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本能の赴くまま、ギャロの足にガジガジと噛り付いてみたけれど、まったく効果がないどころか微笑ましいものを見るように頭を撫でられてしまいました。
これ以上強く噛むと確実に流血沙汰になりそうなのでこれ以上は強く噛めないのがジレンマです。
「そういえばあの依頼人が二、三日で約束の物を届けるといっていたぞ」
『ああ。そうなんですか?』
「あんまり興味がなさそうだな」
『ええ、まあ。……何というかあの人凄い個性的過ぎるといいますか、気がついたら思わぬことを約束させられてそうといいますか……』
このまま記憶の彼方に忘れ去れるのなら忘れたままでいたかった人物の話題を出されてしまい答える言葉を濁してしまう。
う~ん。あのよく分からない人がここに来るならその間はワタシどこかに遊びにいったら駄目ですかね?
「まあ確かに嬢さんには少し変なところがあったが世界を渡り歩いてる商人らしいから、嬢さんにとってこれから役立つ話を聞かせてもらえると思うぞ?」
耳を伏せて嫌そうな顔をしてしまったからか、ギャロが依頼人のフォローをしています。
確かにこの先もずっとここに入れるわけではなく何時かは巣立ちの日が来ることを考えれば確かに聞いておいて無駄になることはないとも思えます。
だけどあのテンションを常にされていたら気がついたら嫁にさせられてしまいそうですし……。
「そこまでのことはもうないと思うから大丈夫だと思うぞ?」
今まで固まって静かだったクラウ少年が話しに加わってきました。
やっと何かを振り切れたんでしょうか。
それともただ単に睨んでいた父を母が洞窟から追い出したからプレッシャーが激減でもされたんでしょうかね?
『んん、そうだと良いんですが何か諦めることを知らなさそうといいますか……』
「そこは不定できないが家族がいる所で無体を働くことはないだろう」
「それに俺達が護衛についてるから手を出すことは許さないしな」
二人の言葉に確かに、と納得したうえに安心してしまうのは単純でしょうかね?
まあ本人が来た時に考えればいいですよね。うん。
「そういえば俺達に何かいいたいことはあるか?」
『言いたい事ですか?』
「ああ。これから長く一緒にいることになるだろうからこれはしないでほしいとか、してほしい事があるなら遠慮なくいって欲しい」
『してほしいことですか……あ! なら呼び方を嬢さんなんていうのは止めて欲しいです!』
何だかんだとそののまま放置してしまいましたが、嬢さんなどと仰々しく呼ばれるのはむず痒いのでこの機会に止めてもらおうと思います。
「じゃあなんて呼んだらいいとかあるのか?」
クラウ少年が不思議そうに尋ねますがそこまでは考えていませんでした。
そういえばワタシ自分の名前もないんですよね。よく考えなくても。
名前名前……って、どうしましょうね?




