家族3
そして最後に兄弟。ワタシの兄たちは四人だった。
言ってしまうと何もかもが違う。
まず一番に気づいたのが体格がまったく違うということ。
ワタシ以外の四人は全員男だということを差し引いても、これはもう本当に同じ血を引いているのか疑わしいくらい体格も体力も違いすぎている。
気が付いたきっかけが上に伸し掛かられてすっぽり覆いかぶさられて……。というのが物悲しい気がしなくもないけどそれはもう気にしない。
そして違うことその二。
行動力の違い。
何で目が見えていない期間もお乳を貰う時間しかジッとしていないのさ。
ご飯のときと寝ているとき隣に気配をちゃんと感じるのに、どうしてそれ以外の時間消えるの。まだ人間でいうとハイハイが出来る状態なだけなのにスペック高すぎでしょ。
その度に父が親馬鹿全開な発言をしながら回収してまわって、何度も連れ戻しては逃げられての追いかけっこを延々と繰り返してるのに諦めないって本当にすごいと思う。勿論ワタシは母の傍から離れなかったけどね。
だけど体力が有り余っているからって悪気もなく何度も転がしてくるのはどういった了見よ。
何とかしないことには無傷でいられないある意味でサバイバル生活を送ることになるなんて全く考えてもなかったっていうのに……。
最初のうちは話し合いが大事だと奮闘してみたものの、残念なことに口から出るのは「く~ん」や「きゅ~ん」などの鳴き声。なのでそんな声しか出てこなかったため話し合いを断念した。
まったく相手に言いたいことが伝わらない。それどころか相手のいいように受け取られるのだ。
そして相手に悪気なくダメージを与えられるのだから目も当てられない。
兄弟たちに力の加減などという技術があるわけもなく、何度も何度も力の限りタックルを仕掛けられ、元気に蠢く兄弟たちの毛に埋もれて窒息しそうになったことは一度や二度ではない。
そしてワタシの我慢は限界にきた。
今まではワタシは大人で兄弟は子供だからと考えて勝手に我慢していたのを棚に上げキレたのだ。
今世に新しく生まれ、兄弟と同じ子供なのに何でワタシだけが我慢しなければいけないのかと。
勝手に我慢をして理不尽な怒りを爆発させていた。
兄弟がいつものように体当たりを仕掛けてきたときキレたワタシは初めて力の限り体当たりし返していた。
いや~今考えると凄い恥ずかしいね。
だけどその時は頭に血が上っていて何も考えないで遣り返していた。
最初は皆ビックリしてたけど次の瞬間には何故か嬉しそうに遣り返されて揉みくちゃにされていた。
その時は苛立ちが先に立って兄弟の嬉しそうな姿に気が付かなかったけど、体力が付きへばってた所を兄弟全員にすり寄られてようやく事態が可笑しいことに気が付いた。
「何で怒っていないの?」と。
それどころか嬉しそうに代わる代わる顔中を舐められて意味が分からなくて首を傾げてしまった。理不尽にキレたことを怒られることはあっても嬉しそうにされる意味が分からない。
そんなワタシを見ていった母の言葉に頭を殴られたような衝撃を受けた。
「ふふ。良かったわね。ずっと遊びたいとアプローチしてたかいがあったわね~」
その言葉で大人だからと言っていた馬鹿なワタシはやっと気が付いたのだ。『私』の記憶に囚われすぎて今の家族に知らず一歩引いてしまっていたことを。
それでも何も言わず見守ってくれていた家族の温かさに。
もしもワタシが一歩引いた態度を家族に取られたら嫌だって、そんなことをされたら家族でも嫌いになっていたかもしれない。そんな気持ちをワタシは家族に味あわせていたのだ。
そのことに気が付いてワタシは遠慮することをやめた。
じゃれ付かれればじゃれ返し、どつかれたらどつき返す。
『私』の記憶がなく生まれていたらやっていたであろうことを躊躇わずにやってみたのだ。
そしたら皆怒るどころか嬉しそうに笑ってくれたのだ。
笑ってくれることが嬉しくて、その笑顔にワタシも嬉しくなって自然と笑い返していた。
そしてじゃれてじゃれ付かれているうちにワタシは気が付いた。いや気が付いてしまった、というほうが正しいかもしれない。
『この人たち体力半端なくない?』と。
あと今までワタシが遠慮していた部分に何か思うことがあったのか、控えめにアプローチしていたことを知ってしまった。
何の憂いもなくなった兄弟の枷は外れ今までのじゃれ付きが、タックルがとても可愛いものだったのだと身をもって教えられたのだ。なんて恐ろしい……。
父の尻尾を追いかけることなど序の口で、時に父にじゃれかかった瞬間兄弟の輪に投げ込まれを繰り返しているのだ。
甘噛みからテンションが上がりすぎて本噛みになった兄弟の乱闘に何度巻き込まれたか……。
どうして甘噛みが始まったと同時に安全地帯に逃げようとするワタシがその騒ぎに巻き込まれるのかが分からない。
何度も兄弟の喧嘩というじゃれ合いに参戦させられる日々。父と母は笑っているだけで、というより楽しそうに参戦することもありワタシの警戒心と身体能力が格段に跳ね上がったと思う。
これも種族的なものなのか普通にしているときは何ともないのに、こちらを狙っている雰囲気に敏感に反応するようになってしまった。
そして寝るまでワタシにとって緊迫した時間が続いていく、ワタシの体力などお構いなしに。「体力数値が違いすぎるから!!」と心の中でツッコむワタシの抵抗にも気づかず引きずっていく。
本当にその体力どこから出てくるの、と思うのがワタシの家族たちです。