32.75話 わんにゃんくぅかぁうぉーの話
ちょいと長めです
クラス内交流戦が終わった次の日の放課後、俺は魔道具屋『万魔』に来ていた
速攻で壊してしまったことに対しての謝罪と、あわよくば直してもらおうと……
魔道具製作の駆け出しの店員、成田 綴莉の前に恐る恐る壊れたカラスたんを出す俺
そっと上目遣いで彼の顔を見ると……そこには般若がいらっしゃった
命の危険を感じた俺はすぐさま必殺DO☆GE☆ZAを敢行
「申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!!!」
一体どれだけDO☆GE☆ZAをしていたかわからない
だが、DO☆GE☆ZAが功を奏したのか
「まぁ、買ったのは君だから、君がどう使おうと勝手なんだけどね……」
というお許しをいただきました
「この子等直せそうだったりする?」
「あー、うん……直せそうではあるんだけど……普通に買う方が安くつくよ?」
「うそぉん?」
「マジ……そうだねぇ直すとなったら3万~になるかなぁ
一体どうやったらこんなにずたずたに壊せたりするのかなぁ?」
俺は、壊れた経緯……クラス内交流戦のことについて話をする
「クラス内交流戦ねぇ……こんなに可愛いカラスを全力で投げるなんて……」
「反省はしているけど、後悔はしてない(キリッ」
「まぁ物理的に投げたのは運が悪かったとしかいいようがないかな……
で、もう片方は……うん、ひどいね
もう僕が作った魔力回路が全部ぼろぼろにされているよ
これは多分魔力のオーバーフローによる破壊かなぁ
この子を支配する為に通常の3倍ぐらいの魔力を流し込まれている
それで、魔力回路やら何やらが全部壊れているわ」
「何それ、超おっかないんですけど……」
「相手は6大貴族でしょ?
それぐらいやるでしょ?」
「そういえば、あいつと戦った人間が皆リタイア宣言していたってことは……
強烈な魔力を流し込まれて支配されてたってこと?」
「だろうねぇ
人なら壊れないだろうけど、この子等はそれに対するセキュリティとかないからねぇ」
「ちなみにセキュリティれはこの子等に付けれる?」
「可能だけど……高いよ?」
「おいくら?」
「1体買ったときの100倍以上の値段になる」
買ったときは3000だから値段としては300000
最低値の時点で手錠と同等の金額を必要とする
勿論、俺に買える訳が無い
「無理ですな」
「諦めて、新しいのを買おう
まぁカラスは今在庫切れているんですけどね……」
「ちょ……なんで?」
「君が一昨日に買い占めたじゃないか
まさか、もう壊してくるとは思っていなかったので新しく作っていないですよ?」
「カラスたんがいないとなると、何か他ある?」
「カラスより可愛さが1段落ちるが、犬、猫、兎、猿、亀、羊、鼠、白鳥、鷹、他にも色々動物シリーズがあるよ」
カウンターから次から次へと動物を取り出してくる店員、成田
動物についている値札を見るとどれも1万以上の値段がついている
鷹にいたっては10万とかなり高額である
つい先日に手錠という大きな買い物をした俺は軍資金が少ない
1万でもかなりの出費になる
なので俺は、先ずカラスとの差が乖離しすぎていることによる値下げ交渉を行う
「定員さ~ん、カラスたんとの値段が3倍以上って何で~?」
「カラスは布教用なのですよ
あんまり人気がないので、安くすれば売れるかなと
……で、あわよくば可愛さに気づいてくれないかなと……
なので、原価ぎりぎりの値段で売ってただけ
他の動物は儲けを入れるから、この値段
ちなみに師匠との相談でこの値段だから、値下げには応じないからね」
こちらの狙いを感づき速攻でシャットアウトする店員、成田
看破&シャットアウトされたことで俺は再考する
如何に安く仕上げることができるか……この1点について脳をフル回転させる
そして1つ閃き、成田に質問する
「前借り、またはレンタルって可能かい?」
「前借り?」
「一度借りる、その後定期的に借りた物が壊れていないかを確認して壊れていたらお金を支払うって形なんだけど……」
「定期確認はどうする?」
「週一でこちらによって、その時に持ってきていなかったら買取って形でいいかな……と」
「ふむ……面白そう……かな
よし、それでいいよ」
金欠になる事態は避けられたので、俺は心の中でガッツポーズ
しかし、人事ながら気になることが……
「師匠に相談はしなくても大丈夫なのか?」
「そこらへんは一任されているから……
師匠は色んなものを作ることは凄いけど、ここら辺はずぼらになっているし
おかげで、結構火の車だったりするし」
俺は危機感を抱いた
此処が万が一にでも潰れることがあったなら
……そう、色々と買い物をしている身としては此処が潰れるのはなんとしてでも避けたい
そこで俺は一つ提案をする
「此処、ヤバイならステマしようか?」
「ステマ?」
「ステルスマーケティングの略
要は宣伝とわからないように宣伝すること
有名人がどこどこの何を購入しました、凄く快適になりましたってやつ」
「あ~、でも有名人とかは?」
「有名人ではないけど、当てはある」
成田は終始懐疑的な目だったが、ダメ元で俺に頼んだ
次の日の朝、日課のランニングを行う
ただし、昨日前借りした犬、猫、兎それとカラス3羽とともに
体力の増強と魔力の制御とそして、ある人の目に止まるように……
ある人とは、通称スピーカーおばさん
彼女に知られたら、気が付けば町全体の人に知れ渡るという、恐ろしくもあり、頼もしくもあるスピーカーおばさん
俺の作戦はいたってシンプル
スピーカーおばさんにステマを仕掛ければ、町の人全員にステマを仕掛けれるといういたってシンプルなものである
犬、猫、兎、そしてカラスに囲まれながらランニングを行う俺は目立つ
案の定、そんな俺を見つけたスピーカーおばさんは俺に聞きに来る
そこで俺は、この魔道具のステマをする
これ等で俺は魔力制御の練習をしている、強い魔力を与えると簡単に壊れてしまうから、嫌でも魔力制御がうまくなる
衝突に弱いから注意力を上げるにももってこいの魔道具だと
欠点を美点に変えて俺はひっそりとスピーカーおばさんにステマした
朝食を取り、いつもの通り学園へ行き、教室へ入るなり、クラスメートから糾弾や賞賛を受ける
「ハーレムはいけないと思いマス」……こう言って糾弾したのはルイン・マルー
「One Night Zoo……なんでそんなかっこいい二つ名貰ってんだよ」……こう言って羨望するのは御神 錬
「ハーレムとか……このリア充め」……こう言って怨嗟を吐いたのは池 塔弥
「捨てられた動物を拾うとは……命を大切にするなんて素晴らしい」……こう言って賞賛したのは小山 智
このときの俺には知る由も無かったが、スピーカーおばさんによる伝言ゲームの成果である
たったの1時間程度で色んな噂になってしまったのである
後でこの事実を知った俺はスピーカーおばさんに戦慄をすることとなる
「で、One Night Zooよ、本命は誰なんだ?」
東雲 隼人が放った質問に「カラスたん」と即答した結果、まさかの事態が起こった
はじめは「カラスが本命とかありえねー」「人としてどうかしている」という批判から始まった
次に「犬の方が忠犬で断然いいよ」「猫超可愛い」「兎のぴょんぴょんに勝てるわけが無い」というアピール合戦
「犬犬犬犬犬」「猫猫猫猫猫」「兎兎兎兎兎」
こうして犬派、猫派、兎派の派閥が出来上がった
ぎゃんぎゃん言い合う中
「よろしい、ならばチーム戦だ!!」
この久川 大志の一言によって、放課後にチーム戦を行うことになった
ちなみにヤツは兎派である
「その戦争、カラス派も混ぜてもらおうか」
意気揚々とカラス派の俺も名乗りを上げた……が、却下された
理由は、カラス派といいながら一人しかいないこと
せめてもう一人いないとと言われたため、カラス派になってくれそうな人がいないか教室を見渡す
モブのやることに関心事がない、チーム【魔法学園 ドキ×キラ×ラブ】
それ以外の人は犬派、猫派、兎派の派閥に取り込まれ済み
チーム戦を諦めかけた瞬間、救いの女神が現れる
「カラス、私、好きだよ?」
あろうことかその救いの女神は、チーム【魔法学園 ドキ×キラ×ラブ】の一人、黒姫であった
俺はすぐさま彼女の元へ駆け寄り、がっちり握手
一瞬、チーム【魔法学園 ドキ×キラ×ラブ】の人間とは極力関わらないんだったと後悔したが、今回だけはまぁいいやとカラス好きが勝ってしまった
こうして放課後、犬猫兎烏大戦争が始まることになった
昼休み、いつもの睡眠を止め瞑想室で俺と黒姫が一緒にいた
犬猫兎烏大戦争の作戦会議のためである
犬猫兎烏大戦争で各チーム5人までである
そのため、序盤の展開について俺は他3チームが結託して我々を潰しに来ると読んでいる
こちらを潰してから3チームで仕切りなおしって形になると
そこで、1つ黒姫に質問をしてみる
「黒姫は1vs15で勝てるか?」
「無理に決まっているわ」
「ですよねー」
ならばと、とある提案を黒姫にしてみる
その提案を聞いた黒姫の感想は
「貴方……正気?」
「まぁ、鬼ごっこだと思えば何とでもなるんじゃないかな?」
プランとしては提案したやつで行くことになった
俺は黒姫に視覚共有の方法を教え、俺の方は俺の方で黒姫をからかいながら、チーム戦用に新しい呪文の作成に打ち込む
そして放課後、チーム戦の時間がやってきた
ちなみにこのチーム戦の後、クラス間交流戦がある
そのため、黒姫にクラス間交流戦と「連続で魔法を使用することになるけど大丈夫なのか?」と聞いてみた所、「出ないから大丈夫」の答えが返ってきた
地形はランダムで市街地が選ばれ、チームごとの転送が終わり、戦闘開始の鐘が鳴る
俺は今回のために作成した呪文を叫ぶ
「《チェェェェンジ、モブちゃん!!!ブ・ラ・プ・リモォォォォドッ!!!》」
するとどうだろう?俺が光に包まれているではないか
そして、光が収まったらそこにいたのはなんと俺の姿が黒姫と瓜二つに
作戦は実に簡単
今回、黒姫が他3チームから集中的に狙われるのはほぼ確定事項である
ならばそれを逆手に取り、俺が黒姫の振りをし相手を惹き付ける
フリーになった黒姫が魔法でバンバン俺を追いかける人間を倒していく
そして、黒姫には俺のカラス1号、エレオノーラを譲る
俺がこれを手放すことで、利点がある
俺が黒姫に変身していることが発覚するリスクの軽減および、黒姫の魔法の射程距離の上昇
渡すことによって、俺の索敵能力が落ちるため、被弾率が上がる懸念はある
実はこの《チェンジ、モブちゃん!ブラプリモード》の呪文は急増で作ったため欠点だらけである
その中でも一番の欠点が一発攻撃を喰らえば魔法が解除されて、元に戻る
そのため、被弾率が上がるのはかなりの不利にはなる……しかし、2対15という戦力差をひっくり返すため、俺は攻撃重視を取り、黒姫にエレオノーラを譲った
そして俺は囮となるべく駆けだした
一方、観客側では
『《チェェェェンジ、モブちゃん!!!ブ・ラ・プ・リモォォォォドッ!!!》』
で黒姫と瓜二つな守武を見て、全員がこう思った
((((((((((こ、こいつはまごうことなき変態だぜ)))))))))))
さて、囮として駆け出した俺だが、建物に沿うように移動をしていた
建物の上にはカラスが陣取り、そこからの視界共有した黒姫が俺の進行方向を指示する
ちなみに黒姫はカラスより少し離れた箇所に陣取っている
そうして移動をしていたら、第一相手発見との報告を黒姫から受ける
ただ、視認はできても黒姫の魔法の射程外のため、近づく
黒姫の魔法の射程内に入った瞬間、彼女の呪文……足元から出現する闇の魔法の刃、によって、再起不能にする
『一乃谷、戦闘不能、リタイア』
彼を倒した瞬間に流れたアナウンスにより、1分経たずに残り14人が集合する
同じような形で、各個撃破で2人を再起不能にしたところで遂に相手と遭遇した
ぴぃぃぃぃぃっぃぃっぃっぃ!!!!!
黒姫が魔法を使って再起不能にさせる前に相手は笛を鳴らす
『羽鳥、戦闘不能、リタイア』
彼を戦闘不能にしたけど、時既に遅し
残り11人が集結
ここからが俺の仕事になる
俺の仕事は黒姫に化けているとばれないようにすること
そして、隙があれば手をかざし、シャドウエッジと言うこと
これがトリガーとして、彼女の方で《シャドウエッジ》を唱え、一人ずつ再起不能にしていく
しかし、このばれないようにするが実に難しい
俺の魔法の威力は低い、故に魔法を使った瞬間、俺が偽者の黒姫であることがばれる
防御をした場合、被弾判定により魔法が解けて、偽者だとばれる
回避する場合、優雅に回避しないとばれる(※本人談)
ちなみに呪文を使用しているのも起点を足元にすることによって、俺の魔法だと錯覚させるためである
11人の猛攻撃を優雅に……テンパっているけど、とりあえずは平静に振舞い紙一重で避けて一人は再起不能にさせる
……しかし、反撃はここまで
多勢に無勢、距離をつめられさらに猛攻撃を受け、避けるので手一杯になる
さらに距離をじわじわと詰められて、避けるのがもう無理と判断し、俺は一気に距離を詰める
途中被弾をし、ブラプリモードが解除される
解除された瞬間、
「「「「「「「「「「なっ????」」」」」」」」」」
相手チームの面々は驚きをあらわにする
その隙を突いてさらに距離を詰める
そして右手を挙げて、黒姫に合図をする
その合図を受けた黒姫が呪文を唱える
闇の球体が拡がる……俺を中心に
ダークドームが相手チームの面々にも覆い、
「「「「「「「「「「「リタイアします」」」」」」」」」」」
俺も含めて、黒姫以外全員がリタイア宣言を出す
バトルフィールドから戻ると黒姫がいた
このときばかりは彼女がゲームのヒロインということを忘れ、ハイタッチをした
こうして犬猫兎烏大戦争は烏の勝利で幕が閉じた
一方、観客側の久川 大志
(流石神様、マジパネェ
女装をすることで発生する周りからの視線も快感に変えるんですね?
そして11人からの攻撃を魔法なしでしかもワザとぎりぎりでかわすとか……
見事な精神的負荷です神様
次に、10人からの攻撃を直接喰らい、肉体的な負荷
最後に味方の攻撃も喰らうとか、マジパネェッス
金野の攻撃を受け、肉体的な負荷しかかけてなかった自分が恥ずかしい
もっと僕も精進しなくては)
彼はMの道の険しさを改めて感じていた
さて、朝の万魔のステマした結果はというと、バイトに行く前に万魔の成田から連絡が来る
「まさか6大貴族の黒姫に買って貰えたよ~~
ありがとーー」
こちらが意図して仕掛けたスピーカーおばさんは不発
変わりに意図せずカラスを譲渡した黒姫で大当たりした模様
ちょっと寂しくはあるが、魔道具屋が無事繁盛したことでよしとした
しかし後日、この黒姫が万魔の動物シリーズを大量に購入したことによって、1つの問題が浮上した
それは、俺がつけられていた二つ名「One Night Zoo」は黒姫の動物の数と比べるとZooには相応しくないのではという問題が……
そして、新しくつけられた二つ名が「One 変態 M Knight」……とある変態M騎士
だから俺は変態でもMでもねぇぇぇぇっぇぇぇぇぇ!!!!!!!
仕事ががががが(白目
更新ペース遅くなりそうです><




