母の姉? 1
やってきました父と母の故郷でもある一族の里……。と、正確には言われた場所。
だけどワタシの眼には右を見ても左を見てもついでに上を見ても綺麗な新緑しか目に映らない。
……と言うよりここに来るまでに通ってきた道と全く景色が変わってないけど本当にここが里? 何というか全く同属の住処があるとは思えないけど、これがこの世界での普通の“里”って言っていいの?
それにワタシが生まれたのは崖の上……、というか崖の途中にあった洞窟を基準にしてたから里もそんな場所にあるもんだと思い込んでたんだけど勘違いだったようだ。
「じゃあこれから里の入り口に入るけど皆離れないようについてきて~。特にサルビアは危ないから里の中で一人で行動しないこと。他の子たちもサルビアのことを守ってあげてね~」
「「「「は~い」」」」
……何故ワタシだけ注意を促されるのか納得いかないうえ。そして何故兄たちは当たり前のように揃って返事してるのさ。
そんなにワタシは弱いって言いたいわけ?
思わず不貞腐れるとウェイに頭を触手で撫でられた。ふふ、優しさが地味に悲しいわ~。
でもそんなにワタシ弱いかな? 確かに肉体戦だと勝てたことがないけど魔法は兄弟の中で一番コントロールが上手いって自負してるんだけど。
「サルビアは魔法のコントロールが上手いけど、体力が圧倒的に少なくてスタミナ不足になる可能性があるから喧嘩を売られてもすぐに逃げるのよ~?」
「……は~い」
まるで心を読んだようなタイミングで注意を促されドキッとする。そんなにワタシの心は読みやすい、というより態度に出てたか。失敗失敗。
「あら~? キャラウェイさんもサルビアのこと守ってくれるんですか~。なら安心ですね、よろしくお願いします~」
一人反省会をしていたら今まで背中にいたウェイがいつの間に移動したのか母の背中にいた。
一体母と何を話しているのか気になるけど、下手に突っつくと更にへこまされることが目に見えてるからスルーする。うん。ワタシは何も見てない聞いてない。よし。
「じゃあそろそろいくけど皆覚悟はいい?」
だけど何で里に行くだけで、仲間に会いに行くだけで覚悟が必要なんだろう? そんなに怖い種族ってこと?
同じ一族に興味はあったけど、危険ならあんまり会いたくないかも……。
あ、やっぱり今更遅い?
背中に戻ってきたウェイとアイコンタクトをしていたら、視界の端に砂埃が映った。……って、砂埃?
ここは森の中。ちょっとくらいでは砂埃なんて立たないはずなのに何かがこっち来てる?
まだ距離があるはずなのに木々をなぎ倒す破壊音が聞こえてくるのとあわせて微かに声みたいなものが聞こえてくる。……んだけど、どんだけの声量があったら可能なのこれ?!
突然のことに一人パニックに陥っていると、スッと兄たちがワタシを守るように周りを囲んでくれた。
ううう。本当、お世話掛けます。
力で参戦は無理だけど魔法で後方支援は頑張ろうと決意を固めていると、声がどんどん近づいてきた。
地響きを立てながら近づいてくる砂埃もとい影。多分生き物だとは思うけど一体何を叫んでるんだろ?
砂埃を立てながら近づいてくる存在に警戒しながらも耳を澄ませていると少し高めの声だということは分かった。
「ち~い~さ~い~の~~~!!」
まだ木々が邪魔をして姿は見えないけど、何となく同じ種族のお仲間なんじゃないかと思う。根拠はないけど、纏う魔力が母たちに似ている気がする。
……ってちょっと待って、まだ二百mは離れてるはずなのにそれでも感じられる魔力って怖すぎなんですけど?!
それにこの声の主はまったく止まる気配を感じさせずにこっちに向かってくるんだけどちゃんと止まるんだよね?!
「あら~? この声って、もしかして姉様かしら~?」
家族が動かないから尻込みしつつもその場にとどまっていたらのんびりした母の声が聞こえてきた。この声の人は母の知り合い? なら大丈夫? なんだよね?
でも全く止まる気配を感じないんだけど?!
『サルビア。前から来る者に悪意などは感じぬが、このままいくと突進されてしまう危険がある故少し魔法壁を張るが許されよ』
「はい。よろしくお願いします!!」
いつの間に母の背中から戻ってきていたのか、ウェイが背中に乗って聞いてきた。
いつ移動したのかとかツッコミ所が多いけど、それよりも今は身の安全のほうが大事だしツッコみは後回しで!!
時速何キロ出してるか分からないけどあのままの速さで突っ込んでこられたら丈夫な兄たちは大丈夫かもしれないけどワタシは吹っ飛ばされる予感しかしないし。
吹っ飛ばされるだけで済めばいいけど大怪我する未来しか想像できないのが笑えないんですけど?!




