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4:魔道具

あれから2週間経った。


俺は今再びクレインの町に来ている。

魔石がある程度溜まったので売りに来たのだ。


ちなみにこの週間で俺が錬成した魔石は


ランク1魔石

火魔石6個

氷魔石8個

風魔石5個

雷魔石2個

土魔石7個

聖魔石7個

闇魔石4個

無魔石5個


ランク2魔石

氷魔石1個

風魔石1個



ランク2魔石も2つ作ることができた。これはかなり高額で売れるだろう。

なにより嬉しかったのはスキルLvが上がったことだ。

今日の朝魔石錬成をしてみたら何と4つまで魔石を作る事ができたのだ。

3→4の成長はかなりおいしい。


魔石は魔道具屋で買い取ってくれるとのことだったので、

ついでに魔道具も物色してみようと思う。


店主はしわくちゃのじいさんで俺が店に入ってくると嫌な顔をしたが、

俺が魔石を売りたいと言うと途端に笑顔で対応するようになった。


魔石の鑑定の間俺は店内の商品を見回っていたが1つの杖に目が留まった。


この店で唯一杖が置いてあったからだ。杖が武器とかロマンだよねとか考えていた俺はじいさんに値段を聞いてみた。


「さすがにお目が高い。そいつはウインドロッドと言いまして取っ手部分のレバーを握って杖を振れば杖の先から風の斬撃が飛ぶ仕組みになっております。

ただある程度の大きさの風魔石が必要になりますがね。・・・へへへ、それは最近手に入れた掘り出し物なので、なかなか市場に出て来ない一品でして。

そうですねぇ・・・銀貨30枚でお売りしますよ?」


「ふむ・・・風魔石はこれで使えるかい?」


俺はランク2風魔石をポケットから取り出す。ランク2魔石は売らずに取っておいたのだ。


「ほう・・・なかなかの風魔石ですな。その魔石ならばウインドロッドも十分に使えましょう」


「なら買おう、そういえば預けた魔石はいくらで買ってくれるのだろうか。」


「お客様は今後ともご贔屓にして頂けそうですので、勉強させて頂きます。そうですね銀貨27枚でどうでしょうか。」


杖は銀貨30枚。あと銀貨3枚足りない。ならばとポケットからランク2氷魔石を取り出して店主に渡した。


「これも追加するとしよう。」


「これもなかなか・・・そうですねでは合計で銀貨32枚でどうでしょうか」


「よし!契約成立だ!」


「ありがとうございます。」


こうして俺はランク1の火魔石、氷魔石、風魔石、無魔石全部とランク2の氷魔石を売却してウインドロッドと銀貨2枚を手に入れた。

なかなかの取引だったなと、俺は満足していた。念願のファンタジーアイテム(杖)を手に入れたことが嬉しくてしかたないのだ。

さっそく後で試してみよう。


そうだ。せっかくだからじいさんに魔道具のことについて聞いてみよう。


「なあ、この店にはもっといい魔道具はないのか?見たところほとんど生活用の安い魔道具しか置いてないようだけど。」


「あまり高い魔道具はこの辺りでは売れないので仕入れていないのです。

もしご入り用ということでしたら今度アルイエット王国に仕入れに行ったときに見繕っておきましょう。」


アルイエット王国とはここヴァストール帝国の南に位置する大国で魔法の研究が進んでいるんだそうだ。

そこでなら様々な魔道具が売っているだろうとのこと。


「じゃあお願いするよ。もっと希少で強力なやつが欲しいな。」


「ふむ・・・属性はいかがなさいますか?」


「う~ん、特に属性は何でもいいけど・・・とにかくレア魔道具が欲しいな。」


「ほう・・・属性は何でもいいと?」


じいさんの瞳が怪しく光る。


「それは・・・光や闇でも?」


俺は背筋が凍る思いがした。・・・このじじい感づいてやがる。俺が何らかの手段で聖魔石や闇魔石を手に入れることができるということを。


だが待てよとも思う。これは逆にチャンスではないか?

どうやったって規制されている光や闇属性の魔道具を入手するのは普通の方法では難しいだろう。

ここはリスクを負うだけの価値はある!


「じいさんが手に入れられるものなら高く買うぜ?・・・伝手はあるのか?」


「蛇の道は蛇と言いましょうか。この老いぼれも無駄に人生を重ねていないということですよ。ほっほっほ。さて、もう一度問いましょうか。属性はいかがなさいますか?」


じいさんが凄惨な笑みでこちらを見つめる。

俺はじじいの不気味な圧力に負けないように声を張った。


「もう一度言おう!属性は問わない!あらゆる属性の希少魔道具を揃えてこい!」


「かしこまりました。」


じいさんと握手をする。じいさんの手は枯れ枝のように細く冷んやりしていていた。

俺はその感触に悪魔に魂を売り渡す契約をしたような気がして背筋を冷たい汗が流れたのだった。




魔道具屋を出て町の入口でおっちゃんを待つ。

おっちゃんは何気にこの町の役員の一人で今日も月1回の集会に出るんだそうだ。

おっちゃんが何でこの町の役員なのか聞いてみたら、何かあった時のために防衛担当をお願いされているとのこと。

超納得。おっちゃん滅茶苦茶強いしな。


1時間ほど露店を冷やかしながら待っていると、おっちゃんがやってきた。


「よう。待たせちまったな。会合が長引いちまってよー。悪りーな」


「それはいいけど、何かあったん?」


「どうもこの辺りに盗賊が流れてきたらしくてな、その対策について打ち合わせてたら時間掛かっちまってな。」


「盗賊ねぇ。おっちゃんも大変だな。」


「まあ、これも仕事だからな。」


そう言っておっちゃんはガハハッと笑った。

その笑みに俺はさっきまでの嫌な感じが吹き飛ばされていくような気がして、

ほっと息をついたのだった。




今日は時間に余裕があるので、俺達は露店でホットドッグみたいな食べ物(銅貨2枚)を買って食べる。


「そうだ!おっちゃん、聞いてくれよ!俺、魔道具手に入れたんだぜ!」


そう言って先ほど手に入れたウインドロッド見せる。


「ほう。風の魔道杖じゃねえか。しかもいい素材使ってるみてぇだな。金足りたんか?」


「へへっ!何とかね!あ・・・この前借りた分は今度絶対返すから!」


「ま、金のことは気にすんな。そもそも貸したとも思ってなかったしな!」


そう言って笑うおっちゃん。あらためておっちゃんの人柄の良さに感動する。


「そういう訳にはいかないって。魔石が結構高く売れるみたいだし次は返せると思う・・・

ってそうだ!杖だよ!おっちゃん。俺これ使えばこないだの狼も狩れるかな?」


「いけんじゃねぇか?その杖かなり強力みたいだしよ。だけど油断だけはするなよ。」


「分かってるって。おっちゃんは、心配性だな!禿げるぜ!」


「うっせ!男は外見じゃねぇんだよ!」



そんなやり取りをしながら門を通り過ぎ、自宅に向かう俺たち。

1時間ほど歩いた所で、鹿の親子が2頭近くにいるのを発見した。

もちろんおっちゃんが。


「おい、坊主。お前ぇ魔道杖買ったんだろ?あれで試し打ちしてみたらどうだ?」


鹿を指さしておっちゃんが言う。

さっきから杖を使ってみたくてしかたがなかった俺はすかさずその提案に飛びついた。


「待ってました!俺の真の力を見せてやるぜ!」


ノリノリでポーズを決め杖を構える俺。呆れ顔のおっちゃん。

だが!誰にどう思われようと関係ない!俺は俺の思う道を行くぜ!


俺は杖を思いっきり振りかぶってレバーを握りながら全力で振りぬいた。


「エェェェクスウゥゥゥカリバーーーー」


ビュッという鈍い音とともに不可視の斬撃が飛んでいく。

斬撃は親鹿の首を真っ二つにし、その後ろに生えていた木すらも真っ二つにして飛んで行った。

運よく生き残った子鹿は何が起きたのか理解できない様子だったが、

親鹿が死んだことを悟るとこちらに背を向けて逃げて行った。


その様子を呆然と見送る俺。思った以上の威力にドン引きである。

さっきまでのテンションは見る影もない。


「・・・この杖ちょっと威力強すぎじゃないっすか?」


「あんなもんだろ。風魔法は強力だからな。・・・まあ強いとは言っても回数に限りがあるし、俺くらいの使い手には通用しないけどな。」


おっちゃんが、こっちを見て二カッっと笑う。・・・あれが通用しないとか嘘だろ?


「おっちゃんが化け物なのは分かったから。とりあえずあれを片付けて帰ろう。」


俺はもう色々ありすぎてドッと疲れてきてしまった。重い足取りで鹿に近づき、慣れない手つきで捌いていく俺。


おっちゃんはそんな俺を黙って見守ってくれていた。




帰り道はずっと無言だった。

俺は先ほどの出来事をずっと考えていた。

なぜあんなに自分がドン引きしたのか。それは・・・怖かったからだ。

動物を殺めてしまった罪悪感・・・ではない。

あの力がいつか自分に向かってくるのではないかと考えてしまったのだ。


(何だかんだで平和な日本にいた俺は甘かった・・・。

もっと力が欲しい。あの程度の攻撃なんかものともしない程の圧倒的な力が・・・。)


新たな決意を胸にする俺。だが、そんな俺をおっちゃんが心配そうに見つめている事に

俺は最後まで気づくことができなかった。

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