44話
約2ヶ月ぶり……おそくなりました
とんとんとん、とんとんとん
はい、ただいまお姉ちゃん先輩のお家で、絶賛お料理中です
さっきの「とんとんとん」は戸を叩く音じゃないですよ?
材料を切っている音ですよ?……お姉ちゃん先輩が…………
お姉ちゃん先輩はメシマズで料理をしないんじゃなかったのかって?
ところがどすコイ
どうも姉力を上げるために、料理を始めたそうな……
流石だよ
『17条の姉法』第17条:姉たるもの弟妹のために、美味しい料理を作れるようになるべし
うん、17条だから最近追加された項目
とりあえず、料理長監督の下、料理の修業中だそうです
チラッと横目で様子を見たけれど、危なげなく野菜を切っているのでポテトサラダを安心してお任せ状態です
あぁ、そうそう
材料買うときに商店街の皆さんに聞いてみたんですよ!?
食のオーラが見えますか?ってね
そしたら、返ってきた答えが全員「余裕」「無論」でした
あの商店街の皆さん、マジぱねぇ
後、どうやったら食のオーラが見えるの?修行が必要?ってのも聞いてみました
答えが、「オーラのある食べ物を食べろ!まぁあれだ、何か買っていかね!?」でした
全く持って商売上手な方たちです
ってことで、お昼時
茶包お姉ちゃん先輩の家で御飯です
献立は、白米、カレースープ、白身魚のフリッター、お姉ちゃん先輩製作のポテトサラダ
おぉ、うん、ちゃんと出来てるよポテトサラダ
赤くないよ?
うん、姉を心配するのは弟の特権よとか思って、ちらちら見てたけど……アドバイスすることもなく
見た目はちゃんとしている……
変なものを入れていた形跡も無かったはず
……つまり、これは普通のポテトサラダのはず……
目の前では夕パパ所長と楓ママ当主による高速ジャンケンが行われている
娘が作ったものをどちらが先に食べるかってことで……相子がもう10回以上続いているよ?
なんて気が合う2人ですね……あ、和解した
どうやら2人で食べさせあうことで決着がついたらしい
仲睦まじく「あ~ん」してますよ?
ホント仲いいねぇ
お2人もいただいた事だし私もいただきます……あ、普通にうまい……
隣に座っているお姉ちゃん先輩の顔を見る……憂いを帯びた目だ!?
やはり辛党のお姉ちゃん先輩的には、普通のポテトサラダを作ってしまってストレスが?
ぇ?まさか?……マジで?
カレースープを一口飲んでからの……溜息????
あれ?ふ、普通だよね?……お姉ちゃん先輩的に香辛料が足りなかったのかな……
ごめんよぅ、気の利かない弟後輩で
ってことでお姉ちゃん先輩にこれを進呈します
胡椒、白胡椒、黒胡椒、一味、七味、山椒、ハバネロ等々
これでお好みに味付けしてね?デスソースは持っていないので勘弁してね?
「ん?大丈夫だよ?」
ぇ?それじゃ先ほどの溜息は?
辛味が足りなかったためじゃないの?
気の利かない弟後輩にがっかりとかじゃないの?
「ん~ん、ちょっと憂鬱になる出来事が明日あって……
それでちょっと調子が出なくて……ポテトサラダも普通になっちゃった
普段ならもうちょっと赤いんだけどねぇ」
わぉ、気分で香辛料の入れる量が変わるのか……料理長、監督お疲れ様です
しかし、姉力が高いお姉ちゃん先輩でも憂鬱になることがあるのね?
ちなみに、それは聞いても問題ない?
聞いてもいいんなら聞くよ?
言うとストレスが発散されることもあるし……
「それじゃ、お言葉に甘えて……
明日、私ティーパーティに誘われているの
ただまぁ、アンマリ乗り気じゃないなぁと……」
ティーパーティ……
あれですかい?
皆が紅茶を持ってきて、飲み比べて
『誰ざます?こんな安っぽい紅茶を持ってきたのは……』
って糾弾するあのティーパーティ?
「弟後輩君のイメージする貴族ってそんなの?
そんなわかりやすい糾弾しないよ?
こう、もっとドロドロしているからねぇ」
お茶会ってそんなイメージしかないのです
でも……ぇ、ドロドロってやだ、怖い~
「まぁティーパーティはあれだよ?
こう、メイドさんに紅茶入れてもらってお茶菓子食べながらだべる
まぁよくあるパーティだよ」
嫌そうな理由が見当たらないよ?
主催者が嫌なヤツとか?
実は罰ゲームで1人だけ紅茶が超甘いとか?
「んっとね、だべるのがメンドイの」
……お姉ちゃん先輩、実はコミュ障?
「じゃないよぅ
今もコミュ取りまくりじゃん?
……えっとね、これ自慢じゃないよ?
自慢じゃないんだけれど……お姉ちゃん先輩、今モテまくりなのです」
まぁお姉ちゃん先輩は、可愛いし、お金もあるし、地位もあるし……
後、姉属性も十分あると思うから不思議なことではないとは思うんだけれど……今?
「おぉぅ……まさかそんなに褒められるとは……
ありがとう
そして、いいところに気づきました
はい、今なのですよ……前は壁の草でしたよ?」
壁の草って……それを言うならは……あぁ名前の薄に掛けたのね?
しかし、前は全然モテなかったの?
……貴族って頭がおかしいの?それとも目が悪いのかな?
「お姉ちゃんの自虐ギャグが伝わるなんて……嬉しい
……ちなみに、モテはじめたのは今月に入ってから
モンスターさん達の友好関係を築き、取引を始めた時と一致するんだよねぇ」
……なんというあからさま
ってことはお姉ちゃん先輩がティーパーティが嫌なのって……
「うん、まぁ軽く人間……貴族不信って所かな?
ダベるだけなら全然楽しいんだよ?
でも最近ティーパーティに行ったらそんな世間話は何にもないんだー
やれ、お家自慢
やれ、製品説明
やれ、自分自慢……そんなのばっかりだよ
だから、まぁ、溜息が……ごめんね、御飯時なのに……」
お姉ちゃん属性持っていても偶には愚痴とか吐かないとね
俺でよければいつでも
何せ弟後輩ですから
ちなみに楓ママ当主は、お姉ちゃん先輩がティーパーティに行きたくないのってどう思っているの?
「ん?まぁパーティに関しては、色々な人とコネクションをもてるから将来的にも薄の役には立つのかなぁと……
コネはあって損はないからねぇ
後はまぁいい人とかいればねぇと思っているんだけれど……」
「先月までなら全然いいんだけれど……」
ちなみに、お姉ちゃん先輩
人数って増やせたりする?前日だけど……
「ぇ?もしかして弟後輩君……一緒に来てくれたりするの?」
俺じゃなくて、楓ママ当主
だけど、明日の楓ママ当主の都合にもよるんだけれど……
「夕君とデート「イエーイ」
何々?悪巧みなら一考するよ?」
えっとですね、いい人がいるかどうかって所なんですけれど……
替え玉といいますか何と言いますか……
楓ママ当主がお姉ちゃん先輩のように振舞って、お姉ちゃん先輩が友人のように振舞って
はい、楓ママ当主とお姉ちゃん先輩が結構似てますので……
その、普段からお姉ちゃん先輩のことを見ている人がいるかな?ってことで
楓ママ当主の顔を見ると……ヤダ、何それ超面白そう……そんな顔をしている
その横の夕パパ所長は楓ママ当主の顔を見て……かえちゃん程々にね……そんな顔をしている
隣のお姉ちゃん先輩の顔を見ると……あれ?とても怪しい笑みが……凄く、悪巧みを考えているような……
「乗った
夕君、終わったら一緒にデートしようね」
「うん、わかったよ」
「主催のりっちゃんに人数変更の電話入れるね?……
あ、りっちゃん?
私私、明日のことなんだけれど、人数追加のお願い
あ、うん、えっとね女性2人追加」
ぇ?2人?ぇ?もう1人はお姉ちゃん先輩の友達かな?
「うん、ゴメンね、前日に言って
ありがと
それじゃ、また明日」
あ、お姉ちゃん先輩、色々とスッキリした顔している
「だって、あの憂鬱なイベントがちょっと面白くなりそうだもん
ママ来るし、弟後輩君も来てくれるし」
ふぇ????
「ほら、2人って言ってたでしょ?」
女性ですよね?
俺、男性よ?
「ふっふっふ~」
そうして、お姉ちゃん先輩から出されたのは1枚の写真
……あれ?仕事中の写真?女装姿の??何であるの?そこらへん気をつけていたんだけれどなぁ……
まぁ、知らない人でいこう
そうすると2、3、4枚目が出されて……
……お姉さまに好き放題やられているときの連続写真じゃあ無いですか?
……言い訳できねぇ
「何か言いたいことは?」
お金に釣られたんです
趣味じゃないんです
ってかどうしたこんな写真があるんですか?
「我が家の従者に光魔法の使い手がいてね?
その人が、姿を消して、撮って、現像して
証拠も何も残らない~」
光魔法ってストーカーにぴったりなんですか?
魔法怖いよぅ
あ、お姉ちゃん先輩がパンパン、手を鳴らす
あれ?メイドさんが急に現れたよ?
「まぁこんな感じで潜めれるわけですよ?」
あ、この人確か……
いっぺん相談に来た人じゃなかったっけ?
使用人なのに主人が好きでどうしたらいいんでしょうか?って
あぁうん、でそういう話は一杯あるので、そういう本で耐え忍びましょうという感じにしたんだよねぇ
その人の主人って……
「私だよ?」
つまりこの人はお姉ちゃん先輩が好きで?
ユリメ……
……知らない天井だ
ここはどこ?私はモブ
「あ、起きた」
あ、お姉ちゃん先輩……ここはどこ?後なんで寝てた?
「ここは、茶包家のお客さん用の場所
明日の為に魔法の練習していたら、倒れたんだよ」
あれ?明日の準備?
「うん、私とママと弟後輩君とでパーティにいくって」
パーティ……あれ?そういえば……
それで女装する為に光魔法で変装しようとしていたんだっけ?
あ、でもドレスとか無いですよ?
「そこらへんは予備のドレスとかあるし大丈夫だよ」
お手数をおかけします
「いやいや、こっちこそ無茶言ってごめんね
女装の件といい、明日拘束する件と言い……」
いえいえ、お姉ちゃん先輩が困っているんです
助けるのは弟後輩の役割ですよ
それにいつもお姉ちゃん先輩には迷惑掛けていますから、その程度やらせてください
「ありがと、ゴメンね?
……ところでユリメって何?」
ユリメ……なんだろうわかんない
ってことで、光魔法の特訓です
光魔法で顔を見た目を田舎娘っぽくします
笑顔の練習、しょぼーんの練習、むむむの練習、嘘泣きの練習、怒りの練習
まぁ何か午後はそんな感じで光魔法で幻影の練習をしましたとも……
光魔法が得意な執事さんに習いました
うん、魔法を使っているってばれないような細工方法とかも教えてもらっていますよ?
なんか普通にやっているだけだと、違和感が結構あるらしく瞬間的にばれるらしい
わぉ
夕方に何とか合格をもらえました
次は声です
流石に《大天使の囁き》を使うわけにはいけません
そんなプロ市民みたいなことはしたくありません
声からモブ子だとばれるとかあってはいけません
そんなことがあってはお姉ちゃん先輩の恥になります
新ボイス開発です
田舎娘っぽい声……田舎娘っぽい声
まぁ元気な感じかなぁ
よし、完成
呪文名は《カントリーガールモード》
明日の準備はこれでOKかな?
顔、声は魔法で、ドレスとウイッグもよし
後は……うん、遅刻をしなければいいね
それじゃ、私は帰るよ
明日、8時に来ればいいかな?
「何を言ってらっしゃいますかな?士様?」
ん?執事さん、俺まだ足りないことある?
「女性らしさ、優雅さ、気品さ、そして何より速さです」
いや、だって男だし?
田舎娘設定だから、優雅さとか気品とかも?
速さって何?魔法の生成速度?
「多少は目をつぶってもらえますが……その……」
多少レベル超えてる?
「……………………」
無言やめてぇぇぇぇえっぇぇぇ
つまり、俺のレベルだと女性らしさが欠片もないと……
ばれる可能性があると……
お姉ちゃん先輩が恥をかく可能性が高いと……
執事さんがこくこく頷く
…………
「助けるのは弟後輩の役割……」
わっかりましたよぅぅぅ
女性らしさを取得しますよ
次は誰に師事すればいいんですか?
まだ、お……私の夜は終わりません
メイドは茶包メイド流秘技、気絶のツボを押した……モブは気絶した
メイドは茶包メイド流秘技、忘却のツボを押した……モブはユリメイドを忘却した
メイドは茶包メイド流秘技、洗脳を実施した……モブは明日ティーパーティに行くことを了承した、ように錯覚した
メイドは秘技、変装:執事を実施した……モブは執事がユリメイドだと気づかなかった




