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さて今ワタシの目に信じられない光景が飛び込んできてます。
なんで洞窟を出たら崖なんだろうビックリダネ。
アハハ……ってちょ~高いんですけど?! 何これ?!
ワタシたちが今までいた洞窟の寝床は切り立った崖にあったみたいだ。
外から見てだいたい1mくらい外に出っ張った足場があり、その奥にねぐらにしていた洞窟がポカッリ穴を開けている。
そしてその足場にいるワタシたちの目の前というか眼下というか、目に飛び込んできたのは一面の緑、緑、緑。
『広大な森』まさに其れが一番しっくりくる森が目に飛び込んできた。
確実に目に見える緑までの距離が高層ビル五十階建ての屋上から地上を見下ろしているくらい下にある……。
思わず口をパカッと開いてその景色に釘付けになっていると、首の後ろから小刻みの振動が伝わってきた。
何で首からと思ったお嬢さん、思い出してください数分前のワタシの事を。
ええ、そうなんです。
あれからずっと父に首根っこを銜えられて移動しております。
ちょっ?! 父よいい加減下ろして?!
「ふふ。オチビちゃんったら可愛い目が零れ落ちそうよ?」
『今からそんなに驚いてたらこの後がもたないぞ?』
母が軽やかに笑う姿はやっぱり可愛いなあ、なんて……とそこじゃない。父は今ワタシを銜えてるのに何で喋れるの? やっぱり声帯が特殊なの?!
父の声帯が気になって父の声帯が見る事はできないかと後ろへチラチラ視線を向けていると、視線の端に何かおかしな光景が写りこんだ。
……あれ? 狼って空を飛べましたっけ?
思わず心の中でツッミを入れてしまったけど、兄達がぷかぷか空に浮いてるんですが狼は空飛べないですよね?
なんで狼が空飛んでるんだろ? っというよりぷかぷか空に浮くもんでしたっけ?
なんて現実についていけずまたもやワタシが口をパカッと開けて呆然としているのも気にせず兄達は楽しそうに空を飛んでいる。
というよりも空を泳いでるように見える。
よくよく観察してみると、母が傍で見て時たま尻尾を振っているのにあわせて兄たちが一纏めに動いてるからきっと超能力とかそんな感じのものなのかもしれない。
『さて、今から下へ降りるから口はしっかり閉じておきなさい、舌を噛みたくなければね』
銜えられているためよく見えないけれど、きっと今は楽しそうに笑っている事がわかる声音で父はそう言うと、一気に足場の外へと駆けていった。
……って父~~?! 何してんですか?!
「きゃぅ~~んっっ?!(落ちる~~?!)」
『はは何言ってるんだ。さっき他の子たちが浮いてたのを見てただろう?』
「わぅ……(確かに)」
慌てるワタシにまた父が優しくなだめてくれ、まだ心臓がどきどきするけど落ち着いてきた。
だけどどういう原理で浮いてるんだろ……?
「きゅ~ん?(父~何で今浮いてるんですか?)」
『ん? 今浮いてるのは魔法だぞ』
驚きです。父に一発で言いたい事が伝わった事もそうだけど、この世界には魔法が存在することに驚きが隠せません。
薄々は異世界・転生ときたら魔法でしょなんて思ってたら、本当に魔法がありました。
この浮いてるのも魔法と言う事は風魔法的なものなのでしょうか?
あれ? でも魔法で浮かせることができるならワタシ銜えられなくてもよくない……?
「わう~?(父~ワタシ降りちゃだめなの~?)」
『う~ん、離してもいいけど小さすぎて下手すると風の勢いに乗せられて飛ばされるかもしれないんだが……それでもいいなら?』
「くぅ~ん(やっぱりまだ早いみたいだからそのままでお願いします~)」
飛ばされるってなんですかね。
まだまだ見えるだけども半分くらいしか降りてないし、森の中に入ってからもどのくらいの高さがあるか分からないから今落ちたら絶対助からない自信があるよ。
安全第一でお願いします。
……うう。はやく大きくなってやる。
******
父に銜えられるままとはいえ……、いや銜えられているからこそ初めての飛行はジェットコースターなんて目じゃないくらいスリル満点だった。
なんで飛びながら延々と首を横に振るのですか父よ。
胃がシャッフルされて気持ち悪くなる上にいつ落ちるかって心配でまったく外の景色の感動に浸っている暇が無かった。
……ああ数刻ぶりの地面よ、こんにちわ。
やっぱり君がいるのといないのでは安心感が全然違う事を今学んできたよ、ううう。
「ほら地面にじゃれてないでこっちにいらっしゃい」
父におろしてもらった後、短い時間とはいえだけれど改めて地面の偉大さを知りその気持ちのままに地面でごろごろしていたら母に首を銜えられ、兄達のもとへと連れて行かれた。
ちなみに兄達は今も一箇所に纏めて浮かされていたりする。
予想通りというか何というか、地面に降りたと同時に散りじりに走り出そうとした兄達は一瞬で母の魔法で浮かべられた。
さて母に首を銜えられて移動させられるのと、どっちがましなのか。
「今日は散歩のついでに軽く狩も教えるからちゃんと覚えるんだぞ」
母に連れて行かれ兄達のもとに行き下ろしてもらうと同時に父が軽い口調で言ってきた。
……あれ? 狩って散歩のついでに教えられるものですっけ?
「まずここの森の、この花の匂いはよく覚えておきなさいね。迷子になったらこの匂いを頼りにすると迷わずに戻ってこれるから忘れちゃだめよ~」
「くぅ~?(何この花?)」
母が父の言葉に続き言い示したのは木々の間にポツンと咲いている一輪の花だった。
ここら辺いったいは上から見た時想像したとおり木々が沢山生えている。
地に下りて気づいたのはこの辺りいったいの木々はとてもでかいという事だった。
ワタシがまだ子供で小さいという事を差し引いてもでかいと思う。
父と母も軽くワタシの十倍以上はあると思うけど、その両親でさえ小さく見えてしまうのだからその大きさはどれだけなのか想像もできない。
だけどでかい木々が生えているために今いるこの場所が薄暗いかって言うとそうでもなくて、それどころか木陰と日差しのバランスがいい感じでぽかぽかしてて気持ちがいい。
一本の木がとてつもなくでかいから、木が密集する事も無くて風通しも凄くいいし、人の手が入っていないため草花が当たり一面生い茂っていてごろごろするのがとても気持ちいいだろうなと思う。
そんな中にポツンと咲いてる一輪の花。
この爽やかな場所に一際存在感を醸し出している花が咲いているんだけど、何というか存在感がありすぎる。
強くは無いけど崖の近くという事もあって常に風が吹いているのに、この花はそんな風の流れなんか御構い無しでゆらゆらと自分の好きなように動き、その姿は体全体で踊りを踊っているかのようだ。
茎の部分は街角で見かけるタンポポのようにすっと根を張り黄緑色の茎が伸びている。
そしてその茎を追って上へ上へ視線を向けていくと鬣のような、七色の花弁を纏わせニヒルな笑みを浮かべる顔を見る事ができる。
……え、これって花の部類に入れていいものなの?
顔がある時点でもう植物とはいえないような、これが異世界とのギャップって奴ですか?
又もや口を開けて驚いていると、何故か花と目が合った。
お座りの体制で話を聞いていたワタシを下から上へと順に、まるで値踏みするかのように見つめてくる花。
そして一通り値踏みし終わったのかその花はワタシの顔を見てフッと笑った。
笑った……、というか笑われた?!
「あらあらオチビちゃんったらあっただけで花に気に入られるなんて凄いわね~」
ええ?! 今のって気に入られたの?!
すっごい鼻で笑われた感じが馬鹿にされたとしか思いませんでしたよ?!
「この花は大陸のどこにでも咲く繁殖力があるんだけど、自分の気にいった場所にしか咲かない珍しい花でもあるのよ~。縄張り意識がとても強いからこの花がひとつ咲いていたらその近くには同じ種類の花は咲かないの。繁殖の時期だけは番になる花を探すみたいだけど、それ以外で同じ花が縄張りに入ったときの縄張り争いは、下手をすると地形が変わってしまうからオチビちゃんたちも縄張り争いをしてるこの花を見かけたらすぐに走って安全な所まで逃げなきゃだめよ~。あとこの花に戦いを挑みたいなら気に入られてからにしないと大怪我するから、ちゃんと仲良くなってから手合わせしてもらってね~?」
母がのほほんと説明してくれたけど、植物の縄張り争いって何ですか?
縄張り争いで地形が変わるってどれだけ壮絶なんですか。
それに気に入ったら手合わせって、どういうこと?
花って手合わせするものなの?!
うう、今からこの世界を知る事が怖くなりそうです……。
****
驚くワタシをおいて、どんどん花の説明をする母の説明を纏めるとこんな感じになった。
独自の魔法で好きな場所に移動する事ができる。
縄張り意識が強く、同属や自分の嫌いなものが自分の縄張りに入ると問答無用で排除にかかる。
気に入られると様々な手助けをしてくれる。
七色の花弁は色によって様々な効果をもたらす薬草の一種でもある。
軽く纏めるとこんな感じになるらしいけどこの花とてつもなく気難しい……らしい。
まあ奇妙に踊る植物にしか見えないんだけど、花の中心にある顔はキリリとして渋い顔はカッコいいと思える。
だけど、ニヒルな笑顔がその渋さ全てを台無しにしている感じだ。
この花、薬草になる花弁がとても希少らしく、その花弁を求めて常に多種族に狩の対象にされるらしいけど戦う術を持っているこの花が狩られることは少ないらしい。
そのかわりこの花と仲良くなれば花弁をくれる事もあるそうで、この花の花弁の効能の噂が後を立たず狙われるとの事……。
その話を聞いて少しだけこの花が不憫に思ったけど、その考えもニヒルな笑顔でまるで小馬鹿にするようにワタシのことを見てくる姿に瞬時に消えうせた。
「じゃあ今日は近くの池まで行くからちゃんと後についてきてね~。あと勝手にどこか行ったりしたらお仕置きするから勝手に行動しちゃだめよ~」
未だに花と見詰め合って身動きできずにいたワタシだったけど、母の言葉にやっと今日の目的を思い出した。
でもお仕置きってなにするんですか母よ……。
「少し先になるから疲れたらちゃんと言うんだぞ?」
「じゃあ行きますよ~」
父が軽い注意を促した後、母の先導のもと森の中を歩き始める事になった。
兄たちも母から注意を聞いたすぐ後だからか地に下ろされた後、きょろきょろと周りを見回しながらだけどおとなしく歩き始めている。
なのでワタシもそのすぐ後を追うように歩き始めたんだけど、何故かさっき母たちに説明をされたばかりの花が当たり前のようにワタシの横を歩いて(……)ついてきた。
移動するとは聞いていたけど魔法があるから魔法を使うと勘違いしてたけど根っこが足なんですか……。
これはツッコムところ?
それとも花が歩いくのは異世界では標準装備なの? え、いったいどっち?!
「花は好きな時に好きなところへ行くものだから、気にせず好きにさせてあげなさい」
花のことがどうしても気になってチラチラと隣を何度も見ていると、父に苦笑と共に注意されてしまった。
花は花でくるくると奇妙なステップを踏みながら、時々バレーダンサーのように優雅に飛んでいる。
だけどその姿は可愛いというよりも渋い顔とあわさって少しシュールとしか言いようが無い。
「くう~(一緒に行くの?)」
まだ言葉はきちんと習っていないため鳴き声だけど、何も言わずに黙々と一緒に歩くのも気詰まりすると思い話しかけてみた。
返事はまったく期待していなかったけど花は首を縦に振るようなしぐさをして返事をくれる。
これは肯定なのかな?
花は話すことができないみたいだけど会話をしてくれる事が嬉しくて、ワタシの気分は初めての散歩と相俟ってどんどん良くなっていく。
気分と比例してワタシの尻尾が左右にゆらゆ~らと揺れてしまうくらい気を抜いていた。
気分が上がると勝手に反応してしまうのは仕方ない事だとはいえ、ワタシの頭はすっかり忘れていたのだ。
父にも遠慮なく突進していくくらい元気が有り余っている兄達が近くにいる事を。
いつも嫌というほど揉みくちゃにされて気を抜いたら、もふもふの毛に埋められる末路が待っているというのに。
驚く事や気になることがあって今まで静かだっただけで、今は隣に不思議な花もいる。
兄たちがそんな状況で黙っているわけなんかないのにワタシは忘れていたのだ。
「「「わうっ!(ちっこいの、何つれてるの~!)」」」
母の近くをうろちょろと行ったり来たりしていた兄たちは、ワタシが少し離れて歩いている事に今気づいたのか勢いよく前方から突進してきた。
右隣には花がいて、左はワタシの体よりもでかい木の幹。
そして後ろには父がいて、とっさにどこに逃げるか悩んでしまったため避け遅れてしまいワタシは兄たちに埋もれてしまう。
ちょっ?! だれだワタシの尻尾をじゃれつくついでに噛み付いてきた奴!!
「わうっっ!!(ちょっ、離れて!!)」
上から横からと好き勝手に体当たりをしてくる兄たちをどかそうとしくはくしていると、横からプププッというスイカの種を飛ばすような音が聞こえてきた。
それと同時に上に乗っていた兄の重みが消えた。
潰されそうになっていたため下を向いていたワタシは、きょろきょろと周りを見回してしまう。
右隣にはさっきと変わらず花がいる。
何故か勝利のダンスを踊っているといわんばかりに軽快なステップでダンスを踊っている。
そして左隣には幹の下に3番目の兄がぽかんとした顔をして転がっていた。
何が起こったかわからなくてビックリしている兄の周りには黒くて丸い粒が散乱している。
これは花の種……?
この状況から察するに、ワタシにじゃれ付いてきた兄に向けて花が種を飛ばして助け出してくれた……のかな?
そう考えればよく分からない勝利のダンスにも納得できるし。
その後何が起こったかわかった兄は復活すると同時に花に襲い掛かっていった。
だけどその攻撃の全てかわされてニヒルな笑みを浮かべられている。
他の兄たちも同じように楽しそうに花に戦いを挑んでいるけど、何というか狼と花の戦いはすごい絵図らだとだけ伝えておこうと思う。
****
さてやっとやってきました今日の一つ目の目的でもある池。
目の前に広がるのはエメラルドグリーンの色。
きらきらと太陽の光に反射されている光景は池というよりも湖の方があってるくらい大きい。
この場所まで来る間にも花に突進していた兄たちは道中延々と花に挑んでは返り討ちにあっていた。
花が手加減してくれているのが分かるからワタシも気になってチラチラその様子を見ながら移動していると、何故かそのとばっちりで同じように揉みくちゃになりながら移動する事になってしまったのは計算外だった……。
けど、今は兄たちも湖の周りを興味深そうに駆け回ってるし、花は花で気持ちよさそうに湖に根(足?)をつけてリラックスしているように見える。
両親も今は皆が見える場所でやったりとリラックスした様子で座っているからここで少し休憩かと思い、ワタシも初めての外の世界を見て回ろうと思い周りを見回した。
今はもう走る事も飛び跳ねる事も苦もなくできるからあまり遠くへ行かなければ大丈夫だろうと思って、湖の周りをぐるりと回ってみる事にして歩き出す。
兄たちは今も湖のところで追いかけっこに忙しいみたいだし、声をかけなくていいよね。
という事で初めてのお使いならぬ、初めての冒険に言ってみようと思います!
―――
周りの景色が珍しくてふらふらと見て回っていると、今まで見た事も無い草花に視線はくぎ付けで、少しだけ……ほんと~に少しだけ気が抜けていた。
そしたら何かつかまりました。
あはは、これがラノベとかでよくある急展開ってやつですか?
父や母達と少し距離ができてたとはいえ、湖の周りからまったく離れていないのに捕まるワタシの危機感ってどうなってるんだろう。
……うう、ちょっと落ち込むなあ。
まあいつまでも落ち込んでてもしかたないから隙を見てワタシを捕まえた人の顔でも拝んでおこう。
周りを見回して歩いてる時に網で捕獲されたんだけど、凄い慌ててたのか網をかけられた時も毛が絡まってしまうくらい雑だった恨みは忘れない。
それに周りにばれないようになのか麻の袋みたいなものに入れるときも手加減もなく体をぎゅうぎゅう押し込んでくるから凄く痛かったし毛が抜けちゃったらどうしてくれる。
突然捕まり驚いたけど何よりもまず思ったのが『これはもうきっちりお返しをしないといけない』ということだった。
これは我が家の教育の賜物なのか、怖いという感情よりもどうやって報復をするか考えてしまうなんて『私』時代なら絶対ありえなかっただろう。
そんな自分の思考に、少し過激になってしまったのかとも思って落ち込みそうになるけど、その考え方のおかげでパニックにならないんだからいいことなのかな?
はっ!! よく考えるともしかしてこれは初めての狩にもってこいなのでは?!
父も狩をするって言ってたし、問題ない。うん、問題ない。
……だから母のお仕置きは無い、よね?
胸が張り裂けそうなくらいドキドキしてるのはきっと初めての狩のせいだよね?!
と、思わず取り乱しちゃったけどこれは家に帰ってから考えよう。うん。
さて取りあえず狩をするなら相手のことをちゃんと知るところかな。
まあ捕獲も雑なうえに今も慌てて袋を持っているだろう人物が走るたびに体がぶつかって地味に痛いんだけど、まったく気にした様子が無いことも考えるとすごい追い詰められていると思われる。
それに袋の向こうから聞こえてくる話し声と足音の草の踏みしめる音を聞く限り人数は二人って所かな?
まあこんな袋の中で考えてても仕方ないし、状況確認は大事だと思うからまずは袋から顔を出して確認でもしようかな。
「きゅ~ん♪(じゃあさくっといきますか♪)」
最近立派に伸びてきた爪をシャキンと出して、開けても落ちないと思われる場所に遠慮なく爪を入れて頭が出るだけの穴を開ける。
ビリビリといい音を立てて袋が敗れたので、遠慮なく頭を出したら知らない人の顔が目の前にありました。
……貴方誰ですか?
あ、誘拐犯さんですよね。って顔近くないですか?!
******
袋から顔を出した瞬間見たのはトカゲ顔の人でした。
「わう~んっ(ナンデヤネン)」
思わず似非関西弁でツッミを入れてしまったけど、目の前の誘拐犯もといトカゲの顔をした人はザ・冒険者な装備を身につけている。
あまり装備にかける金銭的な余力が無いのか、それともそれだけ自信があるのか肩当と胸当ては金属ではなく皮製。
右手には多分刃渡り五十cmはあるだろうナイフが握られ、そのナイフを収めるための鞘が腰のベルトのような物にとめられている。
肌は『私』が小さいころ見かけたトカゲの肌よりも硬そうなうろこ肌は焦げた緑というか、深緑というかそんな色で目は薄い水色、かな?
そんなトカゲ人間の表情はまったく動かない。
そのためよく分からないけど、くりくりした目をぱちくり瞬くだけで逸らす気配が無いことからも驚いている……気がする。
うん、よく分からないけど。
だけどトカゲの目って意外と可愛いんだね~。
『私』は大人になってからはまったくトカゲなんて見た記憶が無いからちょっと新鮮かも。
「わうわう?(はじめまして?)」
いつまでも無言で見詰め合っても何も進まないので、挨拶は大事だと思い軽く頭を下げて挨拶してみる。
たとえ鳴き声にしか聞こえなくて相手に伝わらなくても、よりよい対人関係には挨拶って大事だよね。
「はじめまして……?」
「はあ? 急に何言ってんだよギャロ」
「いや犬に挨拶されたから……」
袋の中からこんにちはなワタシを見ながらワタシを背負っているだろう人物に返事を返すトカゲ顔さんもといギャロさん。
父とは違った素敵な渋い声を聞く限り、この方殿方のようです。
というよりギャロさん……いや誘拐犯にさん付けは可笑しいかな?
よし、ならここは呼び捨てが妥当だよね。
今度からギャロと呼ぼう。
それより今ワタシのこと犬って言った? この人……。
「わう~わうわう(犬と狼の違いが分からないなんて出なおしてきてください)」
「……?」
「おい、今この犬なんか言ったか?」
ギャロだけでなく袋をもつ推定・男がワタシが不定してるっていうのにまた犬と間違えた。
犬も可愛いけど人の種族を間違えるなんて失礼な男達だ。
絶対女性にはもてないなこの人たち。
「……おいギャロ。今回捕獲依頼があったのは知能の無い魔物の一種である突然変異種の犬で間違いないんだよな?」
「ああ、愛玩用にしたいという以来のはずだ。最近森の中に住み着いた魔物の一種で知能がないとも依頼人から確認も取ってる」
「わう~(知能がないなんて本当に失礼な人たちですね)」
「ならこの袋に入ってるのはただタイミングよく鳴いてるだけだよな?」
「……そうとも言えない。俺には何か意思を持って鳴いてるようにしか聞こえないんだが」
「わう~ん(ワタシの父も母もちゃんと言葉を話すからきっと人間違えですよ~)」
今はまだ鳴き声しかあげる事はできないとはいえ、知能がないなんて暴言をはかれ呆れてしまう。
そこを再度抗議の気持ちを込めて話に割り込んでやると、戸惑った雰囲気が二人から漂ってきた。
だけどこの二人よく走りながら息切れしないで会話できるな。
そこは素直に感心してしまう。
それに会話の内容から考えるにワタシもしかしなくても間違えで誘拐された気がするのは気のせい?
……の分けないか。
ワタシが二人の話にタイミングよく声を出すたびに戸惑って迷っているみたいだし……もしかしなくてもワタシ誘拐され損?!
まったく誘拐は犯罪なうえに人間違いって、せめてちゃんと確認してから誘拐してくださいよね!!
て、誘拐はそもそも駄目ですから!




