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羽交い絞めにされながらもジリジリと近づいてくる黒幕さんは地味に怖いですね。
夢に出てきそうな不気味さですよ。
なので今は未だに笑い続けるエルダーを盾に、ムスカリとギャロに庇ってもらい、それでも視線は黒幕さんから離さず警戒だけはしていようと思います。
『え、あ~、その、何か御用ですか? 用事があるのならできたら早くしてもらってもいいですか? これから家族みんなでお出かけするので……』
話がまったく通じない人と話すのは怖いので、恐る恐るそう問いかけるときらきらした目を向けられました。
うん。まったく話が通じてないどころか何か脳内で自分の都合のいいように変換されている気がするのは気のせいでしょうか……、気のせいだったらいいな。
「私とハニーの結婚のお許しをもらいに行くんですね! それは是非とも私も一緒に……!!」
『誰がサルビアと貴様の結婚を許した』
嬉々として黒幕さんが話し始めたところに、狩に行っていた父がいいタイミングで帰ってきてその続きを遮るように黒幕さんの上に乗って遮りました。
その時黒幕さんを羽交い絞めにしていたクラウ少年が巻き込まれましたが、まあ鍛えてることですし気にしなくても大丈夫ですよね。
「お父さん、もうあの罠を掻い潜ってきたんですか。本当に侮れませんね」
『それはこっちの台詞だ。それに誰がお父さんだ、サルビアは誰にも嫁に出さん』
グルグルと唸りながら黒幕さんに吼える父はいつもの百倍かっこよく見えます。
いつもが残念すぎるともいいますがね!
というより突っ込みはそこだけなんですか。
「そう言ってあの日からハニーと会おうとすると何度も何度も邪魔をして……。そんなにハニーと私が結ばれるのが、仲がいいことが羨ましいんですか!!」
うん。また何か幻聴が聞こえてしまいましたね。
ワタシ疲れてるんでしょうか?
昨日はしっかり寝たと思うんですが……。
『娘はまだ誰とも結ばれてない!!』
「ハニーと私は運命の赤い糸で結ばれているんです!!」
『何だと?!』
何やら黒幕さんの脳内ではワタシと黒幕さんは結ばれてしまっているらしいです。
なんとも恐ろしいことですね。
やっぱりこれは近寄らないのが正解ですね。うん。
『あらあら。みんな準備はできたかしら~?』
一部白熱している雰囲気を物ともせず柔らかい声が入り口から聞こえてきました。
あ、母だ。さっきまで注意してたとのに気がついたらどこか行ってるんですから本当に神出鬼没ですよね。
今までどこ行ってたんでしょう?
『バイモ達が狩ってきた獲物の処理が終わったからそろそろ出かけるわよ~』
目の前で繰り広げられている父と黒幕さんの言いあいなどまったく目に入っていないかのように笑って言います。
うん。再確認するまでも無くやっぱりここで一番最強なのは母ですね。
逆らう予定はまったく無いけど、この先もできる限り母にはやっぱり逆らわないでおこうと思います。




