1-37
プロポーズされるのは『私』時代から考えても初めての事なのにまったく感動が起こりませんでした。
というよりも微かに怒りさえ感じてきてしまうのはどうしたらいいんでしょう?
まだ小さいから考えることなんかなかったけど、ワタシも女の子。
やはりプロポーズはとても大切なものだと思うんです。
なのに今、その初めてがサラリと持ってかれたんです。
これが怒らずどこで怒れというのですか。
さてさて、人生初めてのこの屈辱どう晴らしてやりましょうかね。
父に任せるんじゃなく、ここはワタシ直々に罰を与えろという何かからの思し召しなのでしょうか。
生まれてからこんなに長いこと起きていたことがないため疲れているのか思考が少し過激になってしまっているようで、初めて殺気なるものを出してしまった。
ふふふ。
初めては嬉しいのでしょう?
存分に味わってください。絶対後悔させてあげますから。
「……すまないが殺気を収めてくれ流石にまだクラウには耐えられない」
少し危ない方にテンションを上げ過ぎたのか、思わぬところからの苦情が入ってしまいました。
よくよく見ると三人のうちクラウ少年の顔色だけ青に変わっている。
ギャロも少し汗を掻いているし狼族は他の一族に比べて最初から能力が違って、一族的にチートなんですかね?
だけど依頼人の人にはまったく効いてないどころか、更ににこにこしてこちらを見ているからそんなことはないと分かるから自惚れたりはしませんけどね。
『……冗談はさて置いて、ワタシを誘拐する意図は無かったと言うことでいいんですか?』
「冗談ではないんですが、そうですねその意図はないですよ。貴方に会えるのなら会いたかったとは思ってましたが、会えるとは思っていなかったので今とても嬉しいんです」
どうしても話を元に戻したいのかちょいちょい要らない事を挟んでくるけれど、そこはもうそう無視です。
『じゃあ今回の依頼の事はどうするつもりなんです?』
「そうですね。貴方に会わせてくれたので達成でいいですよ」
『本当にいいんですか? ワタシはこのままここにいる気はないですからね?』
「もちろんです。ここに貴方がずっといて同棲してくれれば幸せですが、すぐに会えないもどかしさも二人の恋を育んでくれるスパイスだと思うので、今はこのもどかしい距離を楽しんで将来は同棲を楽しんだ後に結婚をしましょう」
『結婚はしません』
この人の頭の中は残念としか言えないのは確定ですね。
もう気にしない方向でいきましょう。
それが一番疲れないですよね。
それよりもこの人も予想外だということだし、何か美味しいものでも大量に奢らせてもう洞窟に帰りましょう。
きっとそれがこの誘拐騒動を一番平穏な形で納められる最良の道ですしね。
うん。
なんかもう投げやりな気がしないでもないですがそれでもう良いですよね。
それより疲れたから早く帰って寝たいです……。




