39話 野球のお話
大変遅くなり申し訳ないorz
「お待たせしました~
皆さ~~ん、テレビの前にちゃんといるかな?
お菓子の準備は大丈夫かな~?
ってことでモンスターと人との交流という歴史的事件が始まるよ~
解説にはこの歴史的事件をプロデュースした茶包夫妻に来ていただいています」
「「よろしく~」」
「さて、今回野球対決ということになりましたんですが、両チームのスターティングメンバーを見てみましょう
先ずは先行がモンスターチームでチーム名:モトブレ
打順から順に
1.モノポン(一つ目)右投右打 ファースト
2.スカリン(骨) 右投右打 キャッチャー
3.オガット(オーガ)右投右打 ピッチャー
4.ハンニャー(?) 右投右打 サード
5.リザー(リザード)左投左打 レフト
6.キュウ(吸血鬼) 右投右打 ライト
7.ピット(ハーピィ)左投左打 センター
8.ハナ(アウラウネ)左投左打 セカンド
9.トリン(三つ目) 右投右打 ショート
対する人チームはチーム名:ジャージズ
……なんでこの名前なんですかね?」
「あぁ、このチームのリーダーがジャージ最高、ユニフォームはジャージ以外ありえないと叫んだ結果がこうなったそうです」
ちなみにジャージだと嫁入り前のお姉ちゃん先輩の太ももを見せなくてもいいから安心だよと説得されたことは内緒
「……リーダーがただのジャージ好きの所為でしたか……
気を取り直して、
打順順に
1.赤城 桃 右投右打 レフト
2.池 塔弥 右投右打 ファースト
3.黒姫 牡丹 右投右打 ライト
4.瀬戸 結城 右投右打 サード
5.茶包 薄 右投右打 ショート
6.久川 大志 右投右打 キャッチャー
7.妖精さん 左投左打 センター
8.成田 綴莉 右投右打 セカンド
9.烏丸 抄 両投両打 ピッチャー
って、妖精さんっていたんですか?私初めて見ますよ?
後、この烏丸ってなんで烏の仮面をしているんでしょうか?」
「妖精さんは今回の出来事で私も初めて会いましたね
一種の都市伝説かと思っていましたが……
これを機にモンスター側だけではなくて、妖精さんとも交流できたらいいですね」
「あの烏のお面はこのダンジョンのゴブリンさんに作成してもらったものだそうよ
このスポーツをやるに当たって、ゴブリンさん達には色んなものを製作してもらいました
向こうにはハンニャー仮面がいるでしょ?
なら、こちらとしても友好の証として烏のお面を作成してもらったそうよ」
「へー、そうなんですか」
べ、別にイケメンばかりが出てくる面子の中でモブ顔を曝したくなかったからというわけじゃないんだからね byモブ
ちなみにちょっとだけ身体能力がアップする機能も付けました byゴブリン
ボイスチェンジも付けました by成田
「さて、今回交流戦ということでなんと、今まで行方不明だった、黒姫家の御長男、一成君を今まで保護していたところを返してくれるそうです
あ、今、黒姫家当主と一成君とが半年振りの再会でしょうか?
2人とも涙を流しながら抱き合っています」
感動の再会から5分後、王様が登板
「さて、感動も覚めやらないうちに始球式が始まります
なんと、始球式にはこの国の王様が始球式を行います
よく国王をこのイベントに参加させることが出来ましたね?」
「やはり、モンスターとの交流ですよ?
そこには国王が出なくて誰が出るのですかって、頑張って説得しました!」
「国王に出て頂くよう熱弁をふるっていたあの姿は素敵でしたわよ、夕君」
突如2人からあふれるラブラブオーラ
独り身の私には中々この実況中継はつらいなぁと遠い目をする実況者
そうこうしているうちに始球式開幕
「おっと、王様からのボールが投げられたーー!!」
ボールはワンバウンド、ツーバウンド……しかし、それを打者、モノポン空振りしない
そのボールを打つ
ボールが飛んだ先はサード
瀬戸、このボールを難なく捕球
「「「…………」」」
思わず黙る実況席
モトブレ側のハンニャー仮面も、ジャージズ烏丸も冷や汗モノ
それもそのはず
予定ではただ空振りで終わるはずだったから……
あまりの出来事にどうフォローをすればいいのかと思案
そこで茶包 夕、機転を利かす
「いやー、面白いですねぇ
本当ならば、この始球式、投手に経緯を評して空振りをするはずですが、普通に打ちました
これはモンスター側から『これから交流を深めるわけだが、接待ではない、そこを勘違いしてもらっては困る』見たいなメッセージを出しているんですかね?
そして、捕球したのが瀬戸選手なのも面白い
彼は警察官です、市民を、国を守る方です
その方が捕球したことで偶然ですが、『もし何かあっても警察が守りますので安心してください』
そんな形が現れた始球式ではないでしょうか?」
おー、とばかりに観客から盛大な拍手が贈られる
モトブレ側のハンニャー仮面及び、ジャージズ烏丸、全力で茶包 夕にGJを心の中で贈る
「で、これはライナーで捕球したので、1アウトから始まるのですよね?」
「ですね
さて、ここからモ……烏丸投手がどのようなピッチングを行うかが見所ですね」
モブ改め、烏丸が今回のために用意したのは90種の球種の呪文と6種の投球フォーム
球種に関しては加速+1段階変化(上下左右斜め+加速)の9種及び、加速+2段変化の81種、併せて90種の呪文
投球フォームはオーバー、サイド、アンダースロー×左右の6種
それっぽく投げれば後は魔法でボールを捕手まで届かせるという、実に魔法任せである
球種、コースを絞らせないことによって打者を封じこめる、そんな作戦である
その狙いが当たり、1回の表、スカリン、オガットともに三振
「変化球を中心にした投球にモトブレ側なすすべなく終わりました
攻守が変わり、ジャージズ、攻撃になります
相対するモトブレ側のピッチャー、オガット投手の投球は……練習を見る限りでは直球ですね」
「はい
ただし、先ほどの烏丸投手のボールに比べるとかなり早いですね
魔法無しで魔法で加速した烏丸投手より球速が早いとなると……やはり身体能力は凄い物がありますね」
烏丸投手の魔法がしょぼいといわない茶包夫妻の優しさに感激中のモブ
成すすべなく三者三振
三振した皆さんの言い訳をどうぞ
「ちょっと速くて戸惑っただけ、次は打てるわ」「ははは、怖すぎる無理無理」「……お兄ちゃんが帰ってきたからテンションが上げるのにちょっと待ってね」
一方その頃、街に1人の可愛らしい少女がやってきた
その少女、街に初めて来たためキョロキョロしていたところ、巡回中の赤城プライベートポリスの人が声を掛ける
「どうかしましたか、可愛らしいお嬢さん」
「あ、すみません
この街にはじめてきたもので……
このチケットなんですけど……」
そう言って取り出したるは、野球観戦チケットVIP席
こんな少女がVIP席のチケットを持っているのかと若干気になったが、偽造された様子も無かったため、ダンジョンまでの案内を申し出た
「あ、ありがとうございます」
破顔一笑
その可愛らしい笑顔は破壊力満点
その破壊力満点の笑顔を受けた赤城プライベートポリスは……ぐはっ、と吐血し倒れた
この少女、以前白銀が使用しようとして失敗した『キラースマイル』の正真正銘の使い手なのである
さてこの様子を見ていた者がいた
その者、倒れた赤城プライベートポリスと一緒に巡回をしていた茶包プライベートポリスである
この惨状を見た茶包プライベートポリスが行うことはただ1つ
「ちょっと、署までご同行願えますかな?」
「……はい」
こうして可愛らしい少女は警察署に連れて行かれた
そして、誤解が解けて、ダンジョンについたとき、試合は既に8回表になっていた
そこで、少女が見たのは自分の兄がうなだれている姿である
その状況を見て、少女は声を上げる
「お兄ちゃ~ん、ファイト~~」
少女が声を上げる少し前、試合の方はどうなっていたかというと7回表まで0-0でお互いに完全試合をしていた
モトブレ側はモブの狙い通り、90種の魔法による変化球に翻弄されていた
二度ほど、モブがうっかり(慢心とも言う)を発動して同じ魔法を使用したことがあった
うっかりを発動してしまった相手はトリン、スカリン
軌道は既に知っている(一度見ただけで軌跡が見破られるとかひどい by モブ)ため、トリン、スカリンともにジャストミート
両方ともホームランの当たりだったが、トリンは妖精さんがパタパタと飛んで捕球(出来高ゲット)、スカリンは瀬戸によってラサードイナーになる
一方、ジャージズ、こちらもモトブレ側の攻略ができずにいた
モトブレ側の戦略で、1回1回ピッチャーを変更するという戦略
それでも対応する人間はいた
赤城、瀬戸、茶包は3球目にはある程度対応が出来ていた
しかし、守備が鉄壁
アウラウネのハナが蔦を伸ばし捕球、吸血鬼のキュウが空を飛び捕球、ハンニャー仮面がライナーを捕球と尽くヒット性の打球を捕球した
(ちなみに空を飛んだり、蔦を伸ばすのは魔法ではないと判定されて、ルール的には問題は無かったりする)
そんなこんなで8回表、勇者ハンニャーからの打順
モブが前2回との対戦と同様、変化球によって三振を狙う
対する勇者ハンニャー、変化球をカットする作戦に出る
そう、呪文によって、球の軌跡がわかれば、他の仲間もその対応ができる
ならば、全球種を出させればいい……ということにより、カット大作戦
カットに次ぐカットでファールの嵐
そして、90種全てが出し尽くしてしまい、打つ手がなくなってしまったモブ
呆然としているところに
「お兄ちゃ~ん、ファイト~~」
自分の愛しい妹の声が聞こえる
お兄ちゃんモードが覚醒した
お兄ちゃんモードとは……お兄ちゃんは妹が見ている前では常にかっこよくなくてはいけない
(※ちなみにお兄ちゃんモード以外にも鬼いちゃんモードと汚兄ちゃんモードもあったりする)
こんなうなだれている姿を見せるわけにはいけない、不屈の心をもってもう一度前を向く
前には不適な顔の勇者ハンニャー
そして、キャッチャーの久川、横にはショートの茶包
茶包が不安そうに言う
「大丈夫?ちょっと早いけれど、お姉ちゃん先輩がピッチャー代わろうか?」
もともとの予定としては9回にピッチャーを交代する予定だった
それを繰り上げようかとの提案をする
「お姉ちゃん先輩、残念ですが、それはすることができません」
「え?でも大丈夫なの?」
「逆に聞きたいのですが、お姉ちゃん先輩は弟、妹がいる前でこんな姿で交代できますか?」
「それは無理な相談だねぇ……ぇ?妹さん来ているの?」
「はい」
「どこどこ?」
キョロキョロとスタンドを探す薄先輩
「あまりに眩しいので、直視するのは危険です
なので、試合が終わったら紹介しますよ
で、こんな姿で交代するなんてありえないですよね?」
「うん、ありえないね
でも、いつも弟後輩君から聞いていた妹ちゃんに会えるのか
……弟後輩君の妹ってことは、私にとっては妹も同然……お姉ちゃん先輩の見せ場も増やす気ない?」
「なので、あいつを三振にしとめたら交代しましょう」
「おっけー」
「で、久川君」
「なんでしょう?神様」
「ど真ん中にミットを構えておいてくれ
そこに全力でボールを放るから
全力だからかなり痛いとは思うけれど、まぁ大丈夫だよな?」
親指を立ててキャッチャーポジションに戻る
そして、全員が守備についたところでこちらは予告ストレートを出す
勇者ハンニャー仮面に若干の戸惑いが生まれる
それもそのはず
今まで、変化球中心で投球の組み立てをしていた人間が急に予告ストレートである
どう考えてもこれは罠である可能性が非常に高い
ここで変化球をするとヤツは非難轟々であるが、ここでは野球がマイナーなため、この意味を通じている者が少ない
しかもヤツは仮面を被っているため、中の人が分からない、そのため、責められても飄々と回避できる
でも、しかし……そう悩んでる間にモブから投球される
モブが投球したのは予告どおりストレート
ただし、加速5段階、呪文なしでその場でコントロールした魔法である
残る魔力を全て注ぎ込んだ渾身の投球
その渾身の投球にバットが出せない勇者ハンニャー
結果、久川のミットにボールは納まる
「ストライク、バッターアウト」
主審が宣言し、ガッツポーズし、咆哮するモブ
………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………
………………………………………………
…………………………
………………
……
「さてこの歴史的な試合は0-1でジャージズが勝利しましたが、解説のお2人はこの試合の勝負の分かれ目はどこにあったと思いますか?」
「私たちの娘が投げたところから……といいたいところですが、やはりあの一球かなぁ?」
「やっぱり、かえちゃんもそう思う?僕もそこに尽きると思うんだ」
「あの一球って言うのはやはり、ハンニャー氏に投げたど真ん中ストレートですかね?」
「「ですね」」
「あれ見て、燃えない人間はいないでしょう」
「まぁあれを投げた本人はその後、魔力がほぼ尽きてしまって、ただ立っているだけの守備要因になっていましたが、その分他の方達が頑張っていましたね」
「そして、瀬戸氏のホームラン
もう誰も反応できないくらいのスピードでスタンドに叩き込みましたね」
「1打席目ははサードライナー、2打席目はホームラン性の当たりを捕球されてセンターフライトでしたので、惜しかったのですが……
そこで、3打席目は誰にも反応できないスピードでライトスタンドに叩き込みましたね
やっぱりこれも……」
「まぁあの一球で燃えた所為じゃないですかね?」
「それにしてもスポーツっていいものですね
今、こうやってお互いのチームが握手しています
正直、モンスターとこういう関係を結べるって考えたこと無かったです
それが、スポーツを通じてお互いを讃えあう……ホント、羨ましくあります
自分も後5年ほど若ければ、この話が来たときに混ぜてもらっていたんですけどねぇ」
「貴方は今でも若いわよ?」
「ありがと」
「それにしても、これを機に交流が続ければいいですねぇ」
「そこらへんは私たち貴族の仕事になりますね
交流が途絶えないようにやっていく予定です
今回のように仲介者もいますし、またこのスタジアムを作るのに協力関係とかもありましたのでこれからもっと仲良くなれると思いますよ」
「そうですねぇ
さて、時間もそろそろですので、この辺でお開きにしたいと思います
解説の茶包夫妻ありがとうございました
それではこの辺で」
………………………………………………………………………………
さて、試合が終わったモブははその後どうしたかというと……1ヶ月ぶりの妹と滅茶苦茶遊んだ
ぇ?他のジャージズ一行はどうしたかって?
モブ妹の『キラースマイル』に全員倒れたよ?
薄お姉ちゃん先輩のみ鼻血出すだけで耐えれたけれど、追撃の『キラースマイル』に耐えれなかったよ?
そして『キラースマイル』から復帰した際、「ちょっとお姉ちゃん修行してくる」と茶包夫妻に言って、元気にお外に行ったそうな
、




