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モブキャラライフ  作者: リエッタ
本編
66/77

 57.75話 イケメン税

 7月某日

 今日は青海家ボディガードたちの賞与の日

 

 

 

 

 ---------------黒尽くめ(ルース(仮))の場合------------------------

 

 モブ回収を頼まれて、茶包薄のライトニングシスターキックに沈んだ黒尽くめ、ルース(仮)は神……いや、青海家に祈る

 

 「頼みますよ?

 確かにあの時は茶包家の令嬢に負けた……がこの半年での失態はそれだけ

 ……その後も色々と頑張ったから……お願いしますよ?」

 

 ちらっ、ちらっと賞与明細書を見るルース(仮)

 支給額をちらっと見て、前回の支給額と同等で安堵する

 次に総支給額を見ると…………なんと、支給額より減っているではないか

 一体何がと、他の項目を見ていくと……1つ前回になかった項目があるではないか

 その項目は"イ ケ メ ン 税"

 

 このイケメン税の項目で、支給額の一割ほどカットされていた

 ルース(仮)は思慮する

 これはきっと、子煩悩なあの青海家の親があまりにも自分がイケメンすぎて嫉妬したに違いない

 娘との会話がきっと自分のことばかりなのだろう

 査定とは関係なく、こんなイケメン税として仕返しに来たのだろう……と

 

 「自分はイケメンか……ふふふ、まぁそれなら仕方ないか」

 

 ルース(仮)は笑顔で家路につく

 

 

 

 

 ---------------黒尽くめ(ナル(仮))の場合------------------------

 

 ボディガードの1人のナル(仮)は前回と同様の額に、当然、流石僕、と自分を褒めていた

 しかし、イケメン税の項目を見て一転、凍りつく

 イケメン税は0円

 ナル(仮)は愕然とする

 

 「これは、僕が、イケメンではないと?

 そんな、馬鹿な、ハハハハハハ、見間違え、見間違えたんだ

 ほーら、イケメン税なんて項目は……ある……0円

 ……なんで?イケメン税なら寧ろ全額マイナスでもいいんだよ?

 夢なら……夢なら覚めてくれぇぇぇぇええ」

 

 壁に頭突きしよう…………とするが顔が命を信条に持つため、頭突きを止める

 そして、失った自信を復活するため、街に繰り出す

 

 「へい、彼女たち、よかったら僕とお茶でもどうですか?」

 

 ナンパに成功して、自身を取り戻すナル(仮)

 雇い主の美的感覚がおかしい、そう結論付けて、女の子と楽しんだナル(仮)

 

 

 

 

 ---------------黒尽くめ(マッチ(仮))の場合------------------------

 

 ボディガードの1人のマッチ(仮)は前回より増額されて喜んでいたのも束の間、イケメン税の項目を見て時間が止まる

 マッチ(仮)のイケメン税は支給額の一割ほどのプラス

 マッチ(仮)はイケメン税がプラスを意味を考え、凹む

 

 「いや、確かに、筋肉質だし、イケメンって訳でも無いから、仕方が無いかもしれないんだけれど……

 遠まわしにブサイクって言っているよね?

 ……何がしたいんだろう?

 ……ナル(仮)はガッツリ下げられたのかな?」

 

 イケメンの同僚を不憫に思いつつ、悲しい気分を晴らすため、ジムに向かう

 

 

 

 

 

 賞与で三者三様の3人が、仕事の休憩時間で一同に会した

 ルース(仮)は笑顔である

 ナル(仮)は死んだ魚のような目をしていた

 マッチ(仮)は自慢の筋肉が萎んでいた

 ルース(仮)は同僚の2人の異常事態に声をかける

 

 「ナル(仮)にマッチ(仮)と随分と調子が悪そうだが大丈夫か?」

 

 「あ、うん、まぁなんとか

 ところでルース(仮)は賞与明細を見た?」

 

 「見たよ」

 

 「そこで、今回イケメン税って項目が増えていたじゃん?」

 

 「あぁそうだね」

 

 「ナル(仮)は、支給額全額マイナスか?

 それでそんな死んだ魚のような目をしているのか?」

 

 「……逆

 0円!!!僕なんかイケメンじゃないって雇い主から言われているからさ、モチベとかテンションとか全く上がらないんだ

 その後、女の子をナンパしまくってなんとか保てたけれどさ

 なーんか、こう……美的感覚がずれている、青海家に使えていいのかなって

 少し転職でもしてみようかなって……」

 

 「ナル(仮)が0円か?

 随分とおかしいなそれ

 んで、マッチ(仮)は?」

 

 「あぁ、自分もイケメン税で考えていてな

 まぁ、その項目プラスだったんだよ(遠い目)」

 

 「「マッチ(仮)」」

 

 ほろりと涙を流すルース(仮)とナル(仮)

 2人とも仲間思いのいいヤツらである

 

 「やばいな

 僕なら、そんな遠まわしにブサイクとか言われたら間違いなく仕事辞めるわ」

 

 「自分自身でもイケメンと思っているわけじゃない

 ……けど、こう人に言われるとなんていうか、結構くるものがあってだな

 ……ジムで発散したんだけれど……仕事になるとやっぱり気になって

 こう、テンションが上がらないんだわ

 逆にルース(仮)はなんでそんなに笑顔なんだ?」

 

 「ん~いや、俺の場合、イケメン税がマイナスだったんだよ」

 

 その言葉にナル(仮)が噛み付く

 

 「はぁ?お前がマイナス?

 僕よりお前の方がイケメン?」

 

 「ってか俺はただ単にお嬢様のお気に入りだから、その嫉妬でマイナスにしたのかなと思ったんだけれど……」

 

 「自分が知る限り、そんな公私混同するような人じゃないぞ?

 ……それに、遠まわしにイケメンやブサイクを言うような人じゃないし

 ……だから余計にわからない」

 

 「当主に伺いに行くか?

 何かこのままだと気になって仕事が手につかなくなりそうだし……」

 

 「そうだなぁ、自分もあまり手につかなかったし……」

 

 そして、当主に確認しに行く3人

 さて、当主青海 空(あおみ そら)は、3人が来て、溜息を漏らす

 

 「なんだ、君たちもか?」

 

 「……も?」

 

 「先ほどまでに2組来ていてね

 イケメン税についてのことでしょ?」

 

 「はい、あれがどういうことなのかの真意を伺いたくてですね……」

 

 「真意に関しては、特別ボーナスの意味だったんだけれど……

 まぁわかりにくかったな……

 すまないな、無駄に混乱させてしまって」

 

 「しかし、どうしてあのような名前に……」

 

 「娘が友人から教えてもらったといって、一般ではイケメン税なるものがあると……

 なんでも、イケメンゆえに無駄に何でも出来ると期待を掛けられて、うまくいかなかったら、へー出来ないんだーとばかり、期待値が下がる

 総称して、イケメン税と呼ばれると……

 なので、特別ボーナスにもそういう名称を使用してみたのだが……」

 

 「つまり、イケメン税がプラスということは……」

 

 「期待以上の仕事をしてくれてありがとうという特別ボーナスだ」

 

 マッチ(仮)は笑顔になる

 

 「イケメン税が0ということは……」

 

 「期待に応えてくれてありがとう」

 

 ナル(仮)はほっとした表情になる

 

 「イケメン税がマイナスということは……」

 

 「頑張りましょう」

 

 ルース(仮)は2人とは対照的に凹む

 

 「ちなみに、このイケメン税なんだけれど、廃止した方がいいかな?」

 

 「「「是非に……」」」

 

 こうして3人のイケメン税を巡り騒動は終わりを告げた

 ちなみにイケメン税……来る人全てに聞いてみたところ、満場一致で廃止を要望され、次回からはなくなった

 

 

 

 

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