精霊と妖精の違い
ああ、周りとの温度差に泣きそう。
人間ってあまりにも困ると動けなくなるんだね。あんまり知らなくていいというか、実地で知りたくなかった情報だわ。
これはどうしたらいいの? というより妖精が自由すぎる。
こっちがいろんな意味で固まってるってのにまたワタシの上を飛んだり跳ねたりと忙しないと言うか、ここまで我関せずを貫けるってすごいな。
『サルビア、何かそこにいるの?』
母が不思議そうに聞いてくるけどこれは正直に話してもいいのかな?
でも不気味だって思われない?
『サルビア、何が見えるのだ? 皆笑わないから何が見えるのか我らに教えてはくれないだろうか』
ワタシが返答することを躊躇っているのを感じたキャラウェイが気遣ってくれる。
流石にここまで注目されてしまっていたら言わないっていう選択肢は駄目だよね……。
ああ、でも何て説明したらいいの? これ。
だってキャラウェイが真面目な雰囲気で話をしているのに、その上を全身タイツを着た妖精がキャラウェイの出す蔓に向かってファイティングポーズの真似事してるなんて誰が信じるよ。
てか、これは笑うとこ?
『……えっと、小さい羽根をもったちっさい人たちが空を飛んでいるというか、何というか……。因みにだけど、皆にはこの人たち見えないの?』
駄目もとで周りを見回して確認のため聞いてみるけど、兄達には不思議な顔をして首を傾げられた。
『そうだな。ここには我と其方ら親子、それに其方らと同じ一族の者しかこの目で見ることは適わないが……、いや、だがここには他に比べ魔力が異様に密集しているのは感じられる。それを踏まえて考えるのであれば其方の目に見えているというのはこの地に創成の古より存在すると言われる精霊族かもしれぬ』
『精霊? 妖精族とは違うの?』
ワタシ達の話を聞いているのかいないのか。ふよふよ飛び回る親父たちを盗み見て種族のことを確認する。
『ああ。妖精族は森の奥深くで自然の中から自然に生まれる者たちの種族を指す。違いははっきりとは分かっていないが概ね目で確認できるものが妖精族。目で確認出来ぬ者が精霊族とされているな』
『え? でも目に見えないならどうやって精霊族がいることを確認したの?』
『言い伝えでは神のみがその姿を目に映し、他の生き物が精霊を確認するときは精霊の悪戯などで存在を把握していると言われている。だが精霊がいる場所は栄え、精霊を蔑ろにすれば不吉なことが起こるとも言い伝えられているな』
何やらスケールがとてつもなくデカいことになった気がするけど、ワタシはふるふると首を振ってそれを不定する。だって、この変てこな服着たちっこいオヤジが伝説の生き物?
いやいやいや。どう考えても伝説は伝説でも『変態』な伝説でしょ。
再度確認のため妖精オヤジ改め、精霊オヤジに視線を向ける。
……って何であんたはそんなドヤ顔してるの。
地味にイラッてくるな。尻尾で張り倒すよ?
それに何で周りの精霊も同じようにドヤ顔してんのさ。もしかしてそのドヤ顔、精霊族の標準装備なわけ?
よし。そこに一列に並べ。何かすっごいむかつくから尻尾で張り倒してやる。
よく分からない事態に脳が考えることを拒否し始めたのか尻尾をゆらゆら横に振り獲物を狙うように精霊オヤジに視線を向けてしまう。
だけど精霊オヤジもワタシの行動に何かを感じ取ったのか、ドヤ顔を瞬時にひっこめ母の後ろに隠れてしまったため思わずできもしない舌打ちをしてしまう。
あのオヤジ変態のくせに逃げ足だけ早いな。
母のところまで実際の距離はそんなにはないけど、まだよく分かってない周りを無視して追っかけ始めたらそれこそ問答無用で変な子認定される未来しか見えないんだけど。
ワタシが一人内心で葛藤を繰り広げている横でキャラウェイに事の顛末を聞いた兄達が母にその事を話すとその話を静かに聞いていた同属たちが今までの比ではないくらい大きな声でどよめき始めた。
ちょっと耳が痛いくらい声が大きいんだけど、何にそんなに反応してるの?!




