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What-if games?  作者: 岡田播磨
3章 BADEND **をするから、愛をくれ!
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第二話


「『what-if games』、直訳すれば『もしこうなったらどうするかゲーム』なんて、感じだろうね」


 陽報館のリビングで、不破怠惰はソファにドカリと座り、向かいに座る袋井に説明を始めていた。

 銀色のストレートヘアは、よく慣らされ一本一本が艶やかに光る。

 赤い瞳は強い意志を持ち、長い眠りから目覚めた真の表情を見せていた。

 長年、人の観察に明け暮れていた悪魔は、新たな知に強い関心を払っていた。


「律花ちゃんがね、話してくれたよ。そのツキと呼ばれる人物は、子供たちにゲームをしようと持ちかけてきたらしい。通信のみで姿を見せず、律花ちゃん達を言葉巧みに、この時代へ跳躍する装置へと導いたらしい。――まったく、ふざけた奴だよ。いたいけな子供たちにサバイバルゲームをさせようと言うのだから……。まあ、律花ちゃん達は優秀だからね。その裏をかいて、はなっからサバイバルゲームなんてやらなかった。素晴らしいことだと思うよ、うん!」


 まるで自分のことを話すように、怠惰は胸を反らした。

 その隣には、少し居心地悪そうに座る律花がいる。あの一件以来――いや、どちらかと言えば、それ以前からこの二人は常に一緒に行動している。

 律花は、怠惰の世話をするという名目で常に一緒にいるのだが、それは建前で、彼女自身が怠惰から離れたくない、甘え続けていたいという思いが感じられるようであった。

 髪の毛をシュシュを使って高い位置でまとめ、低い身長を誤魔化そうとしている彼女。

 子供たちの中でも一番パワフルな彼女であるが、幼い顔立ちで、黙っているとまるで幼児のようにも見えてしまう。

 子供たちの間で、ツキの話は禁句だったのかもしれない。

 一緒に過ごす中で、そのような会話をしている姿を一度も見ることはなかった。

 最愛の母に迫られた律花は、ついには口を割ってしまった。

 他の子供達に申し訳ないという気持ちが、饒舌な彼女を寡黙にさせているように思えた。


「恐らく其奴そやつが、今回の事件の黒幕か、または重要参考人であることは間違いないだろうね。袋井くんの恋愛線や、私達をチャームで操ったのも、その人物かもしれない」

「そうでしょうか?」

「なんだい? 袋井くんは、他に心当たりがあるのかい?」

「いえ、その……」


 口を濁し、それ以上の言葉を袋井は紡げなかった。


(それはどこか違う。ツキという人物が、深く関わっていることは確かだろうけど、僕の恋愛線については、きっと別の――)


 情報屋の下妻笹緖、生徒会長の神楽坂茜から伝えられた情報から推理するに、恐らく土岐野世那の妹が深く関わっていることだろう。

 袋井は、未だそのことを世那に告げられず、世那の針を刺すような視線に晒され続けていた。


「かく言う、私も、実は納得していないんだけどね」


 緊張の糸を解すように、怠惰はいつものダラけた調子の声を発した。


「どういうことですか?」

「私にもちょっと、犯人というか、心を操る人物に心当たりがあるんだよ。だけど、其奴そやつとツキという言葉がどうも繋がらない。それに、其奴そやつはすでに死んでいる筈なんだよ。私より先にはぐれ者になって、死んだと聞かされていたんだが……」


 羊のマスコットが乗るベレー帽を脱いで、頭を掻いた。怠惰は苦虫を噛み潰す表情をした。


「それにだ。『what-if games』には、特別な意訳も存在する。――『ゲームの形をとった未来予想実験』なんて言葉がね」

「未来予想――実験?」

「特定の未来を想定して、それにどう対処するか考えるという事さ。占いとよく似ている。占いが言い当てた『未来』を変えるため、『今』という『過去』が、行動を変えるのさ。もっと言い換えるならば、『未来』が『過去』を作り変えるとも言える。『未来』を知らなければ、絶対取らなかった行動を『今=過去』が行うんだからね。律花ちゃんという『未来』を知らなければ、絶対取らなかった行動を私達はすでに『今=過去』で、行なってしまっている。私達もすでに、ツキなる人物の実験に乗せられているんだよ。ツキなる人物が、すべてを知っている未来人ならば、私達のこの行動すらも織り込み済みかも知れない。誰が犯人なのか、読み違えるように操られているのではないだろうか?」


 怠惰はあきらめ顔でため息を付いた。

 隣で、律花が苦しむように首を押さえ、うずくまっている。

 袋井は、肩に手を伸ばし「大丈夫?」と声をかけると、コクリと頷いた。


「大丈夫。それより、アタシ達のせいで、未来が変わるの?」

「恐らく」

「そっか……よかった。きっといいことだよ、それは。未来が変わるなら、ずっと良い事だよ」


 小刻みに震える律花に、袋井は恐ろしさを感じてしまう。


(『未来』が『過去』を変える。でも、変わった『過去』がちゃんと『未来』と繋がるんだろうか? 未来から来た子供たちは、自分たちの存在を掛けて『今=過去』に来ている。でも、彼らの世界はすでに確定しているわけで、過去に来てわざわざ自分たちの存在を危うくする必要があるのだろうか? わざわざ過去に来たために、自分と同じ存在に遭遇し、危険な立場に立たされている。なぜ、わざわざ危険を犯してまで、過去に来なくてはいけなかったのだろう?)


 目に涙を溜めながらも律花は必死に泣くまいと、自身の感情と戦っていた。

 怠惰が、律花の小さな頭を胸に抱きしめた。

 それでも、律花は鳴き声を上げず、じっと押し黙ったままでいた。

 子供たちがみな幸せになる方法。

 ツキなる人物が、その方法を知っているのならば、この試練は一体なんの為にあるのだろうか。


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※この作品は出版デビューをかけたコンテスト
『エリュシオンライトノベルコンテスト』の最終選考作品です。
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