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ワタシと依頼人の男の人が見詰め合うことで、何ともいえない無言の空間が出来上がってしまいました。
見詰め合うこと早数分。
ギャロ達もどうしたのかと動けず、無意味な時間だけが流れていきます。
さて、どうしたものですかね……?
「はじめまして狼族のお嬢さん」
『はじめまして……って、あれ?』
「「……?!」」
暫く無言で見詰め合っていたら、依頼人の男の人が今まで無表情だったのが嘘みたいににっこり笑顔で挨拶されました。
けど、今この人ワタシに向かって狼族って言いました……?
え? ということはワタシの種族分かってて誘拐を企てたって事です……よね?
「ちょっと待ってもらいたい……。その言い方だとこの腕にいるのが狼族と分かって依頼したと受け取れる。我々を騙したということか」
今までよりも硬い表情と声でギャロが言うと、クラウ少年が腰に差していた剣に手を掛ける音が聞こえてくる。
それと一緒にギャロも一歩後ろに下がり警戒態勢に入るけれど、男の人はそれさえも楽しいのか更に笑みを深めています。
これはもうこの人が黒幕で確定、ですかね……?
「いいえ。私は別に騙していませんよ?」
「なっ?! なら何でこいつが狼族だって分かるんだよ!!」
「それは見た目がそのまま狼族ですから」
「だから俺達に依頼したのはラクレスの子供だったのに何で狼族に何も言わないんだっていってるんだ!」
「別に私はラクレスの子とは言ってませんよ?」
男の人に食って掛かるクラウ少年の言葉にまったく悪びれることなく言い返す依頼人。
その姿は嘘などついていないと言わんばかりに堂々としたものです。
はて?
これは一体どういうことでしょう?
この人自分の言葉に嘘をついてないように見えるというか、正当性に自信があるように見えるのですが……。
だけど狼族って知ってるっぽいし、まず依頼内容が書いてある書面の内容を確認しない事には何ともいえないのですがどうしたらいいですかね?
『ギャロさん。ギャロさん』
「ん?」
『ワタシに依頼の内容が書いてある紙を見せてもらいたいんですが、見せてもらってもいいですか?』
依頼人の男の人とクラウ少年が言葉の応酬を始めてしまう。
クラウ少年は単純なのか、カッとなってどんどん熱くなっていっている。
これは終わるまでが長そうなので、ギャロにそうお願いしてみました。
「分かったちょっと待ってくれ」
そう言ってギャロは机に近づいて紙をとると、ワタシの前に差し出してくれるのですが、残念ながら読めないので呼んでもらうようにお願いをしました。
さてさて少しでも何か分かればいいと思うのですが……。
一体どっちが本当のことを言ってるんでしょうね?




