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What-if games?  作者: 岡田播磨
1章 PROLOGUE 失恋。ダメ、絶対!
16/39

第十五話

15


「どこに行ったかわかる!?」

「……わからない」

「恋音さんの元居た寮はどこなの!?」

「……知らないんだ。そんな話し、しなかった――」

「もう! 何やってんのよ! お父さんの大事な人になるかもしれない人なんだよ!」


 二人に連れられ、袋井は島内を彷徨っていた。

 宛もなく、行くべき場所も定まらなかった。

 恋愛線の力が使えたなら、矢印が教えてくれたかもしれない。

 だが、袋井と恋音を繋ぐ恋愛線はすでに消滅している。

 自力で探すほかないのだった。


「嘘なの……こんなこと。何かの間違えなの……」


 玲那は怯えた表情で、袋井にすがり付いていた。

 袋井自身にも、理由がわからない。

 三人をはなっから、自分の子供となど思っていなかった。

 考えたくなかったが、彼らは何かしら事情を抱えた壊れた子供たちであった方が、袋井には都合が良かった。

 未来の出来事に信憑性など必要なかったのだ。


(どこだ……どこにいる……頼むから、もう一度話だけでもさせてくれ――)


 島内の繁華街を歩き、恋音らしき人物を探し続けるも、その姿は一向に見られなかった。


「あれ? 袋井さん。珍しいところでお会いしましたね」


 声に振り向くと、そこには黄昏ひりょが立っていた。


「ああ、お子さんたちも一緒なんだ。仲良さそうで、何よりです」


 あの場にいた黄昏は、子供達の話を冗談として受け取っている。

 それでも子供たちの保護を申し出たのを聞き、黄昏は袋井の懐深さに感銘を受けていた。


「黄昏君! 月乃宮さんを見なかったかい?」

「月乃宮さんですか? だったら、さっきおみかけしましたよ」

「本当かい!? いったい何処で?」

「学園の中庭ですね。ベンチに座って泣いていました。――ちょっと! まさか、月乃宮さんを泣かせたの、袋井さんですか!? 少しは見直したのに! どういうことですか、袋井さん!?」


 ムッとする黄昏に、袋井は「事情はいずれ」とお茶を濁して、走りだした。

 娘たちも袋井に付いて行き、三人は目を三角にした黄昏に見送られた。


◇◆◇


 中庭のベンチには、膝を抱え丸くなる恋音の姿がある。

 丁寧に整備された芝生はまだ青さが残り、風に冷たさを感じ始めていた恋音の瞳に、月の光が反射していた。


「……月乃宮さん」


 ビクッと縮こまった恋音は、目の前に現れた袋井を視界に捉えた。

 恋音は小さくなるだけで、逃げ出しはしなかった。

 袋井が中庭に来た時点から、恋音は動きを見せない。

 膝を抱え、全身を閉じ込めるように身を縮め続けている。


「謝りたいんだ……月乃宮さんに嫌な思いをさせてしまっていたのなら、直したいと思う。どうしたら良いか、教えてほしい」


 恋音は、袋井の言葉を聞くと更に膝を強く抱え、その間に顔を隠してしまった。

 袋井はそれ以上何も言えず、その場に立ち尽くしてしまった。


「恋音さん!」


 動けずにいた二人を見かねて、律花が近づいてきた。

 恋音は目を丸くして、律花と――しがみついている玲那を見た。


「ごめんなさい! 恋音さんのサラシを勝手に使ったのアタシなの! 手頃なものがなかったから、拾ったのを勝手に使ってしまって……。大事なものだって、知らなかったの! 本当にごめんなさい!」


 律花は90度近いお辞儀をして許しを請い、つられて玲那も頭を下げていた。

 二人の姿を見た恋音は、怯えた微笑みを返していた。

 似たような表情を袋井にも送った後、恋音はおずおずと静かな声を出した。


「……違うんです……私が逃げ出したのは……勝手に物を使われたからじゃなくて……自分の醜い姿を見せてしまって……袋井さんや……他の皆さんに……避けられるのが怖かったから……私と一緒にいて……嫌な思いをしてもらいたくなかったから……私が……消えたかった……だけなんです……」


 それだけ言うと、恋音はまた縮こまってしまった。

 袋井は、お構いなし、恋音の手を掴んでいた。


「それは違う! 僕は、月乃宮さんと一緒に居て嫌な思いなんてしてない! 月乃宮さんを誘ったのは、僕なんだ! 僕が月乃宮さんを避けるはずない! 側にいたい! 嫌な思いなんて、絶対にさせない!」


 言い切ってから、袋井の頭に疑問符が浮かんだ。

 恋音の言い分をただ否定したつもりであったが、取り方によっては完全に愛の告白であった。

 袋井が固まっているのは当然ながら、周り三人も突然の愛の告白に硬直していた。

 恋音の頭が――沸騰した。



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※この作品は出版デビューをかけたコンテスト
『エリュシオンライトノベルコンテスト』の最終選考作品です。
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