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What-if games?  作者: 岡田播磨
1章 PROLOGUE 失恋。ダメ、絶対!
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第七話


「あの……どうして、お二人は喧嘩をしたんですか?」


 完全に仲直りした二人に、袋井は興味本位で尋ねた。


「だって、知治が『狐珀の胸は柔らかいんだろうなぁ~』なんて言うから!」

「ち、違う! あれは、毛の話、モフモフの毛は柔らかいんだろうなぁって話だったの!」

「も~、だったらちゃんと言ってよ!」


 立花は佐藤の肩を叩き、笑っている。

 狐珀は苦笑して、二人を背後から抱きしめた。


「そうか、すまんのう。まさか私が二人の邪魔をしていたとは、すまんかった……」

「違うよ! 狐珀はなんにも悪くない! 知治が全部悪いの!」

「そうだよ! 狐珀さんは全然悪くない! 悪いのは勘違いした杏ちゃんなんだから!」


 ちょっと! なんだよ! とまた二人は小さないざこざを始めてしまった。

 狐珀はそんな二人の背中を押し、袋井たちから遠ざかっていく。

 顔だけ袋井に向け、「ありがとう」と声を出さずに伝えると狐珀達三人は、去っていった。

 残されたのは、袋井と突如現れた黒髪の少女だった。


「あの――さっきは、ありがとう。えーと……」

「……月乃宮恋音つきのみやれんねです……」


 袋井の顔を見ず、じっと下を向いたまま少女は自分の名を告げた。


「月乃宮さんか。僕の名前は――」

「……袋井先輩ですよね……ラブコメ推進部の……」


 前髪からちらりと袋井の顔を覗き、恋音はまた視線を外した。

 先ほどから彼女の顔は赤く、ほっぺたは林檎のように丸い赤みを帯びている。


「こ、光栄だな、僕のこと知ってるだなんて。――しっかし、さっきのは凄かったね! 何だったんだい、あれは? どうやって、佐藤さんの気持ちを言い当てたの?」

「……あれは占いの一種です……ストックスピールっていう……誰にでも当てはまりそうな言葉を使って……自分の気持ちに気付いてもらうって方法で……」

「占いか――そうか、占いだ! 占いだったら、全部が全部、本当じゃなくてもいいんだ!」


 新しい発見をした袋井は興奮し、空に向けてガッツポーズをしている。

 それを見た恋音は、優しく微笑む。

 袋井は恋音に向き直りその小さな手を、ぎゅっと掴んだ。


「月乃宮さん! お願いがあるんだ! 僕に協力してほしい! 僕の部に入ってくれないか!?」


 両腕を掴まれた恋音は、自分の手と袋井の顔を交互に見た。

 首の底から急激に真っ赤になっていき、頭のてっぺんに到達した途端、ぽんっという音がしたかと思うほど沸騰し、目を回して失神した。


「えっ! ちょっと! 月乃宮さん! つきのみやさぁぁぁぁああん!」


 ぐったりとした恋音を抱え、袋井はオロオロと辺りを見回すばかりだった。


◇◆◇


 二人を木の上から見詰める、白い影があった。

 モコモコした真っ白の衣装に、真っ白なストレートヘアー、真っ赤な瞳で双眼鏡を覗きこみ、二人をじっと眺めている。

 まるで木に登った羊のように見えるが、背中には蝙蝠のような形の白い羽が生えており、彼女が悪魔であることを示していた。

 笑い転げるのを必死に押さえ、小さく震えている。

 少女は携帯電話を取り出し、手際よくボタンを押すと、数コールもしないうちに、相手が電話に出た。


有月ありづき君かな? 私だ、不破怠惰ふわたいだだよ。悪いが、しばらく部屋を留守にするよ。後のことは、君に任せる。――いや、なに、面白い観察対象を発見してしまってねぇ。どぉ~しても、我慢できないんだよ。よろしく頼むよ」


 相手の了解も得ず、彼女は電話を切った。

 双眼鏡の中の袋井は、恋音をお姫様抱っこして中庭を去っていった。

 少女は双眼鏡を外し木に腰掛けると悪質な笑みを浮かべて、フワリと柔らかに地面へ着地した。



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※この作品は出版デビューをかけたコンテスト
『エリュシオンライトノベルコンテスト』の最終選考作品です。
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