん?」
私はベッドで飛び起きた。
「もう朝!?」
どうやら、あのまま眠ってしまったらしい・・・
部屋の中には、明るい朝日が差し込んでいる。ソウから、もらった目覚まし時計を見ると7時を指している。せっかくなので、このまま早めに登校することにした。
リビングでは、ママがミレイ用のお弁当を作っていた。私を見ると・・・
「サ、サワミ!ど、どうしたの!こんな、朝早くに起きて・・・」
と、腰をぬかしそうになった。まぁ、ママの気持ちも分かる・・・
何しろ、幼稚園の頃から毎日毎日叩き起こされてきたのだから。
家の前の通りに出ると、サチが私を待ちかまえていた。そして、いきなりきれいにラッピングされたプレゼント(?)を押し付け真っ赤になりながら言った。
「ね、ねえ。サワミってソ、ソウの幼馴染だったんでしょ・・・ だからさ~、これクリスマスプレゼントなんだけど・・・ ・・・わ、わたし、て、て、ててくれない?・・・」
最後の方は、何回もつっかえていて見ているのが辛いほどだった・・・
それに、今日がクリスマスだということさえ忘れていた・・・ すると、
「じゃ、そういうことで・・・ ばいばい」
「ちょ、ちょっと待ってよ~・・・」
・・・放課後
私は結局渡すことにした、サチから預かったプレゼントを手に2人でよく遊んだ公園のベンチに座ってソウを待っていた。すると、ソウが走ってきた。
「はぁっ、はぁっ、ごめん、待たせて・・・。で、話って何?」
「これ、サチから渡してって頼まれて・・・」
私がプレゼントを渡すと、ソウはしばらくずっと固い砂の地面をにらみつけていた。そして、突然私を向いて口を開いた。
「俺、昨日みんなに付き合うことになったって言ってたけどあれ、サチが告白したんだ…。で、俺は何となくOKしちゃったんだけど・・・。昨日付き合ったら、はっきりと分かった。俺は、べたべたしてるサチよりも・・・・・・・・ お前といた方が楽しいんだ!!!!もう決めてるんだ。!俺はサチと別れてお前と付き合うよ!」
そして、また地面を見つめて黙り込んだ。そして、またしばらくして口を開いた。
「でも、ひとつだけ聞きたかった。お前どうして恋のライバルの言うことなんて聞いたんだ?」
「…何となくかな。それよりどうして私がソウのことを、好きだって気付いたの?」
「告白の時、いつもは教室の中心にいるのに隅っこにいたからかな?とにかくサワミお前のこと大好きだ!」
私も負けずに叫んだ。
「わ、私だってソウのこと大好きなんだから~!」
すると、ソウは何も言わずに私のことを抱きしめた。
私たちの周りには、淡い桃色の幸せの風が吹いていた。
*THE
END*
*あとがき*
最後まで、読んでいただきありがとうございました!
まだまだ、素人ですがこれからも頑張りますので応援よろしくお願いします!!!
ハイビスカス