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スパルタ方式の狼族の魔法の練習に恐々としながら母に連れられお外へ出てきました。
流石に洞窟の中では危ないからということなんですが、数メートル先が崖の下な洞窟の庭です。
あまりワタシにとっての危険度はまったく変わってないと思うのは可笑しいですかね?
『もうサルビアは念話を使えているから同じ要領で使いたい魔法のことを考えれば使えるはずよ』
崖の近くに行きたくなくてなるべく洞窟の側にいようとそればかりに気を取られていたら母が言葉の爆弾を落としました。
それは一体どういうことですか……?
『魔法はね体の中にある力を外に押し出すようなものだと思えばいいわ。自分のやりたいこと、起こしたい事を自分の持っている力で起こすの』
『呪文とかはないのですか?』
『あら呪文なんか使わなくても私たちの力は強いから考えれば大体の魔法は使えるはずよ?』
分かります。
いわゆるチートなんですよね、一族全体が。
だけど考えたら魔法を使えるってどういうことですか。
もしファイアーなんて考えて現実に起こって欲しいなんて思ったら実現するって事ですよね?
ははは、そんな事ないですよね。だってそんなに簡単ならもっと早く魔法が使えてるはずですもんね……。
『あらサルビアはやっぱり飲み込みが早いわね』
『……ぇ?』
冗談半分で思っただけなのに出来てしまったようです。
母に言われて視線の端に映る違和感に恐る恐る横を向くと、そこには三十cmはある火の玉がふよふよと浮かんでいました。
『……ぅそ~』
余りにも簡単に出来てしまった魔法はまったく苦もなく現れ、顎が外れるんじゃないかと思うくらい驚きで口を開けてしまう。
うう、痛い……。
『うん。これくらい綺麗に安定して火の玉を出せるなら後は数をこなして覚えてけばいいわね。もう教えることはないわね』
母が火の玉をじっくり見ていたかと思ったら、そんな事を言われてしまいました。
教えること、もうないんですか。そうですか。
……って、えええ?!
まだ何にも教わってないですよね?!
スパルタも嫌ですけど、丸投げはもっと嫌ですよ!?
この火の玉の消し方とか、魔法が暴走したときの対処法とか、それ以外にも何かいろいろと教えなきゃいけないことって沢山あるものなんじゃないですか?!
『……ぅ、ぇ?』
母の発言に驚きすぎてとっさに言葉が出てこなくなってしまいました。
言いたいことは沢山あるはずなのに驚きのために口を開いては閉じての繰り返ししか出来ません。
『あとは好きなように魔法出してみなさい』
完全な丸投げが確定されてしまいましたっっ!!
いやいやいや。
無理です本当に無理ですよ?!
火の玉は想像しやすかっただけで、ワタシの頭での想像なんて高が知れてますからね?!
それだけでも何とか母に伝えて他の魔法も教えてもらおうと口を開きます。
『……母、ワタシには無理です』
ワタシの言葉に重ねるようにとても大きな音が少し遠くから聞こえてきて、私の言葉をかき消してしまいました。
……って今度は何なんですか!?




