52話
さて、あれから2日が経ちまして、実は今日、あの隣国の元悪役令嬢が職場に乗り込んできます
……………………俺、すっごく不安です
過去に例を見ないくらい不安になっております
とりあえず、現状暇な俺が案内役として駅まで迎えに行っているのですが……果てしない不安を感じています
あ……多分あれだよね?
全力で着飾っている、赤成分多めの紫のドレス?だよね?
憧れの人に会う為に全力できましたね?わかります
しかし荷物が一杯あるんですけど?
どうも~元令嬢様
「今も令嬢ですわよ?」
……まぁ、それでその荷物は?
かなり大きなトランクなんですけど……
「一週間ほど滞在しようと思っていますので……」
……長くない?ってか国から離れて大丈夫?
ってか自然の流れで俺に荷物を渡すのね
まぁいいけど
「まぁそこは一応視察って名目だからね?
こっちでお店でも出してみようかなと思っているの
むこうは私がいなくてももう大丈夫そうだし
イベント的にも、お店的にも」
……イベントも大丈夫だったの?
「えぇまぁ、完全にルートから外れたっぽい
なんか、ヒロインと攻略対象者で言い争っていたからねぇ
私そっちのけ
だからもういいかなって」
ふーん
ちなみにお店って何する?
「お団子屋さん
出来たら来てね」
あのアイスクリーム屋は来ないのか
残念
まぁまた遊びに行ったときにでも食べに行けばいいか
ちなみに目玉となるお団子ある?
「7色団子
白黒赤青緑金茶の7色団子」
ほー
「ちなみに
白……ノーマル
黒……黒ゴマ
赤……唐辛子
緑……緑黄色野菜
金……金粉
茶……みたらし
青……秘密♪」
……青?
ぇ?青?あるの?
秘密って何?やばいもの???
「それは食べてからのお楽しみ~♪
まぁ開店を楽しみにしていてよ」
やばいものじゃないんだよね?そうだよね?
「やばそうなものは売りませんし売れません
まぁ健康にはとくには問題ないし大丈夫だよ♪
あ……ここ、ここに滞在しているから、ちょっと荷物預けてくる
あ、その荷物も一緒にお願い」
おーぅぃ、ここは、まさか、あの、有名な、超高いホテール、ではあーりませんかー
あ、あの恐ろしいブラックカードを出している
支配人さん笑顔
元悪役令嬢も笑顔
黒いカードの力、オソロシス
あ、ちなみにウチこと『有閑長者クラブ』では黒いカードは使えないよ?
「そのような心配はご無用」
そう言って取り出すは財布
中身がごつい
札束が一杯
そして、どこからか取り出したのかわからないが、彼女の両手にも札束が……
ガチだな?
「そりゃそうでしょ、会いたかった人と会えるのですから、準備は万全にしないと」
まーそりゃ確かに
って、タクシー呼ぶの?
タクシーで行くのなら俺いらなかったんじゃない?
なして迎えに行かなきゃならなかったのかい?
「そりゃ流石にそういうお店に入るのは人と一緒じゃないと……
ちょっと怖いじゃない
まぁ乗って乗って、あ、お金は心配要らないよ?
この黒いカードが全て何とかするから」
黒いカードさんさっすがー、たっのっもしー
ぇ?お金が浮くなら掌なんてくるっくるですよ?
でも自分では持ちたくない
持っていると胃が痛くなりそうですもん
タクシーに揺られること5分、『有閑長者クラブ』に到着
ってことで扉を開けると天国が待っているわけですが、心の準備はOK?
「ちょ、っちょっとまってね
深呼吸をひっひっふー」
それはラマーズ呼吸法だ
落ち着くんだ
「あの王子と決別したときより緊張するわね……
まぁあれは、規定事項だったからで……と、よしOK」
オープンザドア
「……いらっしゃいませ」
ケイ先輩が先制の挨拶をした
元悪役令嬢、紫乃 陽炎は大ダメージを負って、膝を折る
「ぐはっ」
こうかはばつぐんだ
あまりのダメージっぷりに吐血をしてらっしゃる
ってか挨拶だけでこれとか、本当に大丈夫?
「この吐血は私の長年の想いの証
大したことはないわ」
まぁ、あんまり頑張りすぎるなよ?
流石にバイト先で死人が出たらヤバイし
とりあえず、今日1日はケイ先輩と好きに出来るよ?
「……今日はよろしく」
ケイ先輩の笑顔が光る
おーぅぃ、返事が無い
どうやら魂が抜けかかっているようだ
おーぅぃ、そろそろ帰って来~~い
「はっ、まさか悪役令嬢の運命は変わらないと言うの?」
正気に戻っていないな
ってか、声だけで昇天って……
難儀ですなぁ
「私もこのボイスにこれだけの破壊力があったとは知らなかったわ
長年会えていなかったので、破壊力が上がったのね
……ってあれは何?」
紫乃の視線の先には…………委員長?
一応、この舞台のヒロインの1人だけど……
って委員長、ツムギ先輩とメイ先輩を侍らしている??
右手にメイ先輩、左手にツムギ先輩と両手に花……じゃないな、紅一点状態
それが何かまずかったりする?
「左側が『ボイコレ乙』の千堂 紬
右側が同じく『ボイコレ乙』の鳴海 鳴
彼らを選出するのは正しい
だけど、そうじゃない、そうじゃないんだ
確かに、作品が違う2人を絡ますのは邪道かもしれない
けれど、鳴との絡みはやはり『乙道』の藤島 伊織じゃない?
伊織×鳴はいいものだと思うの
逆に紬の方は薫×紬じゃない?」
あーあーキコエナイー
俺には何もキコエナイー
なんだか作品名とか聞こえたような気がするんだけれど、キコエナイー
ってか、嵌り始めた初日で先輩の特性も分からない人にそれは酷じゃない?
「ふむ、そうだったのね
あまりにも堂々と2人を侍らせているから、そのように錯覚をしてしまったわけなのね
なら、ねぇちょっとあの人と10分ほど話をさせてもらってもいいかしら……」
どうなんでしょ?先輩?
「……本人達がよければ……」
お?その言葉から、委員長の下へ突撃だ
「ちょっと、そこの貴女、少しお話よろしいでしょうか?」
なんで悪役令嬢モード?
なんだか、こう、逆らえないような雰囲気が……
そういえば初めて紫乃さんの悪役令嬢っぽいところを見た気がする
「あ、はい」
委員長でもあの迫力には勝てなかったのね
プライベートルームに入っていく2人
……先輩方も皆、不安そうですな
俺も不安です
あ、出てきた
顔を赤らめている委員長、超満足そうな顔の紫乃さん
……何があったし!!!?
えぇ?まさか紫乃さん、そっちの気が???
「違うし」
では、この状況は一体なんなんでしょう?
「ちょっと、掛け算についてのお話」
………………掛け……算?
あ…………そういうことですか?
布教…………いや、腐教ですね?
「………………」
…………まぁ俺がその餌食になることは無いからいいのか?
学園だとしても恐らく白銀になるし、その相手は俺になることは先ず無いだろうし
委員長が戻って、紬先輩とメイ先輩を見ているけれど、見る目が変わっているよ??
「ふふふ
彼女はいいお酒が飲めそうね」
左様ですか
とりあえず、これ以上暴れないで、おとなしくケイ先輩と密会しててください
「そうね、私も本来の目的を果たさないと……
ってことで、よろしくお願いします、恵さん」
「…………あぁ」
そうして、漸くケイ先輩と紫乃さんがプライベートルームに入る
しかし、心配だ
主に先輩が…………
あの暴走元悪役令嬢…………大丈夫だよね?
自分が紹介する相手がこんなんだと凄く不安になる
なんだろう?
まぁいいや
とりあえず、自分にお客はいないから裏方裏方~
「WRYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!」
突如プライベートルームから聞こえた声
ってかプライベートルームって防音じゃなかったっけ?
……空気の流れがある以上、完璧は防音は不可能?
しかし、中で一体何が起きているんでしょうか?
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
……ほんとに何やっているの紫乃さん
出禁になること怖くないの?
……先輩がほんとに心配です
一体どんな無茶なことをやらされているのでしょうか?
「ぶるぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
絶対、紫乃さん、令嬢じゃない
ってかもう令嬢とかそんな次元じゃない
多分、人間止めている……そんな気がする
先輩、強く生きてください
「あ~~~HA~~~……」
あれ?途中で叫び声が途切れたよ?
一体何が?
あ、先輩が出てきた
あり?お姫様抱っこでぐったりしている紫乃さん
2人とも真っ赤になっている
……はっ
ま、まさか…………これって第一発見者ってやつですか?
先輩遂にやってしまったんですか?あまりの恐怖に??
いや、わかります。わかりますよ?恐怖でしたもんねぇ
防音のプライベートルームから聞こえる奇声
怖かったですよね?
裁判になったら証言しますから安心してください
「……いや、これは鼻血
出血多量で気絶しているだけ……」
なーんだ……とりあえず救急車ですね
119,119っと
呼んだら後はお片付け~
うぉぅ、プライベートルームに入ったら真っ赤です
血、出すぎだ
ちなみにお支払いは大丈夫なの?
わぉ、胸に札束はさむとか大胆だなぁ
奇跡的に血に塗れて無いし
あ、ケイ先輩、そこからお金をすっと取り出して、必要分を抜き去ったら戻した
紫乃さんは満足そうである
まぁあれですね?
お金は足りていたが血が足りなかったと……
「I'll be Back!!!!!」
救急車から運ばれる前に気づいた紫乃さんが残した言葉
とりあえずいいから、休め
余談であるが、2日後も紫乃さんはやってきた
今度はお金と…………輸血パックを持って
…………吸血鬼か!
まぁそのおかげで最後まで倒れなかったんだけれどね
その2日後は滞在期間で来れる最後の日だと言うことで、貸し切っていた
全員侍らせて超楽しいそうでしたよ?
血の量も半端なかったけれどね
さらに余談だが、この日以降、委員長の白銀と副委員長の森谷の見る目が何かが変わっていた
……どうやら彼女は引き返せないところまで来たらしい
他のヒロインはそういう目をしていないところから未だ、腐教していないのが救いかもしれないけれど……
まぁあれだ
俺知らない




