7話
全部貸し出されるって……
「マジで?」
「この本の妖精ケリーちゃんはおちゃめですけど、嘘は言わないのですよ!」
ぷんぷん
そんな感じの擬音が出てきそうな感じでちょっとふくれている
「あまりにも想定外だったから遂。ごめんね、ケリーちゃんを疑った感じで聞いてしまって」
うん
ここは謝罪の一手だ
本の妖精ケリーちゃんはいわば、知識の番人
機嫌を損なうと最悪、図書室の出禁になるかもしれない
「ケリーは心が広いので許してあげます」
「ひゃっふー。ケリーちゃん最高~。素敵~。いい女~」
「きゃ~。もっと褒めて褒めて~」
「ブラヴォ~。ファンタスティック~。エレガント~。ビューティフル~。ぷりちー」
「きゃ~」
とりあえず、思いつくだけの褒め言葉を言ってみた
なんかケリーちゃん嬉しそうなのできっと大丈夫だろう
後で賄賂か何かも送っておくべきかな?
「しっかし、教材無いのか……ちなみに1年梅組の生徒で誰が借りていったか分かる?」
同じ組なら主人公、ヒロインズ、ライバルズが相手でなければちょっと見せてもらおう
それで仲良くなれたり出来ないかな?
「あー、学生証を見せてもらいます?」
「はい」
「スキャン開始……完了
残念ながら、守武様には貸出者閲覧権限はありません」
「その権限付与してもらうには、もっとケリーちゃんと親密度を上げればいいのかな?」
「私と親密度を上げても権限付与されませんよ
権限付与はマスターがしますので」
ほぅ
学園長はロリコンだよーって言い振らされたくなければ権限を付与せよって脅迫してみるか?
いや、この程度で使うのは勿体無い
そもそも近づきたくないやつが借りている可能性もあるし
ってかそれ聞くくらいなら教材くれのほうが全然いいな
「しっかし、困ったなぁ。魔法がどんなものかちゃんと知りたかったんだけどなぁ」
「いいものありますよ!?」
「おぉ、ケリーちゃんさっすが~。本の妖精の鏡。いよっ」
「わ~い。えへへ~。それで、こちらですね」
ケリーちゃんの後についていく
向かった場所は1階入り口付近
おろ?
何か光っている本があるぞ?
あれは凄い本なのか?
「じゃじゃ~ん、これです」
そう言ってケリーちゃんが指し示すは光っている本
手にとって見ると光りが消える
光っていると凄そうに見えたが光が消えると普通の本にしか見えない
これがエフェクト効果か
先ずは表紙を拝見
『基礎魔法学 著者:長園 岳』
そういや俺、魔法について何も知らないや
ちゃんと基礎から学ぶのはいいかもしれない
「なんか凄く良さ気な本を紹介してくれてありがとう、ケリーちゃん」
「えへへー。実はマスターの本なのですよーー」
学園長の名前は長園 岳
俺覚えた……かも
「ちなみに学園長って他のどんな本出しているか知ってる?」
「マスターのですか?ちょっと待ってくださいね……こんな感じです」
そう言ってウィンドウを表示してくれる
『
念じろ!さすれば魔法は使える 著者:長園 岳
その時、世界が救われた 城下町メリルの攻防戦 著者:長園 岳
その時、世界が救われた 悪魔の森攻防戦 著者:長園 岳
その時、世界が救われた 魔王城進行 著者:長園 岳
その時、世界が救われた 魔王戦 著者:長園 岳
その時、世界が救われた 和平編 著者:長園 岳
少年よ!勇気を抱け 著者:長園 岳
少女よ!魔法を唱えよ 著者:長園 岳
近隣諸国の魔物図鑑 著者:長園 岳
大人よ!愛せ子供を 著者:長園 岳
妖精交流録 著者:長園 岳
ボウ×ケンの書 著者:学屋本舗
』
「未だ他にもあるんだけど、人気があるのはこんな感じかなぁ
世界が救われたシリーズは凄い人気だったよ
これで多くの人が冒険者になったといっても過言じゃないくらい」
「へー」
ってか魔法関連のまじめそうなのって基礎魔法学しかないのか?
それとも、学園長が世界を救ったときの小説が結構売れているだけで、まじめなヤツは売れていないのかねぇ
「そういえば最後のやつは著者名義が違うけど何かあったの?」
「ん~ちょっと良く分かっていないんだけど、なんかボウ×ケンの書って年齢『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』」
またホログラムで来たな学園長
忙しいんじゃなかったのかい?
「学園長仕事大丈夫なんですか?」
『忙しいわボケ!!!ってかお前何ボウ×ケンの書について調べようとしているんだよ!??』
「いや、だって魔法使いの憧れの学園長が本を出しているんですよ?そら気になりますよ?
気にならない人間のほうがどうかしてますよ!?」
名前知らなかったくせにって突っ込みは無しでお願いしますよ
『いや、だけどな、こう、人が名前を変えているって事はだな……察しろ』
「いやー、俺馬鹿なんでそこらへんの機微がわかんないんっすよ~」
いかん
にやにやが止まらないぜ
平常を保て、俺
学屋本舗
俺、覚えた
きっと学園長の面白いネタになるって覚えた
『くっ!!その顔……
とりあえず、このことはケリーに聞くな!いいな!?
わかんないっていうのならお前を図書室出禁にするぞ!?』
くそぅ
またかこの学園長
権力振りかざしまくりだなチクショウ
まぁいいや
「ちぇ~、わかりましたよ~」
『わかったならいいんだよ』
そうして学園長のホログラムがまた消えた
忙しい人だなぁ
まぁ、後で商店街の本屋で調べてさせてもらいますか
くひひひひ
「残念。なんか学園長がこの本について触れて欲しくないみたいなのでまぁ諦めるよ
どんな本か興味はあったんだけどなぁ」
「むぅ……マスター恥ずかしがり屋なのですかね?」
「かもねぇ。じゃぁこの基礎魔法学借りてもいいかな?」
「はーぃ。手続きしますねー……はいOKです~1週間以内に返却をお願いいたしますね~」
「了解~……あ、そうだ。ところで妖精さんについて聞きたいんだけど、妖精さんって人間の食べ物で好物とかあるの?
もし、出会えたら仲良くなりたいから、有るなら教えてもらいたいなー」
「甘いものが好きですよー。辛いものは苦手目ですかねー」
「普通の砂糖とかは?」
「悪くは無いですが、スイーツの方がいいですよー」
「ドーナツとかパフェとかプリンとか?」
「あぁいいですねぇ」
「ふーむ、ならいつもお菓子を忍ばせておけばいいのか」
「サイズは私ぐらいがほとんどなのでアンマリ大きいと食べづらくなったりしますかね?」
「ほぅほぅ。そっかありがとね。それじゃちょっと教室でこの本読んでくるね~」
「どういたしましてです~」
ケリーちゃんにバイバイして教室へと戻る
教室に戻っても誰も残っていなかった
時間は12時
結構経ったなぁ
皆はご飯に行ったのかそれとももう帰ったのか
とりあえず塩おにぎりをいただいてから読書開始しますか
いただきまーす
ぱりっ
むぐむぐむぐ
はっ
しまった
飲み物を作るのを忘れてた
ジュースは牛乳などは甘いからご飯と一緒にはそんなに好きじゃないんだよねー
やっぱお茶だな、お茶
荷物が心配なので鞄を持って目指すは自販機
………………
自販機さん発見
あ、雪波先生もいる
「先生、こんにちは~」
挨拶は人としての基本だ
「あ、モーリンにゃ。にゃっほー。どしたにゃ?」
「お茶を買おうと思いまして」
「に゛ゃっ!!?」
雪波先生の手に持つのはお茶
自販機のお茶は無情にも売切の文字
終わった…………
「こ、これいるかにゃ?!一口もつけていないから大丈夫だにゃ」
あぁ女神様ですか?
こんな女神に対して、語尾が「にゃ」は若干痛いとか思った過去の私の馬鹿ー
「いいんですか?」
「まぁ昼食はサンドイッチだにゃ。別にお茶じゃなくてもいいですにゃ」
「サンドイッチなら牛乳とか良くないですか?」
「ですにゃ~」
そう言って、苺ミルクを買う先生
お茶のお金を払おうとすると
「お金は別にいいにゃ。あ、代わりにご飯の間だけ、ちょっと愚痴に付き合うにゃ」
「その程度なら喜んでお付き合いいたします~」
「じゃぁこっちにゃ~」
ってな訳で職員室へゴー
先生と一緒だったからか職員室セキュリティたんは出てこなかった
ちょっと残念
ってなわけでご飯再開
いただきます
ぱりっ
むぐむぐ
ごきゅごきゅ
「それで、先生愚痴って何かあったんですか?」
先生は卵サンドをいただいている様子
「にゃ~。にゃにもにゃいのが悲しいにゃ~と」
「何も無いのがダメなんですか?平和でいいと思うんですが」
「あぁ問題児がいて欲しいとかじゃにゃいんだよ?ただ、昨日今日で質問に来たのモーリンだけなんだにゃ
皆向上心がにゃいのかにゃと思ってにゃ」
「向上心ならあるんじゃないんですかね?」
「どうしてそう思うんだにゃ?」
「今日図書室へ行ってきたんですよ
んで、本の妖精のケリーちゃんに会ったんですけど、聞くと教材全て貸し出されたって
図書室には他に人がいなかったので、多分皆昨日のうちに借りて行ったんじゃないんですかね?」
「それなら安心かにゃ~?
ちなみにモーリンは自分のクラスの人間のこと、どう思ったかにゃ?」
「オフレコですか」
「オフレコですにゃ」
「ここ、魔法とかで盗聴されたりは」
「されてないですにゃ」
「金野さんが若干柔らかくならないかなってところですかね?
今日朝来た時、ほとんどの人が金野さんの不機嫌オーラに中てられて轟沈しちゃっていたんですよねー
対抗できそうなのは赤城さん、青海さん、緑里さん、黒姫さん辺りですかね?女子ではですが
ただ、彼女らはその辺り、興味が無さ気で放置していますから、本人が柔らかくなればなぁと」
「よく見ているにゃー」
「まぁ面倒ごとには巻き込まれたくないので……
で、丸く納まるには多分白銀君がキーマンになるのかなと
彼が教室に入ってきたら猫かぶりをはじめましたし
正直きもかったです」
「おんにゃの子にきもいとか辛辣ですにゃー」
「だって、不機嫌なのが一瞬で変わるんですよ?
女性不信になりますよ?あれ見たら……」
「まぁ金野さんも貴族のしきたりとかで色々と面倒なんですにゃ」
「へー、彼女貴族なんですか?」
「6大貴族で有名ですにゃ
火の赤城
水の青海
風の緑里
土の茶包
光の金野
闇の黒姫
貴族名鑑っていう本があるから調べてみると結構面白いかもにゃ
それぞれに一子相伝の独自魔法があるらしいにゃ
ただ、貴族の地位を守る為に色々と必死にゃ
金野家はその為に魔力の強い人間を家に迎えているのにゃ」
ほー
茶包先輩って貴族だったんだ
先輩のところのバイトに行く前にまた借りるか
その時にでもケリーちゃんに何か持って行ってあげよう
「って、先生のところに6人中5人いるじゃないですか!?」
「そうにゃ、あのクソイケメン学園長が「君なら大丈夫だよ。嫌なら減給しちゃうよ!?」とかほざきやがったにゃ」
学園長
先生にも嫌われていらっしゃるのね
まぁ権力振りかざしているから嫌われるよなー
まぁチラッとフォローはしてみるか?
「でも魔法使いとしては凄く優秀な方なんですよね?
学園長のこの本をケリーちゃんに薦められましたよ」
がさごそ
基礎魔法学の本を取り出す
「あー懐かしいにゃー
確かにこの本は画期的だったにゃー
教材が無かったらこの本の方がいいかもにゃー
そういえば、モーリン午後からどうするつもりだにゃ?
ご飯食べているって事は何かするにゃ?」
「本読んで実践をしてみようかなと……」
「体術でよかったら教えようかにゃ?」
「いいんですか?」
「まぁ誰もこにゃいだろうし大丈夫だにゃ」
「ありがとうございます」
「じゃぁさっさとご飯を食べて訓練室へ行きますかにゃ」
………………
ってなわけでご飯を食べ終わり訓練室へやってきました
「雪波先生の体術講座にゃ~」
「わ~」
ぱちぱちぱち
「モーリン君、君は魔法の使い方はわかっているかにゃ?」
「いいえ、わかりません」
「わかりましたにゃー。では先ず魔法の使い方について説明しますにゃー
といっても、簡単ですにゃ。魔法は魔力をこめて、こんな魔法が使いたいってイメージだけにゃ
そうすると魔力がイメージした力になるにゃー」
へー
「ただし、持続的な効果を願うものはかなり燃費が悪いにゃ
オススメできにゃいにゃん」
「魔力で自分を強化し続けるって事はよくないんですか?」
「そうにゃ、ガンガン魔力が垂れ流されるのですぐ魔力切れににゃるにゃ」
「ってことは一瞬だけ強化みたいなことの方がいいってことですか」
「ですにゃー。その為センスとタイミング、そして具体的なイマジネーションがかなり重要になってくるにゃ」
ほー
「たとえば、高く飛びたい場合、魔法発動のプロセスは、どれだけ飛びたいかをイメージするにゃ。とりあえず10mにゃ
次に足元に魔力を集め、ジャンプ時にその魔力をジャンプ力に変換するにゃ」
おー
先生が高くまで飛んでる
そして綺麗に着地
「降りる時は足に衝撃がくるからそれように防御魔法を展開したにゃ
ちなみにこれを失敗したら普通にとても痛いにゃ
今回の場合だと
イメージで高く飛ぶ、衝撃から防御するという魔力の方向性を決め
センスで高く飛ぶための魔力及び衝撃を回避するための魔力量を決め、
タイミングで出発及び着地時のみに限定することで無駄な魔力消費を抑える
こんな感じにゃ
ささ、モーリンもやってみるにゃ」
よーし
なら俺もジャンプでやってみるか
魔力変換効率とかあるかな?
あるよね?
なら、高く飛ぶためには余計に多量の魔力が多分必要だと思う
凄く高く飛ぶイメージをして
膝を曲げたときに魔力を多量に足元に流し、ジャンプ時に一気にジャンプ力変換
トゥ
デュワッ
「ちょ……にゃ!?」
ふはははっはははは
飛んでるー
俺メッチャ飛んでる
ひゃっほー
はやーい
あーいい感じだ
ドゴッ
とても痛いであります
まさか天井にぶつかったのでありましょうか?
デュワッ状態で天井に突っ込むとかハズカシー
「にゃははっははは、にゃひひひいっひ、にゃほほほほほ」
女神様、お願いです
笑ってないで助けてください
右手人差し指が腱鞘炎で痛いorz