57.5話 とあるズッ友さんの話
「ふふふ」
部屋で一人怪しく笑う青海家令嬢、青海菖蒲
彼女の前には一冊の雑誌
その雑誌の名は『月刊 ふぇってぃずーむ』
そう、モブから貰ったあの一冊である
彼女は何故これを貰ったのかというと……
「緑を信じて待てといわれたが……
最近の話題がイケメンばかり
嫌」
そこで考えたのが彼女自身が綺麗になること
綺麗になり、かつ、かっこよくなることで、あのホスト勢から緑里を取り返す
しかし、彼女は綺麗がよくわからなかった
最近の綺麗の細分化、そして、それの大半が彼女には理解ができないものだった
女性の綺麗が理解できないので、そちらは諦めた
なら、男性の綺麗ならどうだろうか?
しかし、彼女自身がそういう本を買うことには抵抗がある
また、使用人やプライベートポリスに買いに行かせることもできない
お願いした瞬間に、家人にばれてしまい、面倒なことになる
そんなところにカモがネギを背負って来た
貰うしかない
腹の中に入れてきたため、他の人には私が『月刊 ふぇってぃずーむ』を見ることはばれていない
たとえ、家人に見ているのがばれたとしてもモブを売ればOK
そのような計算で『月刊 ふぇってぃずーむ』を貰った青海菖蒲
「いざ」
ページを捲ると先ず出てきたのはうなじ
「なになに?
うなじはエロイ?
えっと、うなじが見えると首がとても綺麗に見えてエロイ?ふーん?
……普段と違った髪形にすることで彼も話題にしやすい?
……うなじを見せていない髪型の人は是非やってみてはいかが?
私、ロングだし……」
すぐさま鏡の前に移動する青海
そして『月刊 ふぇってぃずーむ』に載ってある髪型を真似る
「ぽにーはダメ
赤と被る」
「お団子……似合わない
「髪をショート……黒と被る
……後、私が失恋したと思われる
……失恋相手がモブ」
今まで、友達が緑里ぐらいしかいなかったため、遊びに来た友人かつ男性となると必然的に相手がモブになる
そして、青海は黒尽くめに引っ張り出されて、父と母の前に詰め寄られるモブを想像してクスリと笑う
「それはそれで楽しそう
……でも癪」
好きでもないモブに勝手に振られるのは嫌だそうだ
試行錯誤して、行き着いたのがツインテールになった
金野はドリルだし、まぁ住み分けできているよねという解釈の元、ツインテールに落ち着く
「次は……鎖骨フェチ?
写真、ばらばら
というか、鎖骨変えようが無い
服装変えるか
次は……二の腕?
ぷにぷにそうなのがいい?
大丈夫そう
これも服装で……
次は……無い???終わり???
……月刊ってことはバックナンバー?」
すぐさま電話をかける
「はいはーいモブさんですよー」
電話先は、先日ズッ友になったモブ
「……テンション低い」
「まぁ、うん
それで、次回の実験日が決まったの?」
「違う
貰った『月刊 ふぇってぃずーむ』のバックナンバー無い?」
「無い」
「そこを何とか……」
「なしてそんなの欲しいの?」
「緑を誘惑」
「???よくわからないんだけれど……自分で買……いやまぁいいんだけれど……
ただ、バックナンバー手に入れられるかどうかはわからんからな?
後、時間もかかると思うぞ?」
「……わかった……お願い
ありがとう」
モブとの電話を切ると、家人にばれないように雑誌を隠す
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さて、一方バックナンバーが欲しいといわれたモブ
とりあえず、買った商店街の本屋さんへ直行
「……ってことで『ふぇってぃずーむ』のバックナンバーって無い?」
「無い!!」
モブに無慈悲の一撃が放たれた
「ちなみに他探しに行っても……「無いだろうねぇ」……ですよねー」
『ふぇってぃずーむ』を見ていると、見覚えのある名前を見る
見覚えのある名前に直ぐさま電話をかける
「兄貴ー、風邪治ったんですか?」
電話先はNNWの衣川君
「んまぁ、なんとかおかげさまで?
それよりちょっと聞きたいことがあるんだけれど、『月刊 ふぇってぃずーむ』って……」
「兄貴も見たいんですか?
言ってくれれば、上げましたのに」
「やっぱり、君達が、作った?
……2次元はどうした?」
「ですよー、いいフェチ具合でしょ?
我々は2次元傾倒ですが、3次もいけないわけじゃないんですよ?
世の中、まだ2次元はそんなにメジャーなジャンルじゃないので、どうしても売り上げ的なものを考えると3次元のほうがいいので……
それで売り上げで2次元を買い支えるという流れです
素敵な感じでしょ?
あ、ちなみにフェチ画像はネットで集めた我々のフェチの結晶ですよー
ちゃんと載せている画像の許可は貰っていますし、事前に掲載料を渡していますよ」
「おぉぉー、なんて優良
勝手に人の掲載して、寧ろ感謝しろという意味不明な人も結構いるのに」
「……恥ずかしくないんですかね?その人」
「恥ずかしかったらそんなこと出来ないでしょ?」
「それもそうですね
それで、『月刊 ふぇってぃずーむ』がどうしたんですか?」
「今って3号まで出ているじゃん?
バックナンバーが欲しいという人がいるんだけれど、ある?」
「有りますけれど、兄貴、データ持っていますよ?」
「記憶にございません」
「風邪のお見舞いで送ったアレです、アレ」
「あー、胸と尻画像?」
「ですですよー」
「全て消えた」
「………………Oh
また送りましょうか?」
「ん~、とりあえず、相手方に聞いてみるわ
……多分いらないって言われると思うし」
「わかりましたー
欲しい場合はまた言ってくださいね~」
「OK~、ありがとうねー」
衣川君との電話を終わった後、青海に電話をする
「……ってなわけで、バックナンバーの内容は胸と尻らしいんだけれどいるか?」
「……いらない、終わった
緑誘惑できない」
「よくわからないけれど、胸や尻で委員長、誘惑できるの?
それなら寧ろ、胸は無い方が、男っぽくできない?
だから青海は委員長を誘惑するのに最適じゃない?」
「……そう?」
「世の中には女性が男装して、とてもかっこよく振舞って、数多の女性を虜にする人たちもいるぞ?
女性ゆえに、女性が好きそうなポイントを抑えてれるというアドバンテージがあるから」
「そんな人いるの?」
「いるいる
俺も少し噂を聞いた程度だけれど、ちゃんと調べればなんか色々出るんじゃないかな?」
「……」
「ただまぁ、委員長凄いいい人そうだから、最近さびしいなぁって言えば、それだけで構ってくれるんじゃないのか?」
「そう……かな?」
「俺より委員長のことを知っている青海が疑問に思うってことは委員長、薄情なのか?」
「そんなことない!」
「なら髪型とか服装とか変えて、「どうしたの?」って聞かれたら、寂しいのでいいんじゃない?」
「そんなのでいいのかな?」
「ダメだったら別にまた考えればいいじゃん
いつも気を使っている委員長なら多分、青海の変化にも気づいてくれるよ」
「そっか
ありがとう」
「まぁ別に何かしたわけじゃないんだけれど、どういたしまして?」
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…………
……
その次の日、モブは早めに学園に来て、仮眠を取る振りをする
青海と緑里の友情の行方を見守るためである
暫くすると緑里が来て、さらに暫くすると青海が来た
モブの耳に緑里が青海に話しかける声が聞こえる
「青海、おはよ……
って、青海?その髪型どうしたの?」
「おはよー
最近……」
うまくいくことを確信したモブは意識を手放す




