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森から出て暫くは父に銜えられたままトコトコ歩いていたけれど、そろそろ町が近くなってきたので父には離れて行動してもらうことになりました。
その時子供のように嫌だと駄々を捏ねられたり、捨てられた子犬のようなうるうる目で見られて抵抗されたなんてきっと白昼夢ですよね。
ワタシがギャロの腕に移動しようとしたらギャロの足をギリギリと全体重をかけるように踏みつけていたのも気のせいですよ。
うん。親バカとはいったって、そこまで何てことありませんよ、きっと。
というよりそう思わないと父を尊敬することが出来なくなりそうなので、心の平穏のためにもそう思っておこうと思います。
「そういえば町に入る前にリュックに入っておくか? それともこのまま腕に抱いてたほうがいいかどちらにする?」
『そうですね、何も見えないと対処できそうにないので、このまま腕に抱いて運んでもらってもいいですか?』
やっと不安定な体制から抜け出したのに又身動きが出来ない格好になるのはいやなので抱き上げてくれたギャロにお願いした。
後数メートル先に町の入り口があるのでギャロは小声で囁きかけるように話してるけど、今世の体の五感は随分優秀なのかはっきりと聞き取ることが出来る。
町のいたる所から生活に係わる匂いが嗅ぎ分けられ、その中にパンのいい匂いやお肉を焼いたような匂いなどが漂ってきて、しっかりご飯を食べてきたのに少しお腹がすいてきてしまった。
取りあえず全部終わったら何かご褒美に買ってもらおうと思います。
美味しそうな匂い釣られ、依頼人の件が片付いた後に思いを馳せているうちに町の中に入ってしまった。
町の中は活気がありいろいろな人が忙しそうに歩き回っている。
その中に顔見知りの人たちがいるのか、軽い挨拶を交わしている二人はちょこちょこ立ち止まってる。
なので、その間に町中をきょろきょろと観察して迷子にならないように地理を把握することにします。
町並みはそこまで華美ではなく木製作りのカントリーハウスに近いものがある。
屋根は赤や緑などに塗っているものもあって見ているだけで面白いです。
だけど所々ドアに絵が描いてある板が掛けられているのはお店なんでしょうか?
たくさん絵が描かれた板の掛かった建物がずらっと並んでいます。
剣が描かれた板に盾の絵、ベットのような絵にあっちはワインの瓶っぽいものとグラスの絵ですかね?
いろいろな絵が描かれいるのを見ているだけでも楽しくてギャロの腕の中だということも気にすることなく尻尾を振ってしまいます。
ゆらゆら尻尾を揺らしながら周りを見回していると、ワタシに気がついた方々がチラチラこちらを気にするように見てくるので、自分で出来る精一杯で愛想を振りまいてみました。
うんうん。
概ね女性や子供達には受けがいいようです。
これはもうちょっと奮発して愛想の大判振る舞いをしたほうがいいでしょうかね?
にこにことこちらを見てくる町の住人達の姿に悦に入っていると、今まで他の冒険者っぽい人と話し込んでいたクラウ少年と目が合った。
……少年よ何か言いたい事でもあるのですか?
そんな胡散臭そうな物を見るような顔をこっちに向けて。
……何で目が合った瞬間に顔を背けるんですか。
何か文句でもあるみたいですね。
喧嘩を売っているなら喜んで買いますよ?




